2022/05/28

放物線はすべて相似です

          「すべての放物線は相似である」


これを利用して『数学事始め』の放物線をかいています。いまならグラフを描くソフトを利用するの手っ取り早いのでしょうが......

POWER POINT の画面で方眼を敷いて、点を取って曲線で結びました。土台は2次関数 $y=x^2$ のグラフです。この図形を拡大縮小または回転させたものを利用しています。後ほど出てくる図形も同じ方法で描いています。


教科書に書かれていた

             $y=\dfrac{1}{\:\:2\:\:}x^2, \: y=x^2, \: y=2x^2$

のグラフを拡大縮小して確認したことがあります。実際にやって重なったときにはちょっとしたものがありました。PC上でなく、コピー機を使ったのがいいところです。$y=\frac{1}{\:\:2\:\:}x^2$ のグラフを50%、$y=2x^2$ のグラフは200%でコピーすると $y=x^2$ のグラフに重なります。


ここから本題です。

数学Ⅲでは2次曲線として学ぶので、$y^2=4px \:\: (p \in \mathbb R)$ の式で習いますが $\dfrac{\pi}{\:\:2\:\:}$ 回転させれば $y=\frac{1}{4p}x^2$ のグラフに重なるので $y=ax^2 \:\:(a \in \mathbb R)$ で考えられます。さらに平行移動と回転移動によって、すべて $y=ax^2 \: (a>0)$ の形で捉えることができます(※0)。

さて2つの図形が相似であることを言うには、ある定点からの距離の比が一定である (相似の位置にある) ことを示せばいいですね。『数学事始め』のシリーズ12 12.8「多角形の相似と一般的定義」 はこの話をするための準備でした。随分、時が経ちました。



では「すべての放物線は相似である」ことを証明するために何を示しますか。


相似は同値関係(※1)なので、2つの放物線 $y=x^2$ と $y=ax^2 \: (a>0)$ の相似がいえれば十分です。そこで

証明 2つの放物線 $y=x^2$ と $y=ax^2 \: (a>0)$ と 任意の直線 $y=mx \: (m \neq 0 \: は任意)$ との交点(原点でない)をそれぞれ A, B としその点の座標を求めると

              $A(m, \: m^2), \:\: B(m/a, \: m^2/ a)$

であり

         $OA:OB=|A_x|:|B_x|=|m|:|m/a|=a:1$

となり比が一定なので、2つの放物線は相似の位置にあります。▢

補足
・記号 $A_x$ は点Aの $x$ 座標を意味します。

・上の証明で気を付けることは、$a$ が定数であることです。だから $a:1$ が一定といえます。$m$ は計算するときには固定したものとして考えていますが、任意なのでいろいろな値を取ります。もちろんマイナスも取ります。これによってどんな実数 $m$ に対しても相似の中心(原点)から2つの図形までの距離の比が一定なので相似の位置にあると言えます。

・同値関係であることから、2つの放物線 $y=ax^2$ と $y=bx^2$ が相似であることがいえます。放物線 $y=x^2$ を経由させて推移律から導けます。

・関係式 $OA:OB=a:1$ がコピーの拡大方法を示しています。$OA=aOB$ なので $y=ax^2$ のグラフを $a$ 倍すれば  $y=x^2$ のグラフに重なります。


きちんと証明しようとすると、どんどん長くなり本質を見失ってしまうのでこのようにしました。証明として描いた部分が主要部です。▢


※0 線形代数で$x, \: y$ に関する2次方程式

         $ax^2+2hxy+by^2+2gx+2fy+c=0$

の表す曲線を2次曲線といい、この2次曲線は円、楕円、双曲線、放物線および2つの直線のいずれかであることを "2次曲線の分類" で学びます。この中で放物線は $y^2=4px$ の形に集約できることを知ります。授業ではあまり扱われないと思いますが、本には書かれていると思います。


※1
 関係~ が次の3つを満たすとき同値関係という:

(1) x~x (反射律) (2) x~y ⇒ y~x (対称律) (3) x~y, y~z ⇒ x~y (推移律)

例えば、数の等号、図形の合同なども同値関係です。
このように書くと難しく感じますが、数の等号や図形の合同でほとんど何も考えずに対称律や推移律を使っていますよね。大学数学ではこれを紹介したすぐ後に、剰余類などを学ぶので難しく感じるのです。商集合、等化空間、剰余群などと言われると「?」しか出てきませんね。

