2023/04/30

「カラスは黒い」の否定は?  ~ろんり・論理・ロジック~

                「カラスは黒い」

を否定してください。





              「カラスは黒くない」

ではありません。

              「黒くないカラスがいる」

もしくは

              「あるカラスは黒くない」

となります。



ではなぜなのかをそれらしく思える手順で考察していきます。もしも形式的な説明を早く知りたいなら、この部分を飛ばして下の方の3⃣に進んでください。

考察を通じて

        「カラスは黒くない」と「あるカラスは黒くない」

が異なることを主張していることもわかります。



「カラスは黒い」を分析してみましょう。

このときのカラスは1羽でしょうか。それともカラス全体でしょうか。日本語は冠詞を付けなくても前後関係から複数か単数かを判断しますが、この場合は「カラス全体」を指していると判断するのが自然だと思います。曖昧さを無くしたいのなら、冠詞を意識して表現するのが良いですね。数学の議論をするときには曖昧さを避けるために

             「どのカラスも黒い」

もしくは

             「カラス ならば 黒い」

などと表現します。他にも表現はできそうですが、この2つで考察を進めます。

1⃣ まずは「どのカラスも黒い」を絵で表現してみます。カラスを四角で表すことにすると、1羽の黒いカラスは■で表すことができます。したがって「どのカラスも黒い」は

      ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

と表現できます。数が少ないですが、気持ちをこれですべてのカラスを表しているとみてください。これを否定するにはどうすればいいでしょうか。よくあるのは

      ▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

のようにすべてを黒くないカラスにしてしまうものですが、否定するだけなので全否定しなくてもいいのです。例えば

      ■■■■■■■■■■■■■■■■▢■■■■■■■■■■■■

は「どのカラスも黒い」ではありませんね。ここ↑に黒くないカラスが一羽います。

このように1羽でも黒くないカラスがいればいいので

         「少なくとも1羽は黒くないカラスがいる」

で否定になっています。


2⃣ もう一つの「カラス ならば 黒い」についても考察してみます。
少し強調した感じで言い直すと

            「カラス ならば 必ず黒い」

       「カラス ならば 必ず黒く、黒くないことはない」

ということは

        「カラス であって 黒くないカラスはいない」

となります。したがって、黒くないカラスが1羽でもいれば否定したことになるので

            「黒くないカラスがいる」

で否定になります。




3⃣ 最後に、形式的な話をしておきます。高校数学でも触れられたりするようですが、数学科の1年生で習うことです。

条件をp, qで表すことにします。このとき

           「pである」の否定は「pでない」
           「pでない」の否定は「pである」

      「すべてpである」の否定は「pでないものが存在する」
       「あるものはpでない」の否定は「すべてpである」
※ 「pでないものが存在する」と「あるものはpでない」は同じことを意味しています。

       「pかつq」の否定は「pでない または qでない」
       「pまたはq」の否定は「pでなく かつ qでない」

     「pならばqである」と「pでない または qである」は同値
したがって
       「pならばqである」の否定は「pであるがqでない」


集合を利用して、次のように考えることもできます:

  条件「pである」を満たすもの全体をP, 条件「qである」を満たすもの全体をQ

とすると「pならばqである」は「$P\subset Q$」なので、否定すると「$P\not\subset Q$」。したがって「pであるがqでない」となります。


毎回、毎回 1⃣や2⃣のように考えることはせず、3⃣を使って形式的に考えます。言い換えれば数学の公式のように使うのです。きちんとこの辺りのことを知りたいのなら、下に挙げた参考書をご覧ください。大学生以上なら『論理哲学論考』がおもしろいと思います。



注:数学科だと多くの場合、記号で学ぶと思います。その方が覚えやすくかつ実践的だからです。これを数学科で学ぶのは悪名高い

     「イプシロン論法」「イプシロン-n論法」「イプシロン-デルタ論法」

のためです。そうでなければ集合・位相の最初の方で学ぶと思います。


新しい教育課程なら高校国語で論理の基礎を学ぶのかもしれません。▢


論理に関する参考書

      L.ヴィトゲンシュタイン著『論理哲学論考』(岩波文庫)
      山下正男著『論理的に考えること』(岩波ジュニア新書)

数学的なもの

    細井勉著『イプシロン・デルタを理解するために』(日本評論社)

