2021/01/25

小川洋子著『博士の愛した数式』で数論に興味をもったらの次は…

2月からの本格始動に向けて、想定対象の学生でない人向けに書いておこうと思います。


松坂和夫著『代数系入門』(岩波書店)をお薦めします。現在は、新装版(右)も出版されているようです。私はもちろん旧版(左)を所有しています。

 

理由の一つは、私の所有している旧版18頁には、例5としてあの「完全数」について書かれているからです。江夏豊投手の背番号28。自分自身を除いた28の約数1,2,4,7,14の和は28というあれです。

思い切って、一気に18頁を読み始めることも可能かも知れません。ちょっと手前からの§5の素数・素因数分解からでも。苺ケーキ1ホールの苺から食べ始める感じですが、数学的に面白い話は理解すればするほどこの本から湧いてくると思います。

著書の松坂さんの興味のあった分野が何であったのかwikiでみても判りませんでしたが、Galois(ガロア)理論を目標に書かれています。ベクトル空間についても触れているので、線形代数の本を読まなくても理解できるように編成されているようです。
この本をお薦めする最大の理由は、数論にもいろいろありますが、代数的整数論をやるなら、群・環・ベクトル空間・Galois理論は道具になります。群と環の一方だけでも合同式の見え方は変わります。

数学書は1頁よむだけでも1日掛かることもあるので、自分の歩調でのんびり進むといいと思います。一緒に読んでいく仲間がいるのは理想です。学生は、本来、とてもいい環境なのです。仲間もいるし、指導教官までいるからです。

最後に、この本は参考書として使ってきましたが、加群と体論はだいたい読みました。完全数も別の本で読んでいましたが、こちらの説明の方が判りやすいと思います。もう記憶は曖昧ですが、12年ほど前、大学時代のゼミ指導教諭を通じた数学ゼミ合宿で「完全数」を話しました。その発表準備のまとめのときに、この本も使ったように思います。
尚、体論で書かれているGalois理論は、E.Artin(アルティン) のGalois理論を意識して書かれたと思います。



将棋や音楽鑑賞やスポーツなどのように、数学の敷居を下げたいという思いもあります。小川洋子さんのお陰もあって、数学の専門書が置いてある書店をみても、一般向けの本がかなり増えました。私もこれまでそういう本も読んできたけれど、解るという感動は残念ながら得られません。啓蒙書であるから十分なのですが、数学のたのしみの一つに独力で、自分の頭で理解するというのもあると思います。容易いことではないと思いますが、それが達成したときの見晴らしは他の人には味わうことができません。自分だけが味わえるのです。たとえ優秀な人には5分くらいで理解できることであってもです。大切なのは自分であって他人ではないからです。


藤井聡太二冠「強くならないと見えない景色を見てみたい」


似ていると思いませんか、より理解が深まれば見える景色も変わります。見え方が変わったときの一瞬間、視野が広くなったように感じることがあります。最後まで付き合ってくれた方に感謝。▢(左 文庫、中 マンガ、右 映画)

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ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...