2022/06/25

同値変形④連立方程式の代入法 [後] ~高校数学~

代入法による連立方程式の同値変形を2つに分けた理由が今回の問題にあります。


次のような計算は高校数学Ⅱ「図形と方程式」で出てきます。直線と円との共有点を求めるときにこれを解くことになります。

問題 連立方程式 $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$  を解け。


下の式が $y=$ になっているので代入法で解きます。

解答
   $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ y=-x+1 \end{cases}$

            ⇔ $\begin{cases} x=-1 \\ y=2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=-1 \end{cases}$. ▮


解説 3つの同値のうち、最初と最後はこれまでと同じなので省略します。真ん中の同値について説明しますが (⇒) は2次方程式を解きました。(⇐) は次の通りです:

$x=-1$ のとき

    $x^2=1$.また $-x+1=2$ でもあるから  $(-x+1)^2=4$. したがって

               $x^2+(-x+1)^2=5$

を得ます。よって同値変形になっています。▮


ここからが本題です。

前回紹介しましたが、途中で得た $x$ の値を代入した式 $y=-x+1$ でなく、代入された方の式 $x^2+y^2=5$ を利用して $y$ の値を求めてもいいのでしょうか。つまり


別の解答
 $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇐①⇒ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$ ⇐②⇒ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$

          ⇐③⇒ $\begin{cases} x=-1 \\ y=\pm 2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=\pm 1 \end{cases}$. ▮


という解答は可能でしょうか。


①~③の同値を確認してみます。①~③の (⇒) は各自に任せ省略します。

③の (⇐) について:(1) $x=-1, \: y=\pm 2$ のとき

                              $x^2=1, \: y^2=4$ より   $x^2+y^2=5$.

(2) $x=2, \: y=\pm 1$ のとき

                              $x^2=4, \: y^2=1$ より   $x^2+y^2=5$.

したがって、③は同値です。


②の (⇐) について:これは上の 解説 と同じです。


①の (⇐) について: $x^2+(-x+1)^2=5, \: x^2+y^2=5$

     ⇒ $(-x+1)^2=5-x^2, \: y^2=5-x^2$ ⇒ $y^2=(-x+1)^2$

     ⇒ $y=-x+1$ または $y=-(-x+1)$.

したがって、①は同値ではありません。▮


:この最後の部分について補足します:よく間違えるルートの性質

                $A>0$ のとき $\sqrt{A^2}=A$, $A<0$ のとき $\sqrt{A^2}=-A$.

   (この性質は絶対値記号を使って $\sqrt{A^2}=|A|$ のようにも書かれます)

を使うか、または、次のように計算します。

           $y^2=(-x+1)^2$ ⇒ $y^2-(-x+1)^2=0$ 

         ⇒ $(y-(-x+1))(y+(-x+1))=0$

         ⇒ $y=-x+1$   または   $y=-(-x+1)$.▮


こういうことがあるので代入法は、代入した方の式で他の値を求める方がいいのです。このため中学数学での代入法の指導で "どちらの式を使っても良い" とは教えないのだと理解しています。▢



次のクイズは前回の最後に出題したものです。

(再)クイズ 連立方程式 $\begin{cases} y=x^2 \\ y=2x+8 \end{cases}$ を次の解答例のように解いても良いでしょうか。

解答例 上の式から下の式を引くと

       $0=x^2-2x-8$,
      $0=(x+2)(x-4)$.
        $x=-2, \: 4$.

   これらをそれぞれ上の式に代入して

   $x=-2$ のとき $y=(-2)^2=4$,
   $x=4$  のとき $y=4^2=16$.

よって、
   $(x, \: y)=(-2, \: 4), \: (4, \: 16)$. ▮


クイズの答え 良い

今回扱った問題に似ていますが、$x$ の値を出してからはどちらに代入しても構いません。加減法を使って解いていますが、代入法を意識して解くのがふつうかもしれません。このとき下を上に代入したとみても、上を下に代入したとみても構いません。
$y^2$ でなく $y$ なので今回扱った問題とは異なります。

3回に亘って扱った連立方程式は比較的かんたんなものです。一般の連立方程式を同値変形を意識して解くのは難しいので、導かれた解の十分性も確認するようにしています。▮

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