2022/07/16

2次方程式と2次関数とb^2-4ac ~実数解の個数と共有点の個数~

2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ ・・・① の解は2次関数 $y=ax^2+bx+c$ ・・・② において $y=0$ となる $x$ の値と言い換えることができます。つまり方程式の解は、関数のグラフと $x$軸との共有点として現れるということです。ただし、$x$ は実数変数とします。


結論 2次方程式①の解と2次関数②のグラフと$x$軸との共有点について

    [Ⅰ] ①の実数解が2つ ⇔ ②の共有点が2つ ⇔ $b^2-4ac>0$

    [Ⅱ] ①の実数解が1つ ⇔ ②の共有点が1つ ⇔ $b^2-4ac=0$

    [Ⅲ] ①の実数解がない ⇔ ②の共有点がない ⇔ $b^2-4ac<0$

 が成り立つ。▮


解説
いま $a\neq 0$ である(※1)から、2次関数 $y=ax^2+bx+c$ を平方完成すると

            $y=a(x-\dfrac{b}{2a})^2-\dfrac{b^2-4ac}{4a}$

となります(※2)。このとき $a$ の符号によって放物線が下に凸か上に凸かが決まります。

[Ⅰ] (1) $a>0$ のとき 放物線は下に凸

      グラフが $x$軸と2点で交わる ⇔ 方程式が2つの実数解をもつ

 グラフが $x$軸と2点で交わる ⇔ 頂点の $y$座標がマイナス

              ⇔ $-\dfrac{b^2-4ac}{4a}<0$

              ⇔ $b^2-4ac>0$
      (いま $a>0$ であるから $-4a<0$である。これを両辺に掛けて変形した)


(2) $a<0$ のとき 放物線は上に凸

      グラフが $x$軸と2点で交わる ⇔ 方程式が2つの実数解