2022/06/25

同値変形④連立方程式の代入法 [後] ~高校数学~

代入法による連立方程式の同値変形を2つに分けた理由が今回の問題にあります。


次のような計算は高校数学Ⅱ「図形と方程式」で出てきます。直線と円との共有点を求めるときにこれを解くことになります。

問題 連立方程式 $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$  を解け。


下の式が $y=$ になっているので代入法で解きます。

解答
   $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ y=-x+1 \end{cases}$

            ⇔ $\begin{cases} x=-1 \\ y=2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=-1 \end{cases}$. ▮


解説 3つの同値のうち、最初と最後はこれまでと同じなので省略します。真ん中の同値について説明しますが (⇒) は2次方程式を解きました。(⇐) は次の通りです:

$x=-1$ のとき

    $x^2=1$.また $-x+1=2$ でもあるから  $(-x+1)^2=4$. したがって

               $x^2+(-x+1)^2=5$

を得ます。よって同値変形になっています。▮


ここからが本題です。

前回紹介しましたが、途中で得た $x$ の値を代入した式 $y=-x+1$ でなく、代入された方の式 $x^2+y^2=5$ を利用して $y$ の値を求めてもいいのでしょうか。つまり


別の解答
 $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇐①⇒ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$ ⇐②⇒ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$

          ⇐③⇒ $\begin{cases} x=-1 \\ y=\pm 2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=\pm 1 \end{cases}$. ▮


という解答は可能でしょうか。


①~③の同値を確認してみます。①~③の (⇒) は各自に任せ省略します。

③の (⇐) について:(1) $x=-1, \: y=\pm 2$ のとき

                              $x^2=1, \: y^2=4$ より   $x^2+y^2=5$.

(2) $x=2, \: y=\pm 1$ のとき

                              $x^2=4, \: y^2=1$ より   $x^2+y^2=5$.

したがって、③は同値です。


②の (⇐) について:これは上の 解説 と同じです。


①の (⇐) について: $x^2+(-x+1)^2=5, \: x^2+y^2=5$

     ⇒ $(-x+1)^2=5-x^2, \: y^2=5-x^2$ ⇒ $y^2=(-x+1)^2$

     ⇒ $y=-x+1$ または $y=-(-x+1)$.

したがって、①は同値ではありません。▮


:この最後の部分について補足します:よく間違えるルートの性質

                $A>0$ のとき $\sqrt{A^2}=A$, $A<0$ のとき $\sqrt{A^2}=-A$.

   (この性質は絶対値記号を使って $\sqrt{A^2}=|A|$ のようにも書かれます)

を使うか、または、次のように計算します。

           $y^2=(-x+1)^2$ ⇒ $y^2-(-x+1)^2=0$ 

         ⇒ $(y-(-x+1))(y+(-x+1))=0$

         ⇒ $y=-x+1$   または   $y=-(-x+1)$.▮


こういうことがあるので代入法は、代入した方の式で他の値を求める方がいいのです。このため中学数学での代入法の指導で "どちらの式を使っても良い" とは教えないのだと理解しています。▢



次のクイズは前回の最後に出題したものです。

(再)クイズ 連立方程式 $\begin{cases} y=x^2 \\ y=2x+8 \end{cases}$ を次の解答例のように解いても良いでしょうか。

解答例 上の式から下の式を引くと

       $0=x^2-2x-8$,
      $0=(x+2)(x-4)$.
        $x=-2, \: 4$.

   これらをそれぞれ上の式に代入して

   $x=-2$ のとき $y=(-2)^2=4$,
   $x=4$  のとき $y=4^2=16$.

よって、
   $(x, \: y)=(-2, \: 4), \: (4, \: 16)$. ▮


クイズの答え 良い

今回扱った問題に似ていますが、$x$ の値を出してからはどちらに代入しても構いません。加減法を使って解いていますが、代入法を意識して解くのがふつうかもしれません。このとき下を上に代入したとみても、上を下に代入したとみても構いません。
$y^2$ でなく $y$ なので今回扱った問題とは異なります。

3回に亘って扱った連立方程式は比較的かんたんなものです。一般の連立方程式を同値変形を意識して解くのは難しいので、導かれた解の十分性も確認するようにしています。▮

2022/06/18

同値変形③連立方程式の代入法 [前]

本題は少し下からです。その前に材料の紹介です。 今回はクイズが2つあります。

問題 連立方程式 $\begin{cases} 3x-2y=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$ を解け。

まずは教科書に書かれているふつうの方法です。
解答 下の式を上の式に代入して
               $3x-2(2x+7)=-11$,
                    $-x-14=-11$,
                        $x=-3$.