2022/05/21

最大値がないことをグラフをみて判断していいのか ~極限も気になります~

問題 実数 $x>0$ 上で定義された2つの関数

               $y=x^2$,  $y=\dfrac{1}{\:\:x\:\:}$

において、それぞれの最大値および最小値を求めよ。 



関数のグラフは次の通りで、いずれも中学数学で学びます。


グラフからどちらも最大値、最小値がないと判ります。中学、高校ならこれで問題ないと思います。大学入試問題でも


         「最大値・最小値を持たないことを証明せよ」


と出題しない限り、減点されないと思います。
高校数学ではこのグラフを頼りに次の結論を得ます:

          $\displaystyle \lim_{x\downarrow 0}x^2=0$       $\displaystyle \lim_{x\to \infty }x^2=\infty$

          $\displaystyle \lim_{x\downarrow 0}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=\infty$      $\displaystyle \lim_{x\to \infty}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=0$

:極限の表記については ※1 をご覧ください。


これを用いて極限の問題を解きますが、大学では証明しなさいと言われ「...」となります。「えっ、証明すべきことだったの?」

気づいたと思いますがグラフをみて判断するのは直観的なものであり、本来、認められません。このことに中高生が気づいたのなら、秀逸な論理思考に瞠目します。

なお、最大値・最小値を持たないことを証明するのは難しくありません。背理法を用いて証明することができます。各自で考えてみてください。
ただし、高校数学までの知識の場合は

相異なる2つの実数 $a, b \: (a < b)$ に対して、$a < c < b$ なる実数 $c$ が存在することを仮定します(※2)。

これは実数の稠密性(チュウミツセイ)と呼ばれるものです。だから内容的には大学1,2の数学ということになります。▢



この補遺は一般に難しい内容です。数学科の学生でも苦しむものだからです。

補遺 $\displaystyle \lim_{x\to \infty}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=0$ について

この式の意味は、実数 $x$ をどんどん大きくすると $\dfrac{1}{\:\:x\:\:}$ の値が0に近づいていくことを意味しています。これはかなり怪しい表現ですが、次のように言い換えると明確になります。

どんなに小さな正の実数 $s$ を考えても、ある実数 $r$ より大きい実数 $x$ に対しては $\dfrac{1}{\:\:x\:\:}$ の値が $s$ よりも小さくなる。

「どんどん大きくすれば」の曖昧な部分を具体的にrより大きい実数 $x$ に対してとし、
「0に近づく」の曖昧な部分を $1/x$ が想定している小さいsよりも小さくなると言い換えたのが先人の知恵です。

これは $x>0$ なのだから $0< 1/x < s$ であり、$s$ はどんなに小さくてもいいのだから、その間にある $1/x$ は0に近づくしかないよね、という論法です(※3)。

実際、ものすごく小さい正の実数 $s$ を考えます。このとき $1/s$ も実数なので、これを
$r:=1/s$ とします。すると $r< x$ に対して

                                    $0< \dfrac{1}{\:\:x\:\:}< \dfrac{1}{\:\:r\:\:}< s$

となります。正の実数 $s$ はどんなに小さくてもいいので

                               $x\to \infty$  のとき,  $\dfrac{1}{\:\:x\:\:} \to 0$. ▮ 



※1 $x\downarrow 0$ は正の方から0に近づけることを意味しています。$x \to +0$ と同じ意味です。これを口頭で説明するときに、「正の方から0に近づける」とも言いますが「上から0に近づける」ともいうのです。
ここで「正の方から2に近づける」の表現

            $x \to 2+0$   と   $x\downarrow 2$ 

とを比べたとき後者の方が簡潔だと思いませんか。

※2 「当たり前のことをなぜ仮定するの?」と思いますよね。特に、高校数学Ⅲの中間値の定理や平均値の定理を学んだ人は尚更だと思います。

ただ少し考えてみると、当たり前のようで当たり前でないことに気づくかもしれません。実数や有理数を想定していると気づきませんが、整数を考えてみてください。整数 2, 3 の間に整数は存在しますか。

実数って何なのか気になりますよね。高校数学までは実数について議論をしません。そういうのがあるっぽいと見せて、ほとんど何も語っていません。この辺りの話をきちんとしようというのが大学以降の微分積分です。数学科以外でも大学によっては触れると思います。40年ほど前は大学1年のはじめに学びましたが、いまは1年の後半か2年だと思います。

