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2022/05/07

ニュートンの補間法 ~2次関数の道草~

問題 3点(2, -2), (3, 5), (-1, 1) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。


ふつうこの問題は求める2次関数の式を

           y=ax^2+bx+c \quad (a, b, c \in \mathbb R)

とおいて、3点を通ることから3本の方程式

     4a+2b+c=-2, \: 9a+3b+c=5, \: a-b+c=1

を作り、これを解いて

            a=2, \: b=-3, \: c=-4

を得て

              y=2x^2-3x-4

と求めます。▮


基本的な考え方と計算力をつけることを考えると、この解答はとてもいいと思います。ただこの問題には計算がらくになる解法があります。数学教師は問題作成のときに使っているかもしれません。

その解法というのが  Newtonの補間法  です。

2点(2, -2), (3, 5) を通ることを利用して、求める2次関数の式を

      y=l+m(x-2)+n(x-2)(x-3) \quad (l, m, n \in \mathbb R)


と置きます(実際は、x 座標のみ使います)。この式で点(2, -2)を通ることから

                 l=-2 


と決まります。次に点(3, 5)を通ることから


               l+m(3-2)=5


より m=7 と決まり、点(-1, 1) を通ることから


         l+m(-1-2)+n(-1-2)(-1-3)=1


から n=2 と決まります。よって、

         y=(-2)+7(x-2)+2(x-2)(x-3)


を整理して

              y=2x^2-3x-4

と求められます。▮


このNewtonの補間法は

命題 異なる N+1 個の実数(または複素数) \alpha_0, \alpha_1, \alpha_2, ..., \alpha_N と 任意の実数(または複素数) A_0, A_1, A_2, ..., A_N に対して

         P(\alpha_i)=A_i \quad ( i \in \{0, 1, 2, ..., N \})

を満たすN次以下の多項式 P が唯一つ存在する. ▮


を証明するときに現れる式です。その多項式 P は次のように書けます:


    P=c_0+c_1(x-\alpha_0)+c_2(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)
      + \cdots +c_N(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)(x-\alpha_2) \cdots (x-\alpha_{N-1}).


この式に P(\alpha_i)=A_i \quad ( i \in \{0, 1, 2, ..., N \}) を適用すると

             c_0, \: c_1, \: c_2, ..., c_N

が順に決まります。そのため1次方程式を繰り返しとくだけなので計算はかんたんです。実際には、PCに計算させるときに用いるとプログラムがかんたんになるのかもしれません。


この説明だと分かり難いと思うので使える形で書き直しておきます。

"3点 (\alpha, \: A), (\beta, \: B), (\gamma, \: C) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。"

という場合

      y=l+m(x-\alpha)+n(x-\alpha)(x-\beta) \quad (l, m, n \in \mathbb R)


と置き、3点(\alpha, \: A), (\beta, \: B), (\gamma, \: C) を通ることから3本の方程式が得られ、これを解いて l, m, n が決まります。

 この方法で解けている理由は末尾に記します。


確認問題 3点(1, 5), (2, 1), (3, -7) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。

答え y=-2x^2+2x+5.



この方法を最初に知ったのは、遠い記憶ですが受験参考書の赤チャートだったと思います。

次に目にしたのは代数系入門(松坂和夫)、代数学・幾何学詳説(岩切晴二)、代数学講義(高木貞治)などの専門書です。私自身はこの公式をこれまで使ったことはありません。
確認したところ、Newtonの補間式は代数系入門にしか載っていませんでした。これらの本には共通してLagrangeの補間式(ラグランジュ)が書かれていました。この式は次回紹介します。分数の形なのでNewtonの補間法を先に紹介しました。▢


ニュートンの補間法で解けている理由

これを示すには y=ax^2+bx+c との対応関係を示せばいいですね。つまり、l, \: m, \: n を求めることと a, \: b, \: c を求めることとが一対一に対応していることを示します。


       y=l+m(x-\alpha)+n(x-\alpha)(x-\beta)

          =nx^2+(m-n(\alpha +\beta))x+(l-m\alpha +n\alpha \beta)


したがって、l, \: m, \: na, \: b, \: c との関係は

       a=n, \: b=m-n(\alpha +\beta), \: c=l-m\alpha +n\alpha \beta


で与えれられます。\alpha , \: \beta は与えられている定数なので、l, \: m, \: n が判れば、a, \: b, \: c が決定します。逆に、

       n=a, \: m=b+n(\alpha +\beta), \: l=c+m\alpha +n\alpha \beta


によってa, \: b, \: c が判れば、l, \: m, \: n が順に決定します。▮

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