2023/01/15

解答解説『解けないと思っていたら・・・』

(再掲) 年賀問題2023

$$\displaystyle \sum_{k=1}^m 2^{k-1}=2023+n!$$

を満たす正の整数の組 $(m, \: n)$ をすべて求めてください。


答え  $(m, \: n)=(11, \: 4)$.  (これ以外に存在しないことの証明が必要です)

 noteで出題したのとは少し変えたので、「m=11」 になっています。

解答例
$$\displaystyle \sum_{k=1}^m 2^{k-1}=2^m-1$$

なので与えられた式は

$$2^m-2024=n!$$

と変形できます。ここで $n!>0$ より $m>10$ であり、 $2024=2^3\cdot 11 \cdot 23$ であることから $2^3$ で括って

$$2^3\cdot (2^{m-3}-11 \cdot 23)=n!.$$

右辺が階乗なので、左辺も階乗の形にならなければなりません。そこで必要条件を考えてみます。見やすいように左辺をもう少し変形してみます。

$$4\cdot 2\cdot 1\cdot (2^{m-3}-11 \cdot 23)=n!. \quad \cdots (*)$$

すると $2^{m-3}-11 \cdot 23$ が3を因数に持たなければならないことが分かります。
そこで mod 3 で考えると

$$2^{m-3} \equiv 11 \cdot 23 \equiv 1 \pmod 3 .$$

$2 \equiv -1 \pmod 3$ より

$$(-1)^{m-3} \equiv 1 \pmod 3$$

なので

$$m-3 \equiv 0 \pmod 2 ,$$

$$m \equiv 1 \pmod 2 \quad \cdots [1]$$

であることが必要です。

さらに $n \geqq 5$ で (*) が成り立つには  $2^{m-3}-11 \cdot 23$ が5を因数に持たなければならないので

$$2^{m-3} \equiv 11 \cdot 23 \equiv 3 \pmod 5 .$$

でなければならず、$3 \equiv 8=2^3 \pmod 5$ かつ $2^4 \equiv 1 \pmod 5$ より

$$m-3 \equiv 3 \pmod 4 ,$$

$$m \equiv 6 \equiv 2 \pmod 4 \quad \cdots [2]$$

である必要があります。ところが [1], [2] を同時にみたす整数 $m$ は存在しないので、$n \geqq 5$ で (*) が成り立つことはありません。したがって (*) が成り立つには

$$2^{m-3}-11 \cdot 23=3$$

のときしかあり得ず

$$2^{m-3}=11 \cdot 23+3=256=2^8$$

から $m=11$ のときのみです。このとき $n=4$ です。▮

(補足) [1], [2] を同時にみたすmが存在しない理由は、[1] を満たすmは奇数で [2] を満たすmが偶数だからです。



種の元
原案では $n!$ の部分を $n^2$ にしていました。これは

$$2023=1+2+2^2+2^5+2^6+2^7+2^8+2^9+2^{10}$$

で、2023 に 25 を足せば $2048=2^{11}$ となることから

$$2023+n^2=2^m$$

と勘違いしてのものでした(※1)。

$$\displaystyle \sum_{k=1}^m 2^{k-1}=2023+n^2$$

とした場合には解が存在しなく、うまく修正も出来なかったので已む無く $n!$ にし、これを note で出題しました。$n$ を大きくするに連れて急速に $n!$ は大きくなるので、あまり検討しないまま一般的に解けないだろうと判断し1組だけ見つける形にしました。

投稿後問題が気になり、一般的に解けないだろうと思いつつ他に解をもつ条件を考えていたら解けたのです。どこかに誤りがあるだろうと思っていたのですが、見つけられなかったので急遽投稿したのです。▢


※1 この式も一般的に解けますが、これが分かったのは 2023.1.14 です。

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