関数のグラフは図形ですが、図形が関数のグラフとは限りません。
※ ここでいう関数は実数 $x$ を変数とする実数値関数 $y=f(x)$ のことであり、図形は方程式 $F(x, y)=0$ の実数解を $xy$ 平面上の点とみたときの点全体のことです。
書いた動機
高校数学Ⅱで図形の方程式を学び、高校数学Ⅲで2次曲線として放物線を学びます。放物線は2次関数で学んだはずなのに再び学び、式の形が $y^2=4px \: (p \in \mathbb{R})$ となります。「この式は2次関数じゃないの?」その前に中学数学で学ぶ「直線の式は関数じゃないの?」と思いませんでしたか。
数学事始めシリーズでも『図形と方程式』で「円の方程式」が話せたのでいい機会です。
定義を思い出しましょう。
関数 $y=f(x)$ のグラフとは、$y=f(x)$ を満たす点 $(x, y)$ 全体
$$\{(x, y) \mid y=f(x) \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$
のことです。一方、方程式 $F(x, y)=0$ の表す図形とは、$F(x, y)=0$ の解を $xy$ 平面上の点とみたときの点全体
$$\{(x, y) \mid F(x, y)=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$
のことです。
なので $F(x, y)=f(x)-y=0$ とみれば
関数 $y=f(x)$ のグラフは方程式 $f(x)-y=0$ の表す図形です。
分かり難いので具体例で見ておきます。
1次関数 $y=2x-3$ のグラフ
$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$
において、$F(x, y)=2x-y-3=0$ とみると直線
$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$
となるので関数のグラフは図形です。
逆に、直線 $2x-y-3=0$ の式を $y=2x-3$ と変形すると $y$ は $x$ の関数とみられるので、直線
$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$
は1次関数 $y=2x-3$ のグラフ
$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$
とみることが出来ます。(※0)
ところが最初に述べたように、一般に逆は言えません。実際
円 $x^2+y^2=1$ は関数のグラフではありません。(※1)
なぜなのでしょうか。
関数とは何かを確認します。
$y$ が $x$ の関数であるとは、 $x$ の値を1つ決めたときに $y$ の値が唯一つ決まるときをいいます。このとき、働きを $f$ で表し $y=f(x)$ と表記します。
これを踏まえて、方程式 $x^2+y^2=1$ を考察します。
$x=1$ とすると
$$1^2+y^2=1,$$
$$y^2=0,$$
$$y=0$$
となりますが、 $x=0$ とすると
$$0^2+y^2=1,$$
$$y^2=1,$$
$$y=\pm 1$$
となり $y$ の値が2つ決まるので関数ではありません。
なお $x=2$ とすると
$$2^2+y^2=1,$$
$$y^2=-1$$
となり、この式を満たす実数 $y$ の値は存在しません。▮
円の方程式 $x^2+y^2=1$ を $y$ について解いてみます。
$$y^2=1-x^2,$$
$$y=\pm \sqrt{1-x^2\:}\:.$$
ここで
$$y=\sqrt{1-x^2\:}\:\: (-1\leqq x \leqq 1)$$
とすれば、$y$ は $x$ の関数です。この関数のグラフは円の上側の半円です。このような関数を $x^2+y^2=1$ で定まる陰関数(インカンスウ)といいます(※2)。もちろん
$$y=-\sqrt{1-x^2\:}\:\: (-1\leqq x \leqq 1)$$
も $x^2+y^2=1$ で定まる陰関数で、この関数のグラフは円の下側の半円です。▢
※0 中学数学で1次関数と直線の方程式を一緒に扱っているのはこのためです。
けれども、直線だからと言って1次関数のグラフとは限りません。
直線 $y=3$ は1次関数の式ではなく、直線 $x=2$ は $x$ の関数ではない
からです。$y=3$ を定数関数とみることは出来ます。どんな $x$ に対しても3を対応させるという関数です。
※1 「円 $x^2+y^2=1$」 は省略した表現で
$$\{(x, y) \mid x^2+y^2=1 \:\:(x \in \mathbb{R}) \}$$
が円であり、$x^2+y^2=1$ は円を表す方程式です。もちろん $x^2+y^2-1=0$ のように表現しても構いません。図形であることを強調するために直線を
$$\{(x, y) \mid 2x-y-3=0 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$
と書きましたが
$$\{(x, y) \mid y=2x-3 \:\:(x, \: y \in \mathbb{R}) \}$$
でも構いません。こういうところも分かり難いですよね。
※2 陰関数は多変数関数を扱うようになると顔を出します。陰関数定理または陰関数を微分するときに学びます。用語は学びませんが、高校数学Ⅲでも陰関数は顔を出します。
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