2023/05/21

論理パズル ~論理・ろんり・logic その2~

問題 カードが4枚あり、そのカードの片面には数字が一つ、もう一方の面にはアルファベットが一文字書かれています。

この4枚のカードについて

              「奇数の裏は母音である」

が正しいことを確認するには何枚のカードを裏返せば良いでしょうか。その最少枚数と裏返すカードを指摘してください。


            ※ この問題の対象者は高校2年生以降だと思いますが、実際はどうなのか
             わかりません。高校数学Ⅰで『集合と命題』を学ぶので高校2年生以降だ
       と判断したのですが、日本語を論理的に遣っているのなら年齢は問わない
             ようにも思います。少なくとも大学で使っている教科書を読むような人な
     ら、学部を問わず解けると思います。








問題の答え 「Kのカード」と「3のカード」の2枚を裏返せばよい


この問題を最初に知ったのは大学1年の頃だと記憶しています。数学セミナーの表紙に書かれていたと思うのですが、その雑誌が手元にないので真偽は不明です。それ以外でも似た問題を目にした記憶があるので、比較的知られている問題なのかと思います。

その数セミには問題と答えしか書かれてなかったと記憶しています。当時の私には直ぐには解けず、うんうん唸りながら時間を掛けて解きました。その数セミには「数学科の学生ならかんたんに解ける」ようなことが書かれていて、自分が該当しないことに軽い衝撃を受けました。大学3年生になる頃には論理に慣れるので、確かにそうなのかもしれません。


解説 4枚とも裏返せばかんたんに確認ができますが、最少枚数ではないことは分かります。「8のカード」を裏返す必要がないからです。分かりやすいように「奇数の裏は母音である」を「ならば」で書き直しましょう。

             「奇数ならば裏は母音である」

奇数は1,3,5,7,9,... で、母音は A, E, I, O, U です。

だから「8のカード」を裏返す必要がないのです。


「3のカード」を裏返してもしも母音でなかったら与えられた命題が正しくなくなるので、このカードは裏返す必要があります。ここまではかんたんに判断できるのですが、次からが問題です。


間違いが多いと思われるのは「Aのカード」を裏返すです。

母音が書かれているので裏返したくなってしまうのです。指導教官が論理の説明で好んでおっしゃっていました。「100点を取りたいならたくさん勉強しなさい」でも「たくさん勉強したのに100点を取れなかったからと言って文句を言わないように」と。つまり「AならばB」とは言いましたが「BならばA」とは言っていないと主張しているのです。

だから「Aのカード」を裏返す必要はないのです。裏返したときに「4」と書かれていても命題が間違いではありません。もう一度確認しますが、命題の主張は「奇数ならば裏は母音」です。


さて「Kのカード」ですが、これは裏返します。もしも裏返して「奇数」が書かれていたら命題が誤りになるからです。このように考えて裏返すと判断することも出来ますが、私は対偶を考えて判断します。つまり「奇数の裏は母音である」の対偶を取ると「子音ならば裏は偶数である」となります。

だから「Kのカード」は裏返します。▮


対偶の部分についての補足

対偶のつくり方は仮定と結論を否定し逆にします。対偶は元の命題と同値です。

            「奇数の裏は母音である」

           ⇔「奇数ならば裏は母音である」(言い直し)

           ⇔「母音でないならば裏は奇数でない」(ここで対偶をとった)

           ⇔「子音ならば裏は偶数である」(言い直し)

           ⇔「子音の裏は偶数である」(言い直し)

となります。

『数学事始め』でも書きましたが、数学に慣れると「pならばq」という命題を同時に「qでない ならば pでない」と読むようになります。そうしないと証明を読み解くことも大変です。数学者の証明は簡潔さから「それくらい判るだろ(以前に学んだこと)」というのを省略します。本の場合だと頁数制限も影響すると思います。授業では、口頭ですが、きちんと説明されていると思います。板書写しにとらわれて聞き逃すと大変な目にあいますが、こういう発言もメモしておくと後がらくです。


論理は学部学科に関係なく、大学では必須事項だと思うのですが現実を見るに大きな疑問を感じてしまいます。言葉の解釈を変えたり、概念を変えたりしてしまうのは勘弁願います。ジョージ・オーウェルの小説『1984』の世界はお断りです。▢

ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...