前回はニュートンの補間法を紹介しました。本来の解法と比べると少し計算がらくになるというものでしたが直接式を求める方法もあります。それがラグランジュの補間式と呼ばれるものです。
まずは 準備体操 です。次の条件をみたす x の2次式 P を作ってみてください。
条件:P(2)=0, \: P(3)=0, \: P(-1)=1.
ここで、P(2)=0 は x の2次式 P で x=2 を代入すると 0 になることを意味します。
作れましたか。難しいですよね。でも次のように考えるとかんたんに作れると思います。
いきなり3条件を考えるのでなく、2つの条件 P(2)=0, \: P(3)=0 をみたす2次式を作ってみてください。
これが出来たら条件 P(-1)=1 もみたすように加工してください。
このように作れます。
2つの条件 P(2)=0, \: P(3)=0 をみたす2次式は
P=(x-2)(x-3)
です。そして条件 P(-1)=1 もみたすようにしたいのですが、何も加工しないと
P(-1)=((-1)-2)・((-1)-3)=12
です。そこで次のようにすれば P(-1)=1 もみたします:
P=\dfrac{(x-2)(x-3)}{12}.
3条件をみたしていることを確認してください。ところで
P=(x-2)(x-3)-11
と加工しても条件 P(-1)=1 をみたすのですが、P(2)=0, \: P(3)=0 をみたさなくなってしまいます。12 で割るのが肝です。
まだ首筋がほぐれていないようです。次の条件をみたす x の2次式 Q を作ってください。
条件:P(3)=0, \: P(-1)=0, \: P(2)=-2.
作れましたか。次の通りです。
Q=\dfrac{2(x-3)(x+1)}{3}.
最後の調整は、3で割って2を掛けました。
大夫ほぐれましたね。では仕上げに次の条件をみたす x の2次式 R を作ってください。
条件:P(-1)=0, \: P(2)=0, \: P(3)=5.
このように作れましたか。
R=\dfrac{5(x+1)(x-2)}{4}.
(では本題に入ります)
問題 3点(2, -2), (3, 5), (-1, 1) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。
ラグランジュの補間式で解いてみます。
y=\dfrac{(x-2)(x-3)}{12}+\dfrac{2(x-3)(x+1)}{3}+\dfrac{5(x+1)(x-2)}{4}
が求める2次関数です。2次式なので関数のグラフは放物線であり、3点を通ることもかんたんに確認できます。
x=2 のとき y=-2, x=3 のとき y=5, x=-1 のとき y=1
になっていますね。この式を整理して
y=2x^2-3x-4
を得ます。▮
気づいた人もいると思いますが、準備運動で求めた3式 P, \: Q, \: R を足した式です。
式の作り方
求める2次関数を y=f(x) と置きます。
x 座標に注目すると順に 2, 3, -1 なので、f(2)=0, \: f(3)=0 となる2次式を作り、f(-1)=1 となるように調整します。
次は、f(3)=0, \: f(-1)=0 となる2次式を作り、f(2)=-2 となるように調整します。
そして f(-1)=0, \: f(2)=0 となる2次式を作り、f(3)=5 となるように調整します。
これらを足したものが求める式で、これがラグランジュの補間式です。
次の問題で使い方を確認してください。
確認問題 3点(1, 5), (2, 1), (3, -7) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。
答え y=-2x^2+2x+5.
最後に一般式を紹介しておきます。
ラグランジュ(Lagrange)の補間式
異なる (N+1)個の複素数 \alpha_0, \: \alpha_1, \alpha_2, ..., \alpha_N に対して f(\alpha_0)=A_0, \: f(\alpha_1)=A_1, \: f(\alpha_2)=A_2, ..., f(\alpha_N)=A_N をみたす N 次以下の多項式 f(x) は次式で与えられる:
\phi (x):=(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)・・・(x-\alpha_N)
に対して因数 x-\alpha_i \: (i=0, 1, 2, ..., N) を除いた
\phi_i (x):=(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)・・・(x-\alpha_{i-1})(x-\alpha_{i+1})・・・(x-\alpha_N)
とすると、
f(x)=A_0\dfrac{\phi_0(x)}{\phi_0(\alpha_0)}+A_1\dfrac{\phi_1(x)}{\phi_1(\alpha_1)}+A_2\dfrac{\phi_2(x)}{\phi_2(\alpha_2)}+・・・+A_N\dfrac{\phi_N(x)}{\phi_N(\alpha_N)}.
このとき、\phi_i (\alpha_i)\neq 0, \: \phi_i (\alpha_j)=0 \: (i\neq j) である。▮
このように書くと分かり難いですが、N=2 の場合が上で紹介した2次式です。▢
参考文献 岩切晴二著『代数学・幾何学詳説』(培風館)PP.36-37
前回のニュートンの補間法で紹介した数学書にも書かれています。
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