2023/04/09

関数のグラフと図形は違うの? ~[続] 中高数学の壁~

     関数のグラフは図形ですが、図形が関数のグラフとは限りません。


※ ここでいう関数は実数 $x$ を変数とする実数値関数 $y=f(x)$ のことであり、図形は方程式 $F(x, y)=0$ の実数解を $xy$ 平面上の点とみたときの点全体のことです。


書いた動機

高校数学Ⅱで図形の方程式を学び、高校数学Ⅲで2次曲線として放物線を学びます。放物線は2次関数で学んだはずなのに再び学び、式の形が $y^2=4px \: (p \in \mathbb{R})$ となります。「この式は2次関数じゃないの?」その前に中学数学で学ぶ「直線の式は関数じゃないの?」と思いませんでしたか。
数学事始めシリーズでも『図形と方程式』で「円の方程式」が話せたのでいい機会です。



定義を思い出しましょう。

関数 $y=f(x)$ のグラフとは、$y=f(x)$ を満たす点 $(x, y)$ 全体

$$\{(x, y) \mid y=f(x) \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

のことです。一方、方程式 $F(x, y)=0$ の表す図形とは、$F(x, y)=0$ の解を $xy$ 平面上の点とみたときの点全体

$$\{(x, y) \mid F(x, y)=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

のことです。

なので $F(x, y)=f(x)-y=0$ とみれば

     関数 $y=f(x)$ のグラフは方程式 $f(x)-y=0$ の表す図形です。



分かり難いので具体例で見ておきます。

1次関数 $y=2x-3$ のグラフ

$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

において、$F(x, y)=2x-y-3=0$ とみると直線

$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

となるので関数のグラフは図形です。


逆に、直線 $2x-y-3=0$ の式を $y=2x-3$ と変形すると $y$ は $x$ の関数とみられるので、直線

$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

は1次関数 $y=2x-3$ のグラフ

$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

とみることが出来ます。(※0)



ところが最初に述べたように、一般に逆は言えません。実際

       円 $x^2+y^2=1$ は関数のグラフではありません。(※1)



なぜなのでしょうか。

関数とは何かを確認します。

$y$ が $x$ の関数であるとは、 $x$ の値を1つ決めたときに $y$ の値が唯一つ決まるときをいいます。このとき、働きを $f$ で表し $y=f(x)$ と表記します。


これを踏まえて、方程式 $x^2+y^2=1$ を考察します。
$x=1$ とすると

$$1^2+y^2=1,$$

$$y^2=0,$$

$$y=0$$

となりますが、 $x=0$ とすると

$$0^2+y^2=1,$$

$$y^2=1,$$

$$y=\pm 1$$

となり $y$ の値が2つ決まるので関数ではありません。 

なお $x=2$ とすると

$$2^2+y^2=1,$$

$$y^2=-1$$

となり、この式を満たす実数 $y$ の値は存在しません。▮



円の方程式 $x^2+y^2=1$ を $y$ について解いてみます。

$$y^2=1-x^2,$$

$$y=\pm \sqrt{1-x^2\:}\:.$$

ここで

$$y=\sqrt{1-x^2\:}\:\: (-1\leqq x \leqq 1)$$

とすれば、$y$ は $x$ の関数です。この関数のグラフは円の上側の半円です。このような関数を $x^2+y^2=1$ で定まる陰関数(インカンスウ)といいます(※2)。もちろん

$$y=-\sqrt{1-x^2\:}\:\: (-1\leqq x \leqq 1)$$

も $x^2+y^2=1$ で定まる陰関数で、この関数のグラフは円の下側の半円です。▢



※0 中学数学で1次関数と直線の方程式を一緒に扱っているのはこのためです。
けれども、直線だからと言って1次関数のグラフとは限りません。
    直線 $y=3$ は1次関数の式ではなく、直線 $x=2$ は $x$ の関数ではない
からです。$y=3$ を定数関数とみることは出来ます。どんな $x$ に対しても3を対応させるという関数です。


※1 「円 $x^2+y^2=1$」 は省略した表現で

$$\{(x, y) \mid x^2+y^2=1 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

が円であり、$x^2+y^2=1$ は円を表す方程式です。もちろん $x^2+y^2-1=0$ のように表現しても構いません。図形であることを強調するために直線を