これを下の式に代入して
                $y=2・(-3)+7=1$.

よって
                $(x, \: y)=(-3, \: 1)$. ▮


同値変形で書くと次のようになります。

     $\begin{cases} 3x-2y=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$  ⇐①⇒  $\begin{cases} 3x-2(2x+7)=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$

                    ⇔  $\begin{cases} x=-3 \\ y=2x+7 \end{cases}$

                    ⇔  $\begin{cases} x=-3 \\ y=2・(-3)+7 \end{cases}$

                    ⇔  $\begin{cases} x=-3 \\ y=1 \end{cases}$.

①の同値で式 $y=2x+7$ を添えているのがポイントです。それぞれの同値の理由は前回とほぼ同じなので省略します。これをみて分かるように上の解答は同値を意識しています。下の式 $y=2x+7$ に代入して $y$ を求めているからです。


ここから本題です。

クイズ1 解答で $x=-3$ を下の式 $3x-2y=-11$ に代入しても $y=1$ です。このように、上の式でなく下の式に代入して $y$ を求めても同値変形になっているのでしょうか。


ちょっとだけ考えてみてください。


これは中学時代のガッコのセンセが

「代入法は代入して得た結果をもう一方の代入する式に入れなければいけない。代入した方の式で計算したのでは一方の式しか満たしていない」

というようなことをおっしゃっていたのを思い出しての出題です。高校時代のセンセは

「計算がかんたんそうな方に代入する方がいい」

とおっしゃっていました。



クイズ1の答え 同値変形になっています。

怪しいですよね、確認してみます。

       $\begin{cases} 3x-2y=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$  ⇐①⇒  $\begin{cases} 3x-2(2x+7)=-11 \\ 3x-2y=-11 \end{cases}$

                    ⇐②⇒  $\begin{cases} x=-3 \\ 3x-2y=-11 \end{cases}$

                    ⇐③⇒  $\begin{cases} x=-3 \\ 3・(-3)-2y=-11 \end{cases}$

                    ⇐④⇒  $\begin{cases} x=-3 \\ y=1 \end{cases}$.


①~④の ⇒ は省略し、⇐ を確認します。


④の⇐について:$y=1$  ⇒  $-2y=-2$  ⇒  $3・(-3)-2y=-11$.


③の⇐について:下の式の $(-3)$ を上の式を使って $x$ に変える。



②の⇐について:$x=-3$  ⇒  $2x=-6$  ⇒  $2x+7=1$

              ⇒  $-2(2x+7)=-2$  ・・・[1],

        $x=-3$  ⇒  $3x=-9$  ・・・[2]. 

[1], [2] を辺々加えると
               $3x-2(2x+7)=-11$.


①の⇐について:$3x-2(2x+7)=-11, \: 3x-2y=-11$

              ⇒  $3x+11=2(2x+7), \: 3x+11=2y$

              ⇒  $2y=2(2x+7)$  ⇒  $y=2x+7$.


逆向きもいえたので確かに同値変形になっています。▮


まだ怪しいと思っている人も少なくないと思います。たぶんそれは次回の「代入法 [後]」で解決すると思います。ここに代入法を2つに分けた理由があります。次のクイズを考えておいてください。▢



クイズ2 連立方程式 $\begin{cases} y=x^2 \\ y=2x+8 \end{cases}$ を次の解答例のように解いても良いでしょうか。

解答例 上の式から下の式を引くと

                  $0=x^2-2x-8$,
                  $0=(x+2)(x-4)$,
                   $x=-2, \: 4$.

これらをそれぞれ上の式に代入して

            $x=-2$ のとき $y=(-2)^2=4$,
             $x=4$  のとき $y=4^2=16$.

