代入法による連立方程式の同値変形を2つに分けた理由が今回の問題にあります。
次のような計算は高校数学Ⅱ「図形と方程式」で出てきます。直線と円との共有点を求めるときにこれを解くことになります。
問題 連立方程式 $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ を解け。
下の式が $y=$ になっているので代入法で解きます。
解答
$\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ y=-x+1 \end{cases}$
⇔ $\begin{cases} x=-1 \\ y=2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=-1 \end{cases}$. ▮
解説 3つの同値のうち、最初と最後はこれまでと同じなので省略します。真ん中の同値について説明しますが (⇒) は2次方程式を解きました。(⇐) は次の通りです:
$x=-1$ のとき
$x^2=1$.また $-x+1=2$ でもあるから $(-x+1)^2=4$. したがって
$x^2+(-x+1)^2=5$
を得ます。よって同値変形になっています。▮
ここからが本題です。
前回紹介しましたが、途中で得た $x$ の値を代入した式 $y=-x+1$ でなく、代入された方の式 $x^2+y^2=5$ を利用して $y$ の値を求めてもいいのでしょうか。つまり
別の解答
$\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇐①⇒ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$ ⇐②⇒ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$
⇐③⇒ $\begin{cases} x=-1 \\ y=\pm 2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=\pm 1 \end{cases}$. ▮
という解答は可能でしょうか。
①~③の同値を確認してみます。①~③の (⇒) は各自に任せ省略します。
③の (⇐) について:(1) $x=-1, \: y=\pm 2$ のとき
$x^2=1, \: y^2=4$ より $x^2+y^2=5$.
(2) $x=2, \: y=\pm 1$ のとき
$x^2=4, \: y^2=1$ より $x^2+y^2=5$.
したがって、③は同値です。
②の (⇐) について:これは上の 解説 と同じです。
①の (⇐) について: $x^2+(-x+1)^2=5, \: x^2+y^2=5$
⇒ $(-x+1)^2=5-x^2, \: y^2=5-x^2$ ⇒ $y^2=(-x+1)^2$
⇒ $y=-x+1$ または $y=-(-x+1)$.
したがって、①は同値ではありません。▮
注:この最後の部分について補足します:よく間違えるルートの性質
$A>0$ のとき $\sqrt{A^2}=A$, $A<0$ のとき $\sqrt{A^2}=-A$.
(この性質は絶対値記号を使って $\sqrt{A^2}=|A|$ のようにも書かれます)
を使うか、または、次のように計算します。
$y^2=(-x+1)^2$ ⇒ $y^2-(-x+1)^2=0$
⇒ $(y-(-x+1))(y+(-x+1))=0$
⇒ $y=-x+1$ または $y=-(-x+1)$.▮
こういうことがあるので代入法は、代入した方の式で他の値を求める方がいいのです。このため中学数学での代入法の指導で "どちらの式を使っても良い" とは教えないのだと理解しています。▢
次のクイズは前回の最後に出題したものです。
(再)クイズ 連立方程式 $\begin{cases} y=x^2 \\ y=2x+8 \end{cases}$ を次の解答例のように解いても良いでしょうか。
解答例 上の式から下の式を引くと
$0=x^2-2x-8$,
$0=(x+2)(x-4)$.
$x=-2, \: 4$.
これらをそれぞれ上の式に代入して
$x=-2$ のとき $y=(-2)^2=4$,
$x=4$ のとき $y=4^2=16$.
よって、
$(x, \: y)=(-2, \: 4), \: (4, \: 16)$. ▮
クイズの答え 良い
今回扱った問題に似ていますが、$x$ の値を出してからはどちらに代入しても構いません。加減法を使って解いていますが、代入法を意識して解くのがふつうかもしれません。このとき下を上に代入したとみても、上を下に代入したとみても構いません。
$y^2$ でなく $y$ なので今回扱った問題とは異なります。
3回に亘って扱った連立方程式は比較的かんたんなものです。一般の連立方程式を同値変形を意識して解くのは難しいので、導かれた解の十分性も確認するようにしています。▮