$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

と書きましたが

$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

でも構いません。こういうところも分かり難いですよね。


※2 陰関数は多変数関数を扱うようになると顔を出します。陰関数定理または陰関数を微分するときに学びます。用語は学びませんが、高校数学Ⅲでも陰関数は顔を出します。

2023/03/26

中高数学の壁 ~多項式・方程式・関数~

次の違いが説明できるのなら、第一の壁は突破しています。題材は中学数学ですが、高校数学にも通じます。

   ① 多項式 $8x+5$
   ② 方程式 $8x+5=0$
   ③ 関数 $y=8x+5$
   ④ 直線 $y=8x+5$


これら4つはとても似ていますね。特に③④の区別は難しいように思います。

まず①多項式

①~④の文字 $x, \: y$ はすべて変数と呼ばれますが、このときの $x$ は不定元という呼び名が相応しいと思っています。$x$ に入るものを指定しない限り、$8$ と $x$ の積に5を足したものでしかありません。とても無機質な感じです。



次に③関数

①の文字 $x$ に入れるものを決め、それに対して値がただ一つ対応します。特に、関数という場合には実数(または 複素数)を想定し連続的な変化を考えます。なので文字 $x$ を変数と呼ぶのがとても似合っています。例えば③の式は定義域を実数全体とする実数値関数です。関数には定義域が付きものです。

定義域は実数でなく整数でもいいのですが、その場合は関数でなく写像という語が使われることが多いようです。関数も写像も同じだと書かれていることが多いですが、上でも述べたように関数という場合には実数または複素数が想定されます。

:複素数を定義域にした場合は複素関数と呼ばれます。大学数学の2,3年生で学びます。



そして②方程式

②, ④の式は方程式です。この場合の文字 $x, \: y$ は未知数という呼び名が似合います。この2式は "(多項式)=0" と書け、ある特定の値に対してのみ等号が成り立つ式です。

②の場合は $x=-\dfrac{5}{\:8\:}$, ④の場合は無数にありますがどんな値ても成り立つという訳ではありませんね。例えば $(x, \: y)=(-1, -3), (0, 5), (1, 13)$ などです。

:さらに学びが進むとこの説明には瑕疵があるのですが、いまはこれで良しとします。



最後に④直線(図形)

③も④も同じ形で書いていますが大きな違いがあります。
③は上で述べたように $x$ に対して $y$ がただ一つ対応することを意味しています。

一方の④をきちんと書くと次のようになります。

          $\{(x, \: y) \mid y=8x+5 \:\: (x, \: y \in \mathbb{R})\}$

この記号の意味するところは

       方程式 $y=8x+5$ の解全体を座標とする点の表す図形

ということです。その図形が直線なので方程式の前に「直線」と書きました。



以上の説明で気づいてほしいことは、単に $y=8x+5$ と書いただけでは何を意味しているか判断できません。中高生の多くは「関数の式」と読み取ると思いますが、実際には何を意味しているのか判断できません。もちろん、前後関係から判断できることもあります。

単に問題を解いているうちは大して問題にならないように思いますが、大学以降の数学をたのしもうと思ったらその式が何を表しているのかを確認しましょう。

いまはこう書いていますが、昔の自分はきちんと問題を読み取らずに解いていたように思います。それでも答えが合っていると解けたと勘違いしていたのです。

穴埋め問題では解けているかどうかの判断はできませんが、記述式のテストだとどれくらい理解しているのかが採点者には判ると思います。でも安心してください。厳しく採点してしまったら点数が悪くなってしまい受け入れ側にもマイナスにはたらきます。なので受験生には採点が甘くなりがちです。▢

2023/02/05

3次方程式の根の公式を導く ~ 高校数学Ⅱ+アルファ ~

前回は、一般の3次方程式

$$ax^3+bx^2+cx+d=0 \quad (a, \: b, \: c, \: d \in \mathbb{R},\: a \neq 0)$$

$$x^3+px+q=0 \quad p, \: q \in \mathbb{R} \:\: \cdots (*)$$

のように表せることをみました。今回はこの3次方程式を解きます。


使う道具は3次式の因数分解公式

$$a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a+b\omega+c\omega^2)(a+b\omega^2+c\omega)$$

で、この式を利用して $(*)$ を因数分解します。左辺の $a$ を $x$ とし、$x$ について整理し $b, \: c$ を決定します。

$$x^3-3bcx+(b^3+c^3)=(x+b+c)(x+b\omega+c\omega^2)(x+b\omega^2+c\omega) \cdots (1)$$