よって
             $(x, \: y)=(-2, \: 4), \: (4, \: 16)$. ▮


この連立方程式は中3数学で現れる形ですね。解答解説は次回です。

2022/06/11

同値変形② 連立方程式の加減法

クイズ 連立方程式 $\begin{cases} 2x+y=9 \\ 2x-y=-1 \end{cases}$ を次のように解きました:

   (上の式+下の式) ÷4より $x=2$; (上の式-下の式) ÷2より $y=5$.

  よって、$(x, \: y)=(2, 5)$. ▮


この解き方に問題がありますか。問題があればどの部分かを指摘し、どのように修正すればいいのかを答えよ。問題がないならその正当性を主張せよ。その際、何を前提にするかを最初に述べよ。

教育大学の中学数学コースのレポート問題に丁度良いかと思います。(私なりの答えは、最後に書いておきます)


今回は連立方程式の同値変形について話しますが、その前に次の問題を解いておきます。

問題 連立方程式 $\begin{cases} x-3y=10 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$ を解け。


暗算で解けると思いますが、どのように解いたかを確認します。

解答 上の式を3倍したものを下の式から引くと

                  $11y=-33$.

両辺を $11$ で割って

                   $y=-3$.

これを上の式に代入すると

                  $x+9=10$,

                    $x=1$.

よって

                $(x, \: y)=(1, \: -3)$. ▮


このように解くことができます。
$x$ を求めるときに上の式に代入しましたが、もちろん下の式に代入して求めても構いません。計算がしやすそうな方に代入して求めて良いのでしたね。


ここから本題です。

前回の同値変形①と同じように論理を確認します:

     $x-3y=10$ かつ $3x+2y=-3$  ⇒  $11y=-33$  ⇒  $y=-3$

                          ⇒  $x+9=10$  ⇒  $x=1$

です。ということは $(x, \: y)=(1, \: -3)$ は与えられた連立方程式の必要条件を求めたのでしょうか。

$x=1, \: y=-3$ のとき
                                 $x-3y=1-3・(-3)=1+9=10$

                                 $3x+2y=3・1+2・(-3)=3-6=-3$

となるので、$(x, \: y)=(1, \: -3)$ は与えられた連立方程式の十分条件でもあるので、$(x, \: y)=(1, \: -3)$ は与えられた連立方程式の必要十分条件です。つまり

                             $\begin{cases} x-3y=10 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$  ⇔  $\begin{cases} x=1 \\ y=-3 \end{cases}$.


連立方程式を解くということは、同値条件を求めるということです。中学生には同値条件を求めているとは説明できないので、最初の頃は検算と称して、前回同様、逆を確認させていたと思います。

でも実際は逆を確認しなくても、次の同値変形をみれば分かりますが、上の解き方は同値変形を意識した解法になっています。求めた $y$ の値を一方の式に代入して $x$ を求めているからです。ここで両方の式を満たすように解いていますとの主張があります。ただ、その求めた答えが正しいか否かは、検算しないと判りません。


では、同値変形を意識して解き直してみます:

                        $\begin{cases} x-3y=10 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$  ⇐①⇒  $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$

                                                    ⇐②⇒  $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 11y=-33 \end{cases}$

                                                    ⇐③⇒  $\begin{cases} x-3y=10 \\ y=-3 \end{cases}$

                                                        ⇐④⇒  $\begin{cases}  x-3・(-3)=10 \\ y=-3 \end{cases}$

                                                        ⇐⑤⇒  $\begin{cases} x=1 \\ y=-3 \end{cases}$.


①, ③, ⑤ の同値は前回と同じ理由なので省略します。問題は②と④の同値です。

                        $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$    ⇐②⇒  $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 11y=-33 \end{cases}$

「⇒」については、第1式はそのままで第2式は $3x+2y=-3$ から $3x-9y=30$ を引くことで得られます。

「⇐」については、第1式はそのままで第2式は $3x-9y=30$ と $11y=-33$ を加えることで得られます。


                       $\begin{cases} x-3y=10 \\ y=-3 \end{cases}$        ⇐④⇒  $\begin{cases}  x-3・(-3)=10 \\ y=-3 \end{cases}$

