「すべての放物線は相似である」
これを利用して『数学事始め』の放物線をかいています。いまならグラフを描くソフトを利用するの手っ取り早いのでしょうが......
POWER POINT の画面で方眼を敷いて、点を取って曲線で結びました。土台は2次関数 y=x^2 のグラフです。この図形を拡大縮小または回転させたものを利用しています。後ほど出てくる図形も同じ方法で描いています。
教科書に書かれていた
y=\dfrac{1}{\:\:2\:\:}x^2, \: y=x^2, \: y=2x^2
のグラフを拡大縮小して確認したことがあります。実際にやって重なったときにはちょっとしたものがありました。PC上でなく、コピー機を使ったのがいいところです。y=\frac{1}{\:\:2\:\:}x^2 のグラフを50%、y=2x^2 のグラフは200%でコピーすると y=x^2 のグラフに重なります。
ここから本題です。
数学Ⅲでは2次曲線として学ぶので、y^2=4px \:\: (p \in \mathbb R) の式で習いますが \dfrac{\pi}{\:\:2\:\:} 回転させれば y=\frac{1}{4p}x^2 のグラフに重なるので y=ax^2 \:\:(a \in \mathbb R) で考えられます。さらに平行移動と回転移動によって、すべて y=ax^2 \: (a>0) の形で捉えることができます(※0)。
さて2つの図形が相似であることを言うには、ある定点からの距離の比が一定である (相似の位置にある) ことを示せばいいですね。『数学事始め』のシリーズ12 12.8「多角形の相似と一般的定義」 はこの話をするための準備でした。随分、時が経ちました。
では「すべての放物線は相似である」ことを証明するために何を示しますか。
相似は同値関係(※1)なので、2つの放物線 y=x^2 と y=ax^2 \: (a>0) の相似がいえれば十分です。そこで
証明 2つの放物線 y=x^2 と y=ax^2 \: (a>0) と 任意の直線 y=mx \: (m \neq 0 \: は任意) との交点(原点でない)をそれぞれ A, B としその点の座標を求めると
A(m, \: m^2), \:\: B(m/a, \: m^2/ a)
であり
OA:OB=|A_x|:|B_x|=|m|:|m/a|=a:1
となり比が一定なので、2つの放物線は相似の位置にあります。▢
補足
・記号 A_x は点Aの x 座標を意味します。
・上の証明で気を付けることは、a が定数であることです。だから a:1 が一定といえます。m は計算するときには固定したものとして考えていますが、任意なのでいろいろな値を取ります。もちろんマイナスも取ります。これによってどんな実数 m に対しても相似の中心(原点)から2つの図形までの距離の比が一定なので相似の位置にあると言えます。
・同値関係であることから、2つの放物線 y=ax^2 と y=bx^2 が相似であることがいえます。放物線 y=x^2 を経由させて推移律から導けます。
・関係式 OA:OB=a:1 がコピーの拡大方法を示しています。OA=aOB なので y=ax^2 のグラフを a 倍すれば y=x^2 のグラフに重なります。
きちんと証明しようとすると、どんどん長くなり本質を見失ってしまうのでこのようにしました。証明として描いた部分が主要部です。▢
※0 線形代数でx, \: y に関する2次方程式
ax^2+2hxy+by^2+2gx+2fy+c=0
の表す曲線を2次曲線といい、この2次曲線は円、楕円、双曲線、放物線および2つの直線のいずれかであることを "2次曲線の分類" で学びます。この中で放物線は y^2=4px の形に集約できることを知ります。授業ではあまり扱われないと思いますが、本には書かれていると思います。
※1 関係~ が次の3つを満たすとき同値関係という:
(1) x~x (反射律) (2) x~y ⇒ y~x (対称律) (3) x~y, y~z ⇒ x~y (推移律)
例えば、数の等号、図形の合同なども同値関係です。
このように書くと難しく感じますが、数の等号や図形の合同でほとんど何も考えずに対称律や推移律を使っていますよね。大学数学ではこれを紹介したすぐ後に、剰余類などを学ぶので難しく感じるのです。商集合、等化空間、剰余群などと言われると「?」しか出てきませんね。
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