と因数分解できれば求めたい根は

$$x=-b-c, \: -b\omega-c\omega^2, \: -b\omega^2-c\omega$$

です。


式 $(1)$ と $(*)$ の係数を比べると

$$bc=-\dfrac{\:p\:}{3}, \: b^3+c^3=q .$$

この式を満たす $b, \: c$ を見つければ因数分解できます。第一式を3乗すると

$$b^3c^3=-\dfrac{\:p^3\:}{27}, \: b^3+c^3=q .$$

見やすいように、$B:=b^3, \: C:=c^3$ と置くと

$$BC=-\dfrac{\:p^3\:}{27}, \: B+C=q .$$

この式を満たす $B, \: C$ は $t$ の2次方程式

$$t^2-qt-\dfrac{\:p^3\:}{27}=0$$

の根です。根の公式により

$$t=\dfrac{\:q\pm \sqrt{q^2+\dfrac{\:4p^3\:}{27}}\:}{2},$$

$$t=\dfrac{\:q\:}{2}\pm \sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}. \:\: 《← check!》$$

一方が $B$ で、もう一方が $C$ の値です。

$$B=\dfrac{\:q\:}{2}+\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}$$

とすると

$$b^3=\dfrac{\:q\:}{2}+\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}.$$

これを満たす $b$ の中の1つを選び(どれを選んでも最終結果は変わりません)

$$b=\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}+\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}}$$

とします。このとき $bc=-\dfrac{\:p\:}{3}$ によって

$$c=\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}-\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}}$$

となります。《← check!》

よって、3つの根 $x_1, \: x_2, \: x_3$ は

$$x_1=-\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}+\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}}-\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}-\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}},$$

$$x_2=-\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}+\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}}\:\omega-\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}-\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}}\:\omega^2,$$

$$x_3=-\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}+\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}}\:\omega^2-\sqrt[3]{\:\dfrac{\:q\:}{2}-\sqrt{\dfrac{\:q^2\:}{4}+\dfrac{\:p^3\:}{27}}}\:\omega$$

となります。▮


抽象的な式変形だったので同じ手法で具体的に解いてみましょう。上の議論が理解できたのなら、根の公式を使ってみてください。

例題 3次方程式 $x^3-6x^2+6x-2=0$ を解け。  【動画あり】←クリック

解答解説 因数定理を利用しても整数解は見つけられません。《← check!

まずは前回の方法を用いて2次の項を消去します。

$x=y+2$ と未知数を変換すると

$$(y+2)^3-6(y+2)^2+6(y+2)-2=0 ,$$
$$y^3-6y-6=0. \:\: 《← check!》$$

これも整数解は見つけられません。そこで $(1)$ と比較して $b, \: c$ を1組決定します。すると

$$bc=2, \:\: b^3+c^3=-6q ,$$

$$b^3c^3=8, \:\: b^3+c^3=-6 .$$

2次方程式

$$t^2+6t+8=0$$

を解くと

$$t=-2, \: -4 .$$

したがって

$$b^3=-2$$

とすると($b^3=-4$ としても最終結果は同じになります)《← check!》

$$b=-\sqrt[3]{2}.$$

(実際は3つの根 $-\sqrt[3]{2}, \: -\sqrt[3]{2}\:\omega, \: -\sqrt[3]{2}\:\omega^2$ を持ちますが、いずれか1つを選びます)

このとき $bc=2$ より

$$c=-\sqrt[3]{4}. \:\: 《← check!》$$

したがって

$$y^3-6y-6=(y-\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{4})(y-\sqrt[3]{2}\:\omega-\sqrt[3]{4}\:\omega^2)(y-\sqrt[3]{2}\:\omega^2-\sqrt[3]{4}\:\omega)$$

と因数分解でき、根は

$$y=\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}, \: \sqrt[3]{2}\:\omega+\sqrt[3]{4}\:\omega^2, \: \sqrt[3]{2}\:\omega^2+\sqrt[3]{4}\:\omega.$$

未知数を変換して解いているので、与えられた方程式の根は

$$x=2+\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}, \: 2+\sqrt[3]{2}\:\omega+\sqrt[3]{4}\:\omega^2, \: 2+\sqrt[3]{2}\:\omega^2+\sqrt[3]{4}\:\omega.$$