「⇒」については説明不要ですね。
「⇐」については、第1式の $x-3・(-3)=10$ の $(-3)$ に $y=-3$ を適用すれば得られます。▮


このように同値変形を意識して書くとめんどうです。なので解答のように解きますが、その解き方が同値変形を意識されているかはとても分かり難いと思います。

「連立方程式は同値変形すれば問題なく解ける」というのを高校生のときに耳にし、同値変形を意識して解くのが難しかったのを覚えています。ここでは考えやすい問題で説明していますが、3元連立方程式に1次式でなく2次式や3次式が混じっている場合は、解答が同値変形になっているかもよく分かりません。だいたい、必要条件が求められているのかも怪しくなります。そういう連立方程式に近づくのは危険です。▢



冒頭のクイズは中学時代を思い出して作ったものです。ガッコのセンセにダメだと言われた解き方です。その理由を考えてもらいました。

クイズの答え
①前提:答えだけを求めるテスト  
 答え:問題ない。どのように解いたのか分からないから。

②前提:中学生の記述式のテスト 
 答え:問題ある。求めたのは必要条件なので、「連立方程式を解く」ということを理解していない可能性があるから。
 修正:求めた答えが与えられた2つの式を満たすかを確認すればよい。
なお、採点は〇を付けて返却時にその旨を伝え、答案にもコメントを書いておけば十分。

③前提:中学生の記述式のテストで平面幾何との関係も学んでいる
 答え:問題ない。与えられた2式は座標平面上の2直線と考えられ、平行でない2直線は必ず交点を持ち、しかもただ一つである。したがって、与えられた2直線は平行でないので必ず1点で交わり、それが求めた点の座標と考えられるから。

④前提:高校生以降の記述テスト
 答え:問題ある。②と同じ理由。
 修正:③を前提にするなら、その旨を書くべき。

⑤前提:一般的な状況
 答え:問題ない。十分性はたいてい頭の中で確認しているから。

このクイズのポイントは、「連立方程式を解く」ということを理解しているか否かです。ただ、中学生の場合は解けるかどうかの方が大事であり、同値性は気にしなくていいように思います。数学が出来るようになれば、高校数学を学んでいる中で気づくと思います。数学を嫌いにさせないことがもっとも大切です。

2022/06/04

同値変形① 超基本

用語の確認

A ⇒ B (真) かつ B ⇒ A (真) のとき、AとBは同値であるといい記号で A ⇔ B と書きました。" ⇒ " は " ならば " と読みます。 同値は、表現が異なるけど同じことを言っていると捉えればいいと思います。


基本例 「1次方程式を解きなさい」と言われたらは次のように解きませんか。 

                $4x+5=17$,

                 $4x=12$,

                  $x=3$.

これは次の等式の性質を利用して式変形をしています:
          $a=b  ⇒  a-c=b-c$,  $a=b  ⇒  ac=bc$.


覚えていないと思いますが、中1数学ならこの後に $x=3$ を元の式の左辺 $4x+5$ に代入して $17$ になるかどうかを確認します。このようにするのは、同値変形を教えていないからです(※1)。方程式や不等式を解いて得られる答えは元の式の必要十分条件です。そうでないと減点か✖ですね。もしも十分条件でいいのなら、$x^2-3x=10$ の解を $x=5$ としても満点です。


さて、上の解法の流れを意識して書くと次の通りです。

         $4x+5=17$ ⇒ $4x=12$ ⇒ $x=3$.

「⇒」のところで等式の性質を使っています。したがって $x=3$ は必要条件です。だから十分性を確認するために、$x=3$ のとき元の式が成り立つかどうかを確認します。方程式の解き方を習った当初は検算と称して確認していたと思いますが、本当は十分性の確認だったのです。


実際のところ、最初の解答ならバレません。意識して「⇒」を入れてしまったら減点対象になります。幸い、最初の解答は同値変形になっています。次のように逆も言えるからです:

         $4x+5=17$ ⇐ $4x=12$ ⇐ $x=3$.

