一般の3次方程式は
$$ax^3+bx^2+cx+d=0 \cdots (1)$$
(ただし、$a, \: b, \: c, \: d \in \mathbb{R},\: a \neq 0$)
と表すことができますが、巧みな式変形によって
$$x^3+px+q=0 \quad p, \: q \in \mathbb{R} \cdots (*)$$
のように表すことが出来、導こうとしている根の公式はこの方程式に対するものです。
ではどのように変形するかというと、$a \neq 0$ であるから $(1)$ の両辺を $a$ で割って
$$x^3+\dfrac{\:b\:}{a}x^2+\dfrac{\:c\:}{a}x+\dfrac{\:d\:}{a}=0$$
と出来ます。説明をかんたんにしたいので
$$x^3+b'x^2+c'x+d'=0 \cdots (2)$$
のように書き直します。この式から2次の項が消去できれば $(*)$ を得ます。
$x=y-\dfrac{\:b'\:}{3}$ によって未知数を変換するとうまく行きます。実際 $(2)$ に代入すると
$$\Big(y-\dfrac{\:b'\:}{3}\Big)^3+b'\Big(y-\dfrac{\:b'\:}{3}\Big)^2+c'\Big(y-\dfrac{\:b'\:}{3}\Big)+d'=0,$$
$$y^3+\Big(-\dfrac{1}{\:3\:}b'^2+c'\Big)y+\Big(\dfrac{2}{\:27\:}b'^2-\dfrac{1}{\:3\:}b'c'+d'\Big)=0$$
となり、式は込み入っていますが見事に2次の項が消去できました。この式で $y$ の係数を $p$、定数項を $q$ にし、$y$ を $x$ にして書き直したのが $(*)$ です。
ところで、どのようにして未知数の変換 $x=y-\dfrac{\:b'\:}{3}$ を得たか分かりましたか。「こうすれば上手くいく」も1つの答えですが、時間を掛ければ気づく人もいると思います。
$$(x+a)^3=x^3+3ax^2+3a^2x+a^3$$
の右辺の2次の項に着目して、$b'x^2$ を消去しようと思えば $a=-\frac{\:b'\:}{3}$ としますよね。
仕組みは単純ですが、発見するのはかんたんではありません。
まして $(1)$ が $(*)$ に変形でき、この形が一般的に解けるなんて思えますか。
上でやっていることを具体例で確認しておきましょう。
例 根から導いた方程式 $x^3+3x^2-6x-8=0$ を上の未知数の変換を用いて解いてみます。
なお、この方程式の根は $-4, \: -1, \:2$ です。
$x=y-1$ とすると
$$(y-1)^3+3(y-1)^2-6(y-1)-8=0,$$
$$y^3-9y=0.$$
これを解くと
$$y(y+3)(y-3)=0,$$
$$y=-3, \: 0, \: 3.$$
したがって、元の方程式の根は $x=y-1$ によって
$$x=-4, \: -1, \: 2$$
となり、根が一致しています。▮
次回、3次方程式の根の公式を導きます。▢
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