です。▮

3次方程式の根の公式を覚えるのはたいへんそうですが、理屈が分ればこのように解くことができます。2次方程式を平方完成で解くようなものです。


高校の恩師が「3次方程式の解法なら気づける」と言ったのを思い出し、自分だったらどう解くかを考えていたときに3次式の因数分解公式を用いれば解けることに気づきました。これはそれを書き起こしたものです。ただし、前回紹介した未知数の変換によって3次方程式が $(*)$ のように変形できることは過去に別の解法を追ったことがあるので知っていました。もちろん、16世紀のイタリアに居たとしても、フォンタナ(タルターリア)やカルダーノのように発見できる自信はありません。先人たちによって整備された数学を学んだからに過ぎません。

九州大学理学部の落合啓之教授が高校生向けに「3次方程式」の話をしています。三部作になっていて、ガロア理論にも触れています。▢

2023/01/28

3次方程式の根の公式を導く下準備

 一般の3次方程式は

$$ax^3+bx^2+cx+d=0 \cdots (1)$$

(ただし、$a, \: b, \: c, \: d \in \mathbb{R},\: a \neq 0$)

と表すことができますが、巧みな式変形によって

$$x^3+px+q=0 \quad p, \: q \in \mathbb{R} \cdots (*)$$

のように表すことが出来、導こうとしている根の公式はこの方程式に対するものです。



ではどのように変形するかというと、$a \neq 0$ であるから $(1)$ の両辺を $a$ で割って

$$x^3+\dfrac{\:b\:}{a}x^2+\dfrac{\:c\:}{a}x+\dfrac{\:d\:}{a}=0$$

と出来ます。説明をかんたんにしたいので

$$x^3+b'x^2+c'x+d'=0 \cdots (2)$$
のように書き直します。この式から2次の項が消去できれば $(*)$ を得ます。




$x=y-\dfrac{\:b'\:}{3}$ によって未知数を変換するとうまく行きます。実際 $(2)$ に代入すると
$$\Big(y-\dfrac{\:b'\:}{3}\Big)^3+b'\Big(y-\dfrac{\:b'\:}{3}\Big)^2+c'\Big(y-\dfrac{\:b'\:}{3}\Big)+d'=0,$$
$$y^3+\Big(-\dfrac{1}{\:3\:}b'^2+c'\Big)y+\Big(\dfrac{2}{\:27\:}b'^2-\dfrac{1}{\:3\:}b'c'+d'\Big)=0$$

となり、式は込み入っていますが見事に2次の項が消去できました。この式で $y$ の係数を $p$、定数項を $q$ にし、$y$ を $x$ にして書き直したのが $(*)$ です。

ところで、どのようにして未知数の変換 $x=y-\dfrac{\:b'\:}{3}$ を得たか分かりましたか。「こうすれば上手くいく」も1つの答えですが、時間を掛ければ気づく人もいると思います。
$$(x+a)^3=x^3+3ax^2+3a^2x+a^3$$
の右辺の2次の項に着目して、$b'x^2$ を消去しようと思えば $a=-\frac{\:b'\:}{3}$ としますよね。
仕組みは単純ですが、発見するのはかんたんではありません。
まして $(1)$ が $(*)$ に変形でき、この形が一般的に解けるなんて思えますか。




上でやっていることを具体例で確認しておきましょう。
 根から導いた方程式 $x^3+3x^2-6x-8=0$ を上の未知数の変換を用いて解いてみます。
 なお、この方程式の根は $-4, \: -1, \:2$ です。

$x=y-1$ とすると
$$(y-1)^3+3(y-1)^2-6(y-1)-8=0,$$
$$y^3-9y=0.$$
これを解くと
$$y(y+3)(y-3)=0,$$
$$y=-3, \: 0, \: 3.$$
したがって、元の方程式の根は $x=y-1$ によって
$$x=-4, \: -1, \: 2$$
となり、根が一致しています。▮


次回、3次方程式の根の公式を導きます。▢

2023/01/15

解答解説『解けないと思っていたら・・・』

(再掲) 年賀問題2023

$$\displaystyle \sum_{k=1}^m 2^{k-1}=2023+n!$$

を満たす正の整数の組 $(m, \: n)$ をすべて求めてください。


答え  $(m, \: n)=(11, \: 4)$.  (これ以外に存在しないことの証明が必要です)