右の ⇐ は両辺を4倍し、左の ⇐ は両辺に5を加えればいいからです。つまり、同値変形を意識して書けば次のようになります:

         $4x+5=17$ ⇔ $4x=12$ ⇔ $x=3$. ▮


 :"⇔" を使うときには必ず ⇒ と ⇐ を確認してくださいね(※2)。1次方程式・1次不等式くらいならかんたんに同値が確認できますが、一般の式となると神経を使うものです。▢


補足 一般に $a=b  ⇒  ac=bc$ の逆は成り立ちません。高校数学Ⅰの真偽や必要・十分条件ではお馴染みの問題です。$c \neq 0$ のとき、$a=b ⇔ ac=bc$ です。
ただし、$a, b, c \in \mathbb{C}$ とします。


※1 高校数学Ⅰで「同値」を学び、いまだと高校数学Ⅱの《式と証明》で同値変形を学ぶと思います。これ以降は授業の説明でも同値変形が意識されると思います。実際はどうでしょうか。受験指導の中での記述方法と通して学ぶのかもしれません。同値をあまり意識せずに解いているのが現状だと思います。

※2 集合・位相や代数の証明では、取り敢えず "⇒" で議論を進め、その後に逆を確認して同値であること示すことがあります。

2022/05/28

放物線はすべて相似です

          「すべての放物線は相似である」


これを利用して『数学事始め』の放物線をかいています。いまならグラフを描くソフトを利用するの手っ取り早いのでしょうが......

POWER POINT の画面で方眼を敷いて、点を取って曲線で結びました。土台は2次関数 $y=x^2$ のグラフです。この図形を拡大縮小または回転させたものを利用しています。後ほど出てくる図形も同じ方法で描いています。


教科書に書かれていた

             $y=\dfrac{1}{\:\:2\:\:}x^2, \: y=x^2, \: y=2x^2$

のグラフを拡大縮小して確認したことがあります。実際にやって重なったときにはちょっとしたものがありました。PC上でなく、コピー機を使ったのがいいところです。$y=\frac{1}{\:\:2\:\:}x^2$ のグラフを50%、$y=2x^2$ のグラフは200%でコピーすると $y=x^2$ のグラフに重なります。


ここから本題です。

数学Ⅲでは2次曲線として学ぶので、$y^2=4px \:\: (p \in \mathbb R)$ の式で習いますが $\dfrac{\pi}{\:\:2\:\:}$ 回転させれば $y=\frac{1}{4p}x^2$ のグラフに重なるので $y=ax^2 \:\:(a \in \mathbb R)$ で考えられます。さらに平行移動と回転移動によって、すべて $y=ax^2 \: (a>0)$ の形で捉えることができます(※0)。

さて2つの図形が相似であることを言うには、ある定点からの距離の比が一定である (相似の位置にある) ことを示せばいいですね。『数学事始め』のシリーズ12 12.8「多角形の相似と一般的定義」 はこの話をするための準備でした。随分、時が経ちました。



では「すべての放物線は相似である」ことを証明するために何を示しますか。


相似は同値関係(※1)なので、2つの放物線 $y=x^2$ と $y=ax^2 \: (a>0)$ の相似がいえれば十分です。そこで

証明 2つの放物線 $y=x^2$ と $y=ax^2 \: (a>0)$ と 任意の直線 $y=mx \: (m \neq 0 \: は任意)$ との交点(原点でない)をそれぞれ A, B としその点の座標を求めると

              $A(m, \: m^2), \:\: B(m/a, \: m^2/ a)$

であり

         $OA:OB=|A_x|:|B_x|=|m|:|m/a|=a:1$

となり比が一定なので、2つの放物線は相似の位置にあります。▢

補足
・記号 $A_x$ は点Aの $x$ 座標を意味します。

・上の証明で気を付けることは、$a$ が定数であることです。だから $a:1$ が一定といえます。$m$ は計算するときには固定したものとして考えていますが、任意なのでいろいろな値を取ります。もちろんマイナスも取ります。これによってどんな実数 $m$ に対しても相似の中心(原点)から2つの図形までの距離の比が一定なので相似の位置にあると言えます。

・同値関係であることから、2つの放物線 $y=ax^2$ と $y=bx^2$ が相似であることがいえます。放物線 $y=x^2$ を経由させて推移律から導けます。

・関係式 $OA:OB=a:1$ がコピーの拡大方法を示しています。$OA=aOB$ なので $y=ax^2$ のグラフを $a$ 倍すれば  $y=x^2$ のグラフに重なります。


