2023/04/09

関数のグラフと図形は違うの? ~[続] 中高数学の壁~

     関数のグラフは図形ですが、図形が関数のグラフとは限りません。


※ ここでいう関数は実数 $x$ を変数とする実数値関数 $y=f(x)$ のことであり、図形は方程式 $F(x, y)=0$ の実数解を $xy$ 平面上の点とみたときの点全体のことです。


書いた動機

高校数学Ⅱで図形の方程式を学び、高校数学Ⅲで2次曲線として放物線を学びます。放物線は2次関数で学んだはずなのに再び学び、式の形が $y^2=4px \: (p \in \mathbb{R})$ となります。「この式は2次関数じゃないの?」その前に中学数学で学ぶ「直線の式は関数じゃないの?」と思いませんでしたか。
数学事始めシリーズでも『図形と方程式』で「円の方程式」が話せたのでいい機会です。



定義を思い出しましょう。

関数 $y=f(x)$ のグラフとは、$y=f(x)$ を満たす点 $(x, y)$ 全体

$$\{(x, y) \mid y=f(x) \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

のことです。一方、方程式 $F(x, y)=0$ の表す図形とは、$F(x, y)=0$ の解を $xy$ 平面上の点とみたときの点全体

$$\{(x, y) \mid F(x, y)=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

のことです。

なので $F(x, y)=f(x)-y=0$ とみれば

     関数 $y=f(x)$ のグラフは方程式 $f(x)-y=0$ の表す図形です。



分かり難いので具体例で見ておきます。

1次関数 $y=2x-3$ のグラフ

$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

において、$F(x, y)=2x-y-3=0$ とみると直線

$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

となるので関数のグラフは図形です。


逆に、直線 $2x-y-3=0$ の式を $y=2x-3$ と変形すると $y$ は $x$ の関数とみられるので、直線

$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

は1次関数 $y=2x-3$ のグラフ

$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

とみることが出来ます。(※0)



ところが最初に述べたように、一般に逆は言えません。実際

       円 $x^2+y^2=1$ は関数のグラフではありません。(※1)



なぜなのでしょうか。

関数とは何かを確認します。

$y$ が $x$ の関数であるとは、 $x$ の値を1つ決めたときに $y$ の値が唯一つ決まるときをいいます。このとき、働きを $f$ で表し $y=f(x)$ と表記します。


これを踏まえて、方程式 $x^2+y^2=1$ を考察します。
$x=1$ とすると

$$1^2+y^2=1,$$

$$y^2=0,$$

$$y=0$$

となりますが、 $x=0$ とすると

$$0^2+y^2=1,$$

$$y^2=1,$$

$$y=\pm 1$$

となり $y$ の値が2つ決まるので関数ではありません。 

なお $x=2$ とすると

$$2^2+y^2=1,$$

$$y^2=-1$$

となり、この式を満たす実数 $y$ の値は存在しません。▮



円の方程式 $x^2+y^2=1$ を $y$ について解いてみます。

$$y^2=1-x^2,$$

$$y=\pm \sqrt{1-x^2\:}\:.$$

ここで

$$y=\sqrt{1-x^2\:}\:\: (-1\leqq x \leqq 1)$$

とすれば、$y$ は $x$ の関数です。この関数のグラフは円の上側の半円です。このような関数を $x^2+y^2=1$ で定まる陰関数(インカンスウ)といいます(※2)。もちろん

$$y=-\sqrt{1-x^2\:}\:\: (-1\leqq x \leqq 1)$$

も $x^2+y^2=1$ で定まる陰関数で、この関数のグラフは円の下側の半円です。▢



※0 中学数学で1次関数と直線の方程式を一緒に扱っているのはこのためです。
けれども、直線だからと言って1次関数のグラフとは限りません。
    直線 $y=3$ は1次関数の式ではなく、直線 $x=2$ は $x$ の関数ではない
からです。$y=3$ を定数関数とみることは出来ます。どんな $x$ に対しても3を対応させるという関数です。


※1 「円 $x^2+y^2=1$」 は省略した表現で

$$\{(x, y) \mid x^2+y^2=1 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$

が円であり、$x^2+y^2=1$ は円を表す方程式です。もちろん $x^2+y^2-1=0$ のように表現しても構いません。図形であることを強調するために直線を

$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

と書きましたが

$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$

でも構いません。こういうところも分かり難いですよね。


※2 陰関数は多変数関数を扱うようになると顔を出します。陰関数定理または陰関数を微分するときに学びます。用語は学びませんが、高校数学Ⅲでも陰関数は顔を出します。

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ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...