 noteで出題したのとは少し変えたので、「m=11」 になっています。

解答例
$$\displaystyle \sum_{k=1}^m 2^{k-1}=2^m-1$$

なので与えられた式は

$$2^m-2024=n!$$

と変形できます。ここで $n!>0$ より $m>10$ であり、 $2024=2^3\cdot 11 \cdot 23$ であることから $2^3$ で括って

$$2^3\cdot (2^{m-3}-11 \cdot 23)=n!.$$

右辺が階乗なので、左辺も階乗の形にならなければなりません。そこで必要条件を考えてみます。見やすいように左辺をもう少し変形してみます。

$$4\cdot 2\cdot 1\cdot (2^{m-3}-11 \cdot 23)=n!. \quad \cdots (*)$$

すると $2^{m-3}-11 \cdot 23$ が3を因数に持たなければならないことが分かります。
そこで mod 3 で考えると

$$2^{m-3} \equiv 11 \cdot 23 \equiv 1 \pmod 3 .$$

$2 \equiv -1 \pmod 3$ より

$$(-1)^{m-3} \equiv 1 \pmod 3$$

なので

$$m-3 \equiv 0 \pmod 2 ,$$

$$m \equiv 1 \pmod 2 \quad \cdots [1]$$

であることが必要です。

さらに $n \geqq 5$ で (*) が成り立つには  $2^{m-3}-11 \cdot 23$ が5を因数に持たなければならないので

$$2^{m-3} \equiv 11 \cdot 23 \equiv 3 \pmod 5 .$$

でなければならず、$3 \equiv 8=2^3 \pmod 5$ かつ $2^4 \equiv 1 \pmod 5$ より

$$m-3 \equiv 3 \pmod 4 ,$$

$$m \equiv 6 \equiv 2 \pmod 4 \quad \cdots [2]$$

である必要があります。ところが [1], [2] を同時にみたす整数 $m$ は存在しないので、$n \geqq 5$ で (*) が成り立つことはありません。したがって (*) が成り立つには

$$2^{m-3}-11 \cdot 23=3$$

のときしかあり得ず

$$2^{m-3}=11 \cdot 23+3=256=2^8$$

から $m=11$ のときのみです。このとき $n=4$ です。▮

(補足) [1], [2] を同時にみたすmが存在しない理由は、[1] を満たすmは奇数で [2] を満たすmが偶数だからです。



種の元
原案では $n!$ の部分を $n^2$ にしていました。これは

$$2023=1+2+2^2+2^5+2^6+2^7+2^8+2^9+2^{10}$$

で、2023 に 25 を足せば $2048=2^{11}$ となることから

$$2023+n^2=2^m$$

と勘違いしてのものでした(※1)。

$$\displaystyle \sum_{k=1}^m 2^{k-1}=2023+n^2$$

とした場合には解が存在しなく、うまく修正も出来なかったので已む無く $n!$ にし、これを note で出題しました。$n$ を大きくするに連れて急速に $n!$ は大きくなるので、あまり検討しないまま一般的に解けないだろうと判断し1組だけ見つける形にしました。

投稿後問題が気になり、一般的に解けないだろうと思いつつ他に解をもつ条件を考えていたら解けたのです。どこかに誤りがあるだろうと思っていたのですが、見つけられなかったので急遽投稿したのです。▢


※1 この式も一般的に解けますが、これが分かったのは 2023.1.14 です。

2023/01/08

年賀問題の種明かし

2023年の年賀問題

$$2023=m^2-n^2$$

を満たす正の整数の組 $(m, \: n)$ をすべて求めてください。


年賀問題の答え $(m, \: n)=(68, \: 51), \: (148, \: 141), \:(1012, \: 1011).$



すべて見つけられましたか。問題のアイディアは

$$2023=7 \cdot 17^2$$

で、$7=16-9=4^2-3^2$ と出来ることから得ました。これにより

$$2023=7 \cdot 17^2=(4^2-3^2) \cdot 17^2=(4 \cdot 17)^2-(3 \cdot 17)^2$$

が得られるのでこれを一般化して問題にしました。



解説

$$7 \cdot 17^2=2023=m^2-n^2=(m+n)(m-n)$$

$m, \: n$ が正の整数なので $m+n > m-n$ です。幸い 2023 の約数がすべて奇数なので

$$(m+n, \: m-n)=(7 \cdot 17^2, \: 1), \: (17^2, \: 7), \: (7 \cdot 17, \: 17)$$

の3組を解いたのが答えになります。▮


※ 1月1日12時に投稿した『解けないと思っていたら・・・ ~年賀問題2023(note版)~』の解答は1月15日に投稿予定です。

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