マイナスの授業で疑問に思いませんでしたか。
整数を用いてプラス・マイナスの計算規則を説明してきたのに、その計算規則を分数や無理数にも適用してもいいの?と
今回の話でこのシリーズは終わりです。話の主軸である環の定義を再記します:
集合 R に2つの閉じた演算 和「+」と積「・」が定義されていて
(1) 和に関して可換群を成し、(2) 積に関して半群を成し、(3) 分配律をみたす
とき、集合 R は環(カン)であると言います。
最初は、環の代表例として整数を紹介しました。次に、環であることから成り立つ性質を紹介しました:
環 R で引き算を定義し、a, \: b \in R において -(-a)=a, a-(-b)=a+b
および
a・0=0・a=0, (-a)・b=a・(-b)=-(a・b), (-a)・(-b)=a・b
を示しました。
ここで考えてほしいことがあります。
この定義をみたす数の集合、つまり、整数以外に環である数の集合があるでしょうか。
有理数、実数、複素数も環ですね。つまり、これまで話してきたマイナスの話は、有理数、実数、複素数でも成り立つということです。これが抽象化した利点です。
これまで整数の話しかしていないように見えていたと思いますが、実際は有理数、実数、複素数でのマイナスの話も同時にしていました。実際は、環であるものすべてに共通した話をしていたのです。こういうことを踏まえた上で、教師はマイナスの話の授業をしています。ただこのことを中学生に話す訳にはいかないので、もっともらしい説明をしているのです。
ところで中学・高校数学の範囲で他に環の例があるのですが気がつきますか。
(1分ほど考えてみてください)
ではその例を挙げます:
多項式、合同式、行列 (以前は高校数学にありました)
です。mod6の合同式は整域でない可換環の例で、行列は整域でない非可換環の例ですね。
整域というのは環の2元 a, \: b の積が 0 なら a=0 または b=0 ということです。方程式の因数分解による解法はこの性質を使っています。
整域でないということは、ab=0 であるが a \neq 0 かつ b \neq 0 という元があるということです。実際、
2・3 \equiv 0 \pmod 6
ですね。
中学・高校で指導されている教師は、これらのことを踏まえて授業をされていると思います。
単に問題を解くための授業は別です。▢
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