微分積分の歴史を知ると興味深いところですが、高校数学のように実数を認めてしまって、取り敢えず複素関数まで進めてしまう方が現実的なように思います。留数定理までやって積分計算ができるようになってから厳密化する方が学びやすいと思います。この流れだと大学2年後半以降に実数論を学ぶことになります。(雑感)

なお、実数が四則演算に関して閉じていて、全順序($a \gtrless b$ or $a=b$ が成り立つ)であることを仮定していれば稠密性を断る必要はありません

※3 はさみうちの原理を使っていますが、この論法はイプシロン‐デルタ論法と言われます。感じを掴みやすくするために "どんなに小さな実数" としましたが、日本語では "任意" が使われ、英語では "any" が使われます。任意(any) というのが肝です。どんな実数sを想定してもある数rが存在し、これより先ではsより小さくなると主張しているのです。

また、いまはギリシャ文字 $\epsilon, \delta$ の代わりに $s, r$ を使いました。これは見慣れないギリシャ文字を使うだけで混乱するからです。私は $\xi$ がなかなか受け入れられませんでした。慣れると何てことないのですけどね。もちろん、$s$ を使ったのは small の頭文字からです。rはその前の文字です。$\epsilon, \delta$ はアルファベットの e, d に相当します。 

$\displaystyle \lim_{x\downarrow 0}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=\infty$ も気になると思いますが、大学数学の微分積分の本をご覧ください。上の説明が理解できたのなら、専門書を読んでも理解できると思います。

2022/05/14

ラグランジュの補間式 ~ 二次関数の道草② ~

前回はニュートンの補間法を紹介しました。本来の解法と比べると少し計算がらくになるというものでしたが直接式を求める方法もあります。それがラグランジュの補間式と呼ばれるものです。


まずは 準備体操 です。次の条件をみたす $x$ の2次式 $P$ を作ってみてください。

           条件:$P(2)=0, \: P(3)=0, \: P(-1)=1$.

ここで、$P(2)=0$ は $x$ の2次式 $P$ で $x=2$ を代入すると $0$ になることを意味します。



作れましたか。難しいですよね。でも次のように考えるとかんたんに作れると思います。

いきなり3条件を考えるのでなく、2つの条件 $P(2)=0, \: P(3)=0$ をみたす2次式を作ってみてください。

これが出来たら条件 $P(-1)=1$ もみたすように加工してください。



このように作れます。
2つの条件 $P(2)=0, \: P(3)=0$ をみたす2次式は

               $P=(x-2)(x-3)$

です。そして条件 $P(-1)=1$ もみたすようにしたいのですが、何も加工しないと

            $P(-1)=((-1)-2)・((-1)-3)=12$

です。そこで次のようにすれば $P(-1)=1$ もみたします:

                                           $P=\dfrac{(x-2)(x-3)}{12}$.

3条件をみたしていることを確認してください。ところで

               $P=(x-2)(x-3)-11$

と加工しても条件 $P(-1)=1$ をみたすのですが、$P(2)=0, \: P(3)=0$ をみたさなくなってしまいます。$12$ で割るのが肝です。



まだ首筋がほぐれていないようです。次の条件をみたす $x$ の2次式 $Q$ を作ってください。

           条件:$P(3)=0, \: P(-1)=0, \: P(2)=-2$.




作れましたか。次の通りです。

                 $Q=\dfrac{2(x-3)(x+1)}{3}$.

最後の調整は、3で割って2を掛けました。




大夫ほぐれましたね。では仕上げに次の条件をみたす $x$ の2次式 $R$ を作ってください。

           条件:$P(-1)=0, \: P(2)=0, \: P(3)=5$.




このように作れましたか。

                  $R=\dfrac{5(x+1)(x-2)}{4}$.


(では本題に入ります)

問題 3点(2, -2), (3, 5), (-1, 1) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。



ラグランジュの補間式
で解いてみます。

         $y=\dfrac{(x-2)(x-3)}{12}+\dfrac{2(x-3)(x+1)}{3}+\dfrac{5(x+1)(x-2)}{4}$

が求める2次関数です。2次式なので関数のグラフは放物線であり、3点を通ることもかんたんに確認できます。

   $x=2$ のとき $y=-2$,  $x=3$ のとき $y=5$,  $x=-1$ のとき $y=1$

になっていますね。この式を整理して

                 $y=2x^2-3x-4$

を得ます。▮


気づいた人もいると思いますが、準備運動で求めた3式 $P, \: Q, \: R$ を足した式です。

式の作り方

求める2次関数を $y=f(x)$ と置きます。
$x$ 座標に注目すると順に 2, 3, -1 なので、$f(2)=0, \: f(3)=0$ となる2次式を作り、$f(-1)=1$ となるように調整します。

