余弦定理を用いて長さを求めたとき、出た値がプラスのものを答えにしていると思いますがそれが正しいという保証はありますか。実際はプラスであれば答えにしていいのですが、その理由は知っていますか。余弦定理は三角形の3辺と1角の関係式で、この式を満たすからといって三角形を成すとは言ってませんよ。
『数学事始め』14.30 三角比(応用①2辺1角→他の1辺) からの抜粋
”例題 △ABCにおいて、b=√7, c=3, B=60° のとき、a を求めてください。
答え (略) a=1, 2.逆にこのとき三角形を成す。▮
注:なぜ逆に触れたか分かりますか。それは余弦定理は三角形であるための必要条件であるからです。十分性は確認していません。だから逆が成り立たないこともあり得るのです。
実際はプラスであれば十分です(※1)。
※1 これまでは深く考えず、辺の長さなので余弦定理を解いてプラスであれば吟味せず答えとしてきました。しかしこの『数学事始め』を書くにあたって改めて考えてみたら、正しいとは簡単に言えないことが判りました。” (抜粋 終)
みなさんは上の例題を解いて a=1, 2 と出た後に問題に適しているかを確認してますか。
最初にこの敵・不適に疑問を持ったのは高校生のときなのですが、その切っ掛けとなったのは上のような例題ではなく
問題 △ABCにおいて、a=1, b=√7, B=120° のとき、cを求めよ。
のような問題です。
例題と同じように余弦定理を使って解いてc=-3, 2 を得るのですが、これを答えにしてはいけません。cは辺の長さなのでマイナスになることはないからです。
当時高校生だった私は c=-3, 2 と出てホッとしこれを答えにしたら、c>0だから-3は適さないと先生に言われました。c=2 が適するのはなぜかを訊いたのですが、これについてはプラスだから適するでお終いでした。みなさんは納得できますか。その当時の私は数学の先生がおっしゃっているのだからと納得しないまま受け入れてしまいました。
数学的なことを無視すれば、問題を解くには困りません。確かにプラスであれば適するからです。でもその理由はやさしくありませんでした。当時の私では解決できないものです。
ひょっとしたらかんたんなのに数学オンチが治っていない為に気づけないだけかもしれません。現在所有している教科書にはこのことについて特に何も書かれていません。
ではプラスなら適する理由を述べます。それには次のことを示せば十分です:
正数 a, b, c および 0°<A<180° が余弦定理の式を満たせば、a, b, c は三角形を成す。▮
これが示せれば正数 a, b, c によって三角形が唯一つ存在し、このときAは余弦定理の式を満たすことから与えられたAそのものです。もちろんAはBやCと交換可能です。三角形を成すことを示すには三角不等式が成り立つことを示せばいいのです(♪1)。
♪1 三角不等式については『数学事始め』10.5「寄り道しない方が近い」で紹介していて、証明で使われている同値については、この中の問題(解答例)で述べています。
高校生のときには三角形の2辺の和は他の1辺より大きいという知識はありましたが、それを証明したことがなかったので深くは知りませんでした。だから上の証明には辿り着けません。先にも書きましたが、私が気づかないだけでもっとかんたんに説明ができるのかもしれませんが、私は知りません。▢