きちんと証明しようとすると、どんどん長くなり本質を見失ってしまうのでこのようにしました。証明として描いた部分が主要部です。▢


※0 線形代数で$x, \: y$ に関する2次方程式

         $ax^2+2hxy+by^2+2gx+2fy+c=0$

の表す曲線を2次曲線といい、この2次曲線は円、楕円、双曲線、放物線および2つの直線のいずれかであることを "2次曲線の分類" で学びます。この中で放物線は $y^2=4px$ の形に集約できることを知ります。授業ではあまり扱われないと思いますが、本には書かれていると思います。


※1
 関係~ が次の3つを満たすとき同値関係という:

(1) x~x (反射律) (2) x~y ⇒ y~x (対称律) (3) x~y, y~z ⇒ x~y (推移律)

例えば、数の等号、図形の合同なども同値関係です。
このように書くと難しく感じますが、数の等号や図形の合同でほとんど何も考えずに対称律や推移律を使っていますよね。大学数学ではこれを紹介したすぐ後に、剰余類などを学ぶので難しく感じるのです。商集合、等化空間、剰余群などと言われると「?」しか出てきませんね。

2022/05/21

最大値がないことをグラフをみて判断していいのか ~極限も気になります~

問題 実数 $x>0$ 上で定義された2つの関数

               $y=x^2$,  $y=\dfrac{1}{\:\:x\:\:}$

において、それぞれの最大値および最小値を求めよ。 



関数のグラフは次の通りで、いずれも中学数学で学びます。


グラフからどちらも最大値、最小値がないと判ります。中学、高校ならこれで問題ないと思います。大学入試問題でも


         「最大値・最小値を持たないことを証明せよ」


と出題しない限り、減点されないと思います。
高校数学ではこのグラフを頼りに次の結論を得ます:

          $\displaystyle \lim_{x\downarrow 0}x^2=0$       $\displaystyle \lim_{x\to \infty }x^2=\infty$

          $\displaystyle \lim_{x\downarrow 0}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=\infty$      $\displaystyle \lim_{x\to \infty}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=0$

:極限の表記については ※1 をご覧ください。


これを用いて極限の問題を解きますが、大学では証明しなさいと言われ「...」となります。「えっ、証明すべきことだったの?」

気づいたと思いますがグラフをみて判断するのは直観的なものであり、本来、認められません。このことに中高生が気づいたのなら、秀逸な論理思考に瞠目します。

なお、最大値・最小値を持たないことを証明するのは難しくありません。背理法を用いて証明することができます。各自で考えてみてください。
ただし、高校数学までの知識の場合は

相異なる2つの実数 $a, b \: (a < b)$ に対して、$a < c < b$ なる実数 $c$ が存在することを仮定します(※2)。

これは実数の稠密性(チュウミツセイ)と呼ばれるものです。だから内容的には大学1,2の数学ということになります。▢



この補遺は一般に難しい内容です。数学科の学生でも苦しむものだからです。

補遺 $\displaystyle \lim_{x\to \infty}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=0$ について

この式の意味は、実数 $x$ をどんどん大きくすると $\dfrac{1}{\:\:x\:\:}$ の値が0に近づいていくことを意味しています。これはかなり怪しい表現ですが、次のように言い換えると明確になります。

どんなに小さな正の実数 $s$ を考えても、ある実数 $r$ より大きい実数 $x$ に対しては $\dfrac{1}{\:\:x\:\:}$ の値が $s$ よりも小さくなる。

「どんどん大きくすれば」の曖昧な部分を具体的にrより大きい実数 $x$ に対してとし、
「0に近づく」の曖昧な部分を $1/x$ が想定している小さいsよりも小さくなると言い換えたのが先人の知恵です。

これは $x>0$ なのだから $0< 1/x < s$ であり、$s$ はどんなに小さくてもいいのだから、その間にある $1/x$ は0に近づくしかないよね、という論法です(※3)。