次は、$f(3)=0, \: f(-1)=0$ となる2次式を作り、$f(2)=-2$ となるように調整します。

そして $f(-1)=0, \: f(2)=0$ となる2次式を作り、$f(3)=5$ となるように調整します。

これらを足したものが求める式で、これがラグランジュの補間式です。



次の問題で使い方を確認してください。

確認問題 3点(1, 5), (2, 1), (3, -7) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。

答え $y=-2x^2+2x+5$.



最後に一般式を紹介しておきます。

ラグランジュ(Lagrange)の補間式

異なる $(N+1)$個の複素数 $\alpha_0, \: \alpha_1, \alpha_2, ..., \alpha_N$ に対して $f(\alpha_0)=A_0, \: f(\alpha_1)=A_1, \: f(\alpha_2)=A_2, ..., f(\alpha_N)=A_N$ をみたす $N$ 次以下の多項式 $f(x)$ は次式で与えられる:

                     $\phi (x):=(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)・・・(x-\alpha_N)$

に対して因数 $x-\alpha_i \: (i=0, 1, 2, ..., N)$ を除いた

            $\phi_i (x):=(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)・・・(x-\alpha_{i-1})(x-\alpha_{i+1})・・・(x-\alpha_N)$

とすると、

       $f(x)=A_0\dfrac{\phi_0(x)}{\phi_0(\alpha_0)}+A_1\dfrac{\phi_1(x)}{\phi_1(\alpha_1)}+A_2\dfrac{\phi_2(x)}{\phi_2(\alpha_2)}+・・・+A_N\dfrac{\phi_N(x)}{\phi_N(\alpha_N)}$.

このとき、$\phi_i (\alpha_i)\neq 0, \: \phi_i (\alpha_j)=0 \: (i\neq j)$ である。▮


このように書くと分かり難いですが、$N=2$ の場合が上で紹介した2次式です。▢

参考文献 岩切晴二著『代数学・幾何学詳説』(培風館)PP.36-37

前回のニュートンの補間法で紹介した数学書にも書かれています。

2022/05/07

ニュートンの補間法 ~2次関数の道草~

問題 3点(2, -2), (3, 5), (-1, 1) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。


ふつうこの問題は求める2次関数の式を

           $y=ax^2+bx+c \quad (a, b, c \in \mathbb R)$

とおいて、3点を通ることから3本の方程式

     $4a+2b+c=-2, \: 9a+3b+c=5, \: a-b+c=1$

を作り、これを解いて

            $a=2, \: b=-3, \: c=-4$

を得て

              $y=2x^2-3x-4$

と求めます。▮


基本的な考え方と計算力をつけることを考えると、この解答はとてもいいと思います。ただこの問題には計算がらくになる解法があります。数学教師は問題作成のときに使っているかもしれません。

その解法というのが  Newtonの補間法  です。

2点(2, -2), (3, 5) を通ることを利用して、求める2次関数の式を

      $y=l+m(x-2)+n(x-2)(x-3) \quad (l, m, n \in \mathbb R)$


と置きます(実際は、$x$ 座標のみ使います)。この式で点(2, -2)を通ることから

                 $l=-2$ 


と決まります。次に点(3, 5)を通ることから


               $l+m(3-2)=5$


より $m=7$ と決まり、点(-1, 1) を通ることから


         $l+m(-1-2)+n(-1-2)(-1-3)=1$


から $n=2$ と決まります。よって、

         $y=(-2)+7(x-2)+2(x-2)(x-3)$


を整理して

              $y=2x^2-3x-4$

と求められます。▮


このNewtonの補間法は

命題 異なる $N+1$ 個の実数(または複素数) $\alpha_0, \alpha_1, \alpha_2, ..., \alpha_N$ と 任意の実数(または複素数) $A_0, A_1, A_2, ..., A_N$ に対して

         $P(\alpha_i)=A_i \quad ( i \in \{0, 1, 2, ..., N \})$

を満たすN次以下の多項式 $P$ が唯一つ存在する. ▮


を証明するときに現れる式です。その多項式 $P$ は次のように書けます:


    $P=c_0+c_1(x-\alpha_0)+c_2(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)$
      $+ \cdots +c_N(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)(x-\alpha_2) \cdots (x-\alpha_{N-1})$.


