前回は、一般の3次方程式
ax^3+bx^2+cx+d=0 \quad (a, \: b, \: c, \: d \in \mathbb{R},\: a \neq 0)
が
x^3+px+q=0 \quad p, \: q \in \mathbb{R} \:\: \cdots (*)
のように表せることをみました。今回はこの3次方程式を解きます。
使う道具は3次式の因数分解公式
a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a+b\omega+c\omega^2)(a+b\omega^2+c\omega)
で、この式を利用して (*) を因数分解します。左辺の a を x とし、x について整理し b, \: c を決定します。
x^3-3bcx+(b^3+c^3)=(x+b+c)(x+b\omega+c\omega^2)(x+b\omega^2+c\omega) \cdots (1)
と因数分解できれば求めたい根は
x=-b-c, \: -b\omega-c\omega^2, \: -b\omega^2-c\omega
です。
式 (1) と (*) の係数を比べると
bc=-\dfrac{\:p\:}{3}, \: b^3+c^3=q .
この式を満たす b, \: c を見つければ因数分解できます。第一式を3乗すると
b^3c^3=-\dfrac{\:p^3\:}{27}, \: b^3+c^3=q .
見やすいように、B:=b^3, \: C:=c^3 と置くと
BC=-\dfrac{\:p^3\:}{27}, \: B+C=q .
この式を満たす B, \: C は t の2次方程式
t^2-qt-\dfrac{\:p^3\:}{27}=0
bc=2, \:\: b^3+c^3=-6q ,
b^3c^3=8, \:\: b^3+c^3=-6 .
2次方程式
t^2+6t+8=0
を解くと
t=-2, \: -4 .
したがって
b^3=-2
とすると(b^3=-4 としても最終結果は同じになります)《← check!》
b=-\sqrt[3]{2}.
(実際は3つの根 -\sqrt[3]{2}, \: -\sqrt[3]{2}\:\omega, \: -\sqrt[3]{2}\:\omega^2 を持ちますが、いずれか1つを選びます)
このとき bc=2 より
c=-\sqrt[3]{4}. \:\: 《← check!》
したがって
y^3-6y-6=(y-\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{4})(y-\sqrt[3]{2}\:\omega-\sqrt[3]{4}\:\omega^2)(y-\sqrt[3]{2}\:\omega^2-\sqrt[3]{4}\:\omega)
と因数分解でき、根は
y=\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}, \: \sqrt[3]{2}\:\omega+\sqrt[3]{4}\:\omega^2, \: \sqrt[3]{2}\:\omega^2+\sqrt[3]{4}\:\omega.
未知数を変換して解いているので、与えられた方程式の根は
x=2+\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}, \: 2+\sqrt[3]{2}\:\omega+\sqrt[3]{4}\:\omega^2, \: 2+\sqrt[3]{2}\:\omega^2+\sqrt[3]{4}\:\omega.
です。▮
3次方程式の根の公式を覚えるのはたいへんそうですが、理屈が分ればこのように解くことができます。2次方程式を平方完成で解くようなものです。
高校の恩師が「3次方程式の解法なら気づける」と言ったのを思い出し、自分だったらどう解くかを考えていたときに3次式の因数分解公式を用いれば解けることに気づきました。これはそれを書き起こしたものです。ただし、前回紹介した未知数の変換によって3次方程式が (*) のように変形できることは過去に別の解法を追ったことがあるので知っていました。もちろん、16世紀のイタリアに居たとしても、フォンタナ(タルターリア)やカルダーノのように発見できる自信はありません。先人たちによって整備された数学を学んだからに過ぎません。
九州大学理学部の落合啓之教授が高校生向けに「3次方程式」の話をしています。三部作になっていて、ガロア理論にも触れています。▢
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