実際、ものすごく小さい正の実数 $s$ を考えます。このとき $1/s$ も実数なので、これを
$r:=1/s$ とします。すると $r< x$ に対して

                                    $0< \dfrac{1}{\:\:x\:\:}< \dfrac{1}{\:\:r\:\:}< s$

となります。正の実数 $s$ はどんなに小さくてもいいので

                               $x\to \infty$  のとき,  $\dfrac{1}{\:\:x\:\:} \to 0$. ▮ 



※1 $x\downarrow 0$ は正の方から0に近づけることを意味しています。$x \to +0$ と同じ意味です。これを口頭で説明するときに、「正の方から0に近づける」とも言いますが「上から0に近づける」ともいうのです。
ここで「正の方から2に近づける」の表現

            $x \to 2+0$   と   $x\downarrow 2$ 

とを比べたとき後者の方が簡潔だと思いませんか。

※2 「当たり前のことをなぜ仮定するの?」と思いますよね。特に、高校数学Ⅲの中間値の定理や平均値の定理を学んだ人は尚更だと思います。

ただ少し考えてみると、当たり前のようで当たり前でないことに気づくかもしれません。実数や有理数を想定していると気づきませんが、整数を考えてみてください。整数 2, 3 の間に整数は存在しますか。

実数って何なのか気になりますよね。高校数学までは実数について議論をしません。そういうのがあるっぽいと見せて、ほとんど何も語っていません。この辺りの話をきちんとしようというのが大学以降の微分積分です。数学科以外でも大学によっては触れると思います。40年ほど前は大学1年のはじめに学びましたが、いまは1年の後半か2年だと思います。

微分積分の歴史を知ると興味深いところですが、高校数学のように実数を認めてしまって、取り敢えず複素関数まで進めてしまう方が現実的なように思います。留数定理までやって積分計算ができるようになってから厳密化する方が学びやすいと思います。この流れだと大学2年後半以降に実数論を学ぶことになります。(雑感)

なお、実数が四則演算に関して閉じていて、全順序($a \gtrless b$ or $a=b$ が成り立つ)であることを仮定していれば稠密性を断る必要はありません

※3 はさみうちの原理を使っていますが、この論法はイプシロン‐デルタ論法と言われます。感じを掴みやすくするために "どんなに小さな実数" としましたが、日本語では "任意" が使われ、英語では "any" が使われます。任意(any) というのが肝です。どんな実数sを想定してもある数rが存在し、これより先ではsより小さくなると主張しているのです。

また、いまはギリシャ文字 $\epsilon, \delta$ の代わりに $s, r$ を使いました。これは見慣れないギリシャ文字を使うだけで混乱するからです。私は $\xi$ がなかなか受け入れられませんでした。慣れると何てことないのですけどね。もちろん、$s$ を使ったのは small の頭文字からです。rはその前の文字です。$\epsilon, \delta$ はアルファベットの e, d に相当します。 

$\displaystyle \lim_{x\downarrow 0}\dfrac{1}{\:\:x\:\:}=\infty$ も気になると思いますが、大学数学の微分積分の本をご覧ください。上の説明が理解できたのなら、専門書を読んでも理解できると思います。

2022/05/14

ラグランジュの補間式 ~ 二次関数の道草② ~

前回はニュートンの補間法を紹介しました。本来の解法と比べると少し計算がらくになるというものでしたが直接式を求める方法もあります。それがラグランジュの補間式と呼ばれるものです。


まずは 準備体操 です。次の条件をみたす $x$ の2次式 $P$ を作ってみてください。

           条件:$P(2)=0, \: P(3)=0, \: P(-1)=1$.

ここで、$P(2)=0$ は $x$ の2次式 $P$ で $x=2$ を代入すると $0$ になることを意味します。



作れましたか。難しいですよね。でも次のように考えるとかんたんに作れると思います。

いきなり3条件を考えるのでなく、2つの条件 $P(2)=0, \: P(3)=0$ をみたす2次式を作ってみてください。

これが出来たら条件 $P(-1)=1$ もみたすように加工してください。



このように作れます。
2つの条件 $P(2)=0, \: P(3)=0$ をみたす2次式は

               $P=(x-2)(x-3)$

です。そして条件 $P(-1)=1$ もみたすようにしたいのですが、何も加工しないと

            $P(-1)=((-1)-2)・((-1)-3)=12$

です。そこで次のようにすれば $P(-1)=1$ もみたします:

                                           $P=\dfrac{(x-2)(x-3)}{12}$.