この式に $P(\alpha_i)=A_i \quad ( i \in \{0, 1, 2, ..., N \})$ を適用すると

             $c_0, \: c_1, \: c_2, ..., c_N$

が順に決まります。そのため1次方程式を繰り返しとくだけなので計算はかんたんです。実際には、PCに計算させるときに用いるとプログラムがかんたんになるのかもしれません。


この説明だと分かり難いと思うので使える形で書き直しておきます。

"3点 $(\alpha, \: A), (\beta, \: B), (\gamma, \: C)$ を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。"

という場合

      $y=l+m(x-\alpha)+n(x-\alpha)(x-\beta) \quad (l, m, n \in \mathbb R)$


と置き、3点$(\alpha, \: A), (\beta, \: B), (\gamma, \: C)$ を通ることから3本の方程式が得られ、これを解いて $l, m, n$ が決まります。

 この方法で解けている理由は末尾に記します。


確認問題 3点(1, 5), (2, 1), (3, -7) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。

答え $y=-2x^2+2x+5$.



この方法を最初に知ったのは、遠い記憶ですが受験参考書の赤チャートだったと思います。

次に目にしたのは代数系入門(松坂和夫)、代数学・幾何学詳説(岩切晴二)、代数学講義(高木貞治)などの専門書です。私自身はこの公式をこれまで使ったことはありません。
確認したところ、Newtonの補間式は代数系入門にしか載っていませんでした。これらの本には共通してLagrangeの補間式(ラグランジュ)が書かれていました。この式は次回紹介します。分数の形なのでNewtonの補間法を先に紹介しました。▢


ニュートンの補間法で解けている理由

これを示すには $y=ax^2+bx+c$ との対応関係を示せばいいですね。つまり、$l, \: m, \: n$ を求めることと $a, \: b, \: c$ を求めることとが一対一に対応していることを示します。


       $y=l+m(x-\alpha)+n(x-\alpha)(x-\beta)$

          $=nx^2+(m-n(\alpha +\beta))x+(l-m\alpha +n\alpha \beta)$


したがって、$l, \: m, \: n$ と $a, \: b, \: c$ との関係は

       $a=n, \: b=m-n(\alpha +\beta), \: c=l-m\alpha +n\alpha \beta$


で与えれられます。$\alpha , \: \beta$ は与えられている定数なので、$l, \: m, \: n$ が判れば、$a, \: b, \: c$ が決定します。逆に、

       $n=a, \: m=b+n(\alpha +\beta), \: l=c+m\alpha +n\alpha \beta$


によって$a, \: b, \: c$ が判れば、$l, \: m, \: n$ が順に決定します。▮

2022/04/30

数学教師が認識しているマイナスの話③補遺 整数の話を有理数や実数に拡げてもいいの?

マイナスの授業で疑問に思いませんでしたか。

整数を用いてプラス・マイナスの計算規則を説明してきたのに、その計算規則を分数や無理数にも適用してもいいの?と



今回の話でこのシリーズは終わりです。話の主軸である環の定義を再記します:

集合 $R$ に2つの閉じた演算 和「+」と積「・」が定義されていて

  (1) 和に関して可換群を成し、(2) 積に関して半群を成し、(3) 分配律をみたす


とき、集合 $R$ は(カン)であると言います。



最初は、環の代表例として整数を紹介しました。次に、環であることから成り立つ性質を紹介しました:


  環 $R$ で引き算を定義し、$a, \: b \in R$ において $-(-a)=a$, $a-(-b)=a+b$


および


    $a・0=0・a=0$, $(-a)・b=a・(-b)=-(a・b)$, $(-a)・(-b)=a・b$ 


を示しました。


ここで考えてほしいことがあります。

この定義をみたす数の集合、つまり、整数以外に環である数の集合があるでしょうか。




有理数、実数、複素数も環ですね。つまり、これまで話してきたマイナスの話は、有理数、実数、複素数でも成り立つということです。これが抽象化した利点です。


これまで整数の話しかしていないように見えていたと思いますが、実際は有理数、実数、複素数でのマイナスの話も同時にしていました。実際は、環であるものすべてに共通した話をしていたのです。こういうことを踏まえた上で、教師はマイナスの話の授業をしています。ただこのことを中学生に話す訳にはいかないので、もっともらしい説明をしているのです。


ところで中学・高校数学の範囲で他に環の例があるのですが気がつきますか。



(1分ほど考えてみてください)



