2021/01/30

福澤諭吉が残した負の遺産(大きな数を読むかんたんな方法)

 3,141,592,653,589,793,238

このような3桁区切りの数字は、日本語では非常に読みにくいですよね。私は、6桁 793,238以上になると直ぐには読めません。5桁 93,238までなら1万円と同じ桁なのですぐに読めます。

最初に挙げた金額 3,141,592,653,589,793,238円

314京1592兆6535億8979万3238円です。
(京はケイと読みます。スーパーコンピューターの京です)


多分、多くの人は 一、十、百、千、万、十万、百万、… 、百京とやって読んだと思いますが、あなたは如何だったでしょうか。算数でそのように習っていたのなら、教え方に問題があるかと思います。知人の日本語学校でもやっている方法で、合理的に教えてほしいと思います。

その方法は、4桁区切りにして読むというものです:
4桁の数3238が読める」ことと「大きい数の単位 小さい方から万、億、兆、京、…を知っている」ことを前提にします。京まで覚えていれば十分だと思います。※1

読む手順:①下から4桁ずつ区切る: 314´1592´6535´8979´3238

②プライム「´」を下から順に万、億、兆、京と読む

③京の前にある3桁の数をふつうに読み、京も読む:三百十四ケイ

④兆の前にある4桁の数をふつうに読み、兆も読む:千五百九十二チョウ

⑤以下同様に読む

すると、314京1592兆6535億8979万3238 と読めます。


試しに次の数を読んでみてください:627000030020391


読み方は、627´0000´3002´0391 と区切って、

六百二十七兆三千二万三百九十一です。



このように、日本語では3桁区切りではなく、4桁区切りで表記する方が合理的なのです。3桁区切りは、英語などの西洋言語で読みやすくなっています。

試しに、3,141,592,653,589,793,238を読んでみると、コンマ「,」は下から

thousand, million, billion, trillion, quadrillion と読み、3桁の数をふつうに英語読みすればいいのです。「three quadrillion one hundred forty one trillion (and so on) eight 」となります。

明治になり、誰かが、渋沢栄一とか福沢諭吉辺りが、欧米列強に追いつけ追い越せの勢いで日本文化を無視して、西洋を真似て3桁区切りにしたのが大きな間違いだったのです。※2

いまからでもいいから、4桁区切りにプライム(コンマと区別するため)をつけるようにすればいいのにと思います。※3▢


※1 京より大きい単位を使ったことも日常生活で聞いたこともありません。クイズなどで無量大数が出てくるくらいでしょうか。尚、無量と大数を分けるという説もあります。


※2 検索したら見つかりました。『どうして3桁ごとに区切るの?』
   http://gains.net-school.co.jp/1772/
気になる人は、こちらをご覧ください。


※3 「′」は、数学では「プライム (prime)」と読みます。尚、ダッシュは明治か大正時代に、東京帝国大学から広まったのだとみています。その理由は、私の知っている東京大学出身の数学者たちは、日本語で説明しているときには「ダッシュ」と読み、英語で説明しているときには「prime」と読むからです。

[補足] 検索したら、こういうのが見つかりました。参考までにどうぞ。

  加藤 初弘 という方が2020.5.15に書かれています。論文のようです。
  『
記号「'」のはじまりとアクセント ― 数学記号の時代的・文化的成り立ち ―』   
  
http://www.szr.yamanashi.ac.jp/lab/kato/sousi/accent2020b.pdf

2021/01/25

小川洋子著『博士の愛した数式』で数論に興味をもったらの次は…

2月からの本格始動に向けて、想定対象の学生でない人向けに書いておこうと思います。


松坂和夫著『代数系入門』(岩波書店)をお薦めします。現在は、新装版(右)も出版されているようです。私はもちろん旧版(左)を所有しています。

 

理由の一つは、私の所有している旧版18頁には、例5としてあの「完全数」について書かれているからです。江夏豊投手の背番号28。自分自身を除いた28の約数1,2,4,7,14の和は28というあれです。

思い切って、一気に18頁を読み始めることも可能かも知れません。ちょっと手前からの§5の素数・素因数分解からでも。苺ケーキ1ホールの苺から食べ始める感じですが、数学的に面白い話は理解すればするほどこの本から湧いてくると思います。

著書の松坂さんの興味のあった分野が何であったのかwikiでみても判りませんでしたが、Galois(ガロア)理論を目標に書かれています。ベクトル空間についても触れているので、線形代数の本を読まなくても理解できるように編成されているようです。
この本をお薦めする最大の理由は、数論にもいろいろありますが、代数的整数論をやるなら、群・環・ベクトル空間・Galois理論は道具になります。群と環の一方だけでも合同式の見え方は変わります。