3条件をみたしていることを確認してください。ところで

               $P=(x-2)(x-3)-11$

と加工しても条件 $P(-1)=1$ をみたすのですが、$P(2)=0, \: P(3)=0$ をみたさなくなってしまいます。$12$ で割るのが肝です。



まだ首筋がほぐれていないようです。次の条件をみたす $x$ の2次式 $Q$ を作ってください。

           条件:$P(3)=0, \: P(-1)=0, \: P(2)=-2$.




作れましたか。次の通りです。

                 $Q=\dfrac{2(x-3)(x+1)}{3}$.

最後の調整は、3で割って2を掛けました。




大夫ほぐれましたね。では仕上げに次の条件をみたす $x$ の2次式 $R$ を作ってください。

           条件:$P(-1)=0, \: P(2)=0, \: P(3)=5$.




このように作れましたか。

                  $R=\dfrac{5(x+1)(x-2)}{4}$.


(では本題に入ります)

問題 3点(2, -2), (3, 5), (-1, 1) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。



ラグランジュの補間式
で解いてみます。

         $y=\dfrac{(x-2)(x-3)}{12}+\dfrac{2(x-3)(x+1)}{3}+\dfrac{5(x+1)(x-2)}{4}$

が求める2次関数です。2次式なので関数のグラフは放物線であり、3点を通ることもかんたんに確認できます。

   $x=2$ のとき $y=-2$,  $x=3$ のとき $y=5$,  $x=-1$ のとき $y=1$

になっていますね。この式を整理して

                 $y=2x^2-3x-4$

を得ます。▮


気づいた人もいると思いますが、準備運動で求めた3式 $P, \: Q, \: R$ を足した式です。

式の作り方

求める2次関数を $y=f(x)$ と置きます。
$x$ 座標に注目すると順に 2, 3, -1 なので、$f(2)=0, \: f(3)=0$ となる2次式を作り、$f(-1)=1$ となるように調整します。

次は、$f(3)=0, \: f(-1)=0$ となる2次式を作り、$f(2)=-2$ となるように調整します。

そして $f(-1)=0, \: f(2)=0$ となる2次式を作り、$f(3)=5$ となるように調整します。

これらを足したものが求める式で、これがラグランジュの補間式です。



次の問題で使い方を確認してください。

確認問題 3点(1, 5), (2, 1), (3, -7) を通る放物線をグラフとする2次関数を求めよ。

答え $y=-2x^2+2x+5$.



最後に一般式を紹介しておきます。

ラグランジュ(Lagrange)の補間式

異なる $(N+1)$個の複素数 $\alpha_0, \: \alpha_1, \alpha_2, ..., \alpha_N$ に対して $f(\alpha_0)=A_0, \: f(\alpha_1)=A_1, \: f(\alpha_2)=A_2, ..., f(\alpha_N)=A_N$ をみたす $N$ 次以下の多項式 $f(x)$ は次式で与えられる:

                     $\phi (x):=(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)・・・(x-\alpha_N)$

に対して因数 $x-\alpha_i \: (i=0, 1, 2, ..., N)$ を除いた

            $\phi_i (x):=(x-\alpha_0)(x-\alpha_1)・・・(x-\alpha_{i-1})(x-\alpha_{i+1})・・・(x-\alpha_N)$

とすると、

       $f(x)=A_0\dfrac{\phi_0(x)}{\phi_0(\alpha_0)}+A_1\dfrac{\phi_1(x)}{\phi_1(\alpha_1)}+A_2\dfrac{\phi_2(x)}{\phi_2(\alpha_2)}+・・・+A_N\dfrac{\phi_N(x)}{\phi_N(\alpha_N)}$.

このとき、$\phi_i (\alpha_i)\neq 0, \: \phi_i (\alpha_j)=0 \: (i\neq j)$ である。▮


このように書くと分かり難いですが、$N=2$ の場合が上で紹介した2次式です。▢

参考文献 岩切晴二著『代数学・幾何学詳説』(培風館)PP.36-37

前回のニュートンの補間法で紹介した数学書にも書かれています。

ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...