ではその例を挙げます:

         多項式、合同式、行列 (以前は高校数学にありました)


です。mod6の合同式は整域でない可換環の例で、行列は整域でない非可換環の例ですね。

整域というのは環の2元 $a, \: b$ の積が $0$ なら $a=0 または b=0$ ということです。方程式の因数分解による解法はこの性質を使っています。

整域でないということは、$ab=0$ であるが $a \neq 0 かつ b \neq 0$ という元があるということです。実際、

               $2・3 \equiv 0 \pmod 6$ 

ですね。


中学・高校で指導されている教師は、これらのことを踏まえて授業をされていると思います。

単に問題を解くための授業は別です。▢

2022/04/23

数学教師が認識しているマイナスの話②《 a・0=0, a・(-b)=-a・b, (-a)・(-b)=a・b 》

前回の話の後半です。

学校教育で中1数学のマイナスの話を授業している教師は、授業では説明しないと思いますが抽象代数学の知識を背景に授業をされていると思います。その背景を紹介しているのが、前々回から続いている話です。今回は3回目に当たります。


(復習:環の定義)

集合 $R$ に2つの閉じた演算 和「+」と積「・」が定義されていて

  (1) 和に関して可換群を成し、(2) 積に関して半群を成し、(3) 分配律をみたす

とき、集合 $R$ はであると言います。▮



ここから本題今回は

     $a・0=0・a=0, \quad a・(-b)=(-a)・b=-(a・b), \quad (-a)・(-b)=a・b$ 


が成り立つ理由を説明します。前回の話を仮定して話を展開するので、(1)は解説しません。


(2)と(3)を解説します。
いま積に関して閉じているので、$a, \: b \in R$ に対して、$a・b \in R$ です。

(2) 積に関して半群を成す というのは積に関する結合律

          $(a・b)・c=a・(b・c), \quad a, \: b, \: c \in R$ 

が成り立つことです。つまり、積の順序に依らないということです。


(3) 分配律をみたす というのは、2つの演算(和と積)を結び付ける演算規則

       $a・(b+c)=a・b+a・c$ かつ $(a+b)・c=a・c+b・c$

が成り立つということです。1回目で話したように、整数で成り立つ性質から選ばれたものです。2つの演算を考えているのだから自然な要請です。▮


説明の準備が整いました。
まずは $a・0=0$ が成り立つ理由:零元 $0$ を考えると次が成り立ちます(前回)。

                  $0+0=0$

この等式の両辺に $a \in R$ を掛けます。分配律を使うと

              $a・0+a・0=a・(0+0)=a・0$

ですが、この両辺に $a・0$ の逆元 $-(a・0)$ を加えと

                             $(a・0+a・0)+(-(a・0))=a・0+(-(a・0))$.

この等式の両辺をそれぞれ計算してみると 

          $(a・0+a・0)+(-(a・0))=a・0+(a・0+(-(a・0)))=a・0+0=a・0$,

          $a・0+(-(a・0))=0$.

よって

                  $a・0=0$

を得ます。同様にして $0・a=0$ も言えます。▮ 


次は、$a・(-b)=(-a)・b=-(a・b)$ が成り立つこと:この式の主張は分かりますか。

$-(a・b)$ は $a・b$ の逆元(前回)なので、$a・(-b)$ も $(-a)・b$ も $a・b$ の逆元だと主張しています。だから次のようにして示すことが出来ます。

                            $a・(-b)+a・b=a・((-b)+b)=a・0=0$.

したがって、 $a・(-b)$ は $a・b$ の逆元です。同様にして、 $(-a)・b$ も $a・b$ の逆元であることが言えます。最初の等号は分配律、次は逆元の性質、次は零元の性質です。▮


最後に $(-a)・(-b)=a・b$ が成り立つこと:この式の主張は $a・b$ が $-(a・b)$ の逆元なので、$(-a)・(-b)$ も $-(a・b)$ の逆元であると主張しています。だから上と同じく2式を足してみます。 

   $(-a)・(-b)+(-(a・b))=(-a)・(-b)+((-a)・b)=(-a)・((-b)+b)$
                     $=(-a)・0=0$.

したがって、$(-a)・(-b)$ は $-(a・b)$ の逆元なので $(-a)・(-b)=a・b$ です。等号で結ばれているのは、逆元の一意性(前回)によります。▮

3つの証明をみて判るように、分配律が威力を発揮しています。


大学の授業だとセンセが得意顔で説明するか、「これは容易だから各自で解決しなさい」とレポート問題にします。そりゃあ、代数的な見方が出来れば容易ですが、そうなるまでには時間が掛かります。少なくとも私はそうでした。いまは容易ですが、最初は ??? でした。一部の人を除いてそういうものだと思います。


あと1つ話していないことがありますが主要部の説明は終わりました。かんたんでしたか、それとも難しかったですか。先人たちが決めた計算規則の整合性に知見の高さを感じます。人間の叡智はすばらしいですね。▢


余話
受験塾での授業なら、天下り的にマイナスの計算規則を紹介し、テストで点が取れることを目的にすると思います。これならYouTubeで十分です。
なお、前回と今回の話を中学生にするのは無謀です。話者だけの満足で終わってしまいます。中学生には教科書に書かれているような説明が必要だと思います。その説明で満足しなければ、先人が一朝一夕に取得したのでないことと、現代的な見方を話せばいいと思います。

2022/04/16

数学教師が認識しているマイナスの話①《 -(-a)=a, a-(-b)=a+b など》

当初は1回だけの読みきりで書いていたのですが、思いのほか長くなってしまったので最終的に4回に分けることにしました。この記事は2回目に当たり、前回の「整数は環の代表例...」が1回目です。


中1数学としてのマイナスの説明はいろいろあり、YouTubeなどの動画でもいろいろな解説がされています。どれでもいいから自分なりに納得できればいいと思いますが、それでは物足りず、数学教師のレベルで理解してみたいという人もいると思うので、その話をします。

次に示す抽象代数学をつかった説明を理解することになります。群や環について書かれている代数の本にならたいてい書かれているもので、数学科の大学2,3年で学びます。


整数は環の代表例で、整数よりも弱い条件の環で成り立つことは整数に引き継がれます。
この弱い条件ながらも

        $a-b=a+(-b), \: -(-a)=a, \: a-(-b)=a+b$ 

であることが言えます。$(-a)・(-b)=ab$ は次回の話です。(※0)

ではその環とは何かを群(グン)のことば(※1参照)で説明すると次の通りです:

集合 $R$ に2つの閉じた演算 和「+」と積「・」が定義されていて

  (1) 和に関して可換群を成し、(2) 積に関して半群を成し、(3) 分配律をみたす


とき、集合 $R$ は(カン)であると言います(※2)。

今回は (1) を説明し、ここから得られることを話します。


(1)は任意の $a, b \in R$ に対して $a+b \in R$ であり、
  (ⅰ) 結合律 $(a+b)+c=a+(b+c) \quad (任意の \: a, b, c \in R)$,

  (ⅱ) 零元 $0 \in R$ が存在して、$a+0=0+a=a \quad (任意の \: a \in R)$,
  (ⅲ) $各 \: a \in R \: に対して \: a+x=x+a=0$ を満たす元 $x \in R$ が存在する,
  (ⅳ) 任意の $a, b \in R$ に対して、$a+b=b+a$ 

が成り立つということです。(ⅲ)の $x$ を $a$ の逆元といい、$-a$ と書くことにします。

:(ⅱ), (ⅲ) の存在は一意であることも言えます。実際、$0'$ も零元であるとすると

            $a+0'=0'+a=a \: (a \in R は任意)$

が成り立ちます。このとき

                                                $0'=0'+0=0$

となるから零元の一意性がいえます。最初の等号は $0$ が零元であるから、2つ目の等号は $0'$ が零元だからです。次に、$x'$ も $a$ の逆元であるとすると、

             $各 \: a \in R \: に対して \: a+x'=x'+a=0$

が成り立ちます。このとき

          $x=x+0=x+(a+x')=(x+a)+x'=0+x'=x'$

となるから逆元の一意性がいえます。最初の等号は $0$ が零元であるから、2つ目の等号は
$0=a+x'$ であるから、3つ目の等号は結合律(ⅰ)により、4つ目の等号は $x+a=0$ であるから、最後の等号は $0$ が零元であるからです。

この一意性によって、$0$ と $-a$ の一意表記ができるのです。▮

:一意(イチイ) ・・・ 一通り という意味です。数学ではよく使います。


次に、整数には引き算が定義されていますが、整数の引き算は自然数の引き算とは本来別のものです。自然数が整数の部分集合と考えられるから、自然数の $5-2$ と整数の $5-2$ を一緒のものと考えると便利なので同じ記号を使います。ではどのように考えて引き算を定義するのかというと

自然数の $5-2$ は $2+x=5$ を満たす $x$ と見ることができます。そこで環 $R$ の元 $a, b$ に対して、$a+x=b$ を満たす $x$ を $b-a$ と定義しようというのは自然です。


気になるのは $a+x=b$ を満たす $x$ が他にないかということです。元 $b+(-a) \in R$ を考えると

   $a+(b+(-a))=a+((-a)+b)=(a+(-a))+b=0+b=b$

となるので、$b+(-a)$ は $a+x=b$ を満たす $x$ の一つなので、$x:=b+(-a)$ と置きます。この他に $x'$ も $a+x=b$ を満たすとします。つまり、$a+x'=b$ であるとします。
この式の両辺に $a$ の逆元 $-a$ を加えると

                        $x'=0+x'=((-a)+a)+x'=(-a)+(a+x')=(-a)+b=b+(-a)=x$


となるので、 $a+x=b$ を満たす $x$ の一意性が言えます。これにより、

                  $b-a:=b+(-a)$

と定義します。これで1.5「プラス・マイナスの引き算」がより深く理解できると思います。▮


最後に $-(-a)=a$ と $a-(-b)=a+b$についてです。

                   $a+(-a)=0$

で、$-a$ は $a$ の逆元でした。でも $a$ は $-a$ の逆元とみることが出来ます。ということは $a$ は $-(-a)$ であり、逆元の一意性から等号が成り立ちます。つまり

                   $a=-(-a)$.

さらにこのことから

             $a-(-b)=a+(-(-b))=a+b$

が得られます。最初の等号は引き算の定義で、2つ目の等号は $-(-b)=b$ です。▮


引き算と $-(-a)=a$ と $a-(-b)=a+b$ の話を書きましたが、全体をみると今回の話は "存在と一意性" だったともいえそうです。

今回の話はかなり難しいと思います。群を学んだことのない人にとっては、いろいろなところにツッコミを入れたくなったと思います。もしすんなりと受け入れられたのなら独自で代数学の本が読めると思います(※4)。



さいごに
マイナスの話は中1数学で学びますが、教科書とか数学教師の説明は回りくどい感じがしませんでしたか。私も『理一の数学事始め』で「いまさらきけないプラス・マイナスの話」を書きましたが、導入にはかなり慎重になりました。

塾や家庭教師で教えるだけなら、計算の仕方だけを説明し「あっ、マイナスの計算はかんたんなんだ」と思わせておしまいにするでしょうが、マイナスの概念を学び直す(※3)のだから歴史的なことと現代数学の観点を無視する訳にはいかないと考えたのです。

講座名の『数学事始め』通り、数学を伝えるのが目的なので、問題を解くことよりも現代数学入門として書いています。だから導入部はかなり気を付けています。そうではあっても教科書の問題くらい解けるだけの知識は身に付くと思っています。最終目標は、自力で数学の専門書が読めるようになることです。▢



《お詫び》これまでもリンクを設けていましたが、うまくリンクされていないことに最近きづき、気づいた過去記事は修正しました。

※0 整数は環ですが、逆は一般に成り立ちません。例えば、整数には順序(大小)がありますが、この環には順序がありません。詳しくは前回紹介した参考図書をご覧ください。

※1 代数学《群の紹介》をご覧ください。2021年2月に書いたのは、シリーズ1の雑談として今回のような話をしようと考えていたからです。でも内容が一気に難しくなるので、このときは断念しました。

※2 数の集合と演算(代数系入門)では(2)をモノイドにしているので単位元をもつ環です。  
  今回の話では単位元を持たなくてもいいので、条件を弱めて半群としました。

※3 『理一の数学事始め』は、中3生~高校生~大学生、大人で数学を学び直したい人たちを対象に書いています。当然、シリーズ1「プラス・マイナスの話」もです。読むと、教科書とは異なることに気づくと思います。

※4 はじめて代数学を学ぶのであれば

        新妻 弘、木村哲三 共著『群・環・体入門』(共立出版)

もしくは    松坂和夫『代数系入門』(岩波書店)

がお薦めです。雪江、桂、永田 だけで数学科なら本が想像できると思いますが、覚悟が必要です。私は石田で代数を学んだので、新妻・木村は立ち読みでパラパラとめくった程度ですが、数学者になった知人はこれで代数の力を着けました。そういう本なのです。この『演習』はその数学者になった同期から譲り受けたもので、かなりていねいに書かれていることは知っています。

ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...