数学書は1頁よむだけでも1日掛かることもあるので、自分の歩調でのんびり進むといいと思います。一緒に読んでいく仲間がいるのは理想です。学生は、本来、とてもいい環境なのです。仲間もいるし、指導教官までいるからです。

最後に、この本は参考書として使ってきましたが、加群と体論はだいたい読みました。完全数も別の本で読んでいましたが、こちらの説明の方が判りやすいと思います。もう記憶は曖昧ですが、12年ほど前、大学時代のゼミ指導教諭を通じた数学ゼミ合宿で「完全数」を話しました。その発表準備のまとめのときに、この本も使ったように思います。
尚、体論で書かれているGalois理論は、E.Artin(アルティン) のGalois理論を意識して書かれたと思います。



将棋や音楽鑑賞やスポーツなどのように、数学の敷居を下げたいという思いもあります。小川洋子さんのお陰もあって、数学の専門書が置いてある書店をみても、一般向けの本がかなり増えました。私もこれまでそういう本も読んできたけれど、解るという感動は残念ながら得られません。啓蒙書であるから十分なのですが、数学のたのしみの一つに独力で、自分の頭で理解するというのもあると思います。容易いことではないと思いますが、それが達成したときの見晴らしは他の人には味わうことができません。自分だけが味わえるのです。たとえ優秀な人には5分くらいで理解できることであってもです。大切なのは自分であって他人ではないからです。


藤井聡太二冠「強くならないと見えない景色を見てみたい」


似ていると思いませんか、より理解が深まれば見える景色も変わります。見え方が変わったときの一瞬間、視野が広くなったように感じることがあります。最後まで付き合ってくれた方に感謝。▢(左 文庫、中 マンガ、右 映画)

2021/01/13

0÷0=0?1?それとも…

数 a を0で割るとどうなりますか。

Aさん「『÷0』は定義をしない」

Bさん「0で割ってはいけない」

Cさん「答えはない」

すべておっしゃる通りです。

もう少し丁寧に答えるなら、0÷0=不定、(0でない数)÷0=不能 と答えるのがいいかと思います。高校数学Ⅲで学ぶ「極限」というところで不定形として習うと思います。



でもね、問題は、なぜ0でも1でもないかなのです。

0÷0=0はとても自然に思えるし、こう答える人も多いと思います。

また0÷0=1も自然に思えます。

えっ、思えませんか。だって、1÷1、2÷2、3÷3、…、100÷100の答えはすべて1でしょ。つまり、ある数をそれ自身で割れば1になるじゃないですか。小学生の頃は、まじめにそう考えていました。

中学数学になって、「『÷0』は定義をしない」「0で割ってはいけない」と教えられたと思います。1次方程式を解くときに用いる「等式の性質」の説明のときです。

「等式の性質」というのは、等式 A=B なら、その両辺に同じ数を足しても、同じ数を引いても、同じ数を掛けても、同じ数で割ってもいいよ(でもね、0で割ってはいけない)、というものです。

中学数学では0で割るような機会はないと思いますが、高校数学になるとつい0で割りたくなることがあります。それも 0÷0=1ということを使ってです。と言っても、当人は0で割っているという自覚なんてないと思うんですよ、私も含めて多くの高校生は。ただ授業で繰り返し指摘されるし、テストでは大きな減点になるし、満点阻止のために出題されたりもするし、大学入試では必須事項の一つなので、覚えることになるのです。

もしも0÷0=1になったら、みんなが幸せになれます。テストで75点だって、30点だって、5点だって、100点に等しいからです。この話は別の機会に触れることにします。



なぜ0で割ってはいけないのか、0÷0や5÷0がなぜ不定や不能とされているのかの説明です。

15÷3はいくつですか。

5はどのように導きましたか。

小学校のとき、こう習いませんでしたか。掛け算九九の3の段を頭の中で、

3×1=3、3×2=6、3×3=9、3×4=12、3×5=15

とやって「5」だと。つまり、3×□=15 となる□が答えなのです。

この考え方を0÷0に適用させると、0×□=0 に当てはまる□が答えです。

0、1、2、3、…、-1、-2、1/2、√2、1+2i 、…

のように多分知っている数すべてが答えになります。任意の複素数でいいのです。一つに定まらないから、0÷0=不定 としているのです。

5÷0も同じように考えると、0×□=5 に当てはまる□がないことに気づきます。計算が不可能だから、5÷0=不能 としているのです。

数学では一意に定まらないことを嫌います。だから「0で割っちゃダメ」だと定義するのです。知らんけど


※ 2021.11.12 一部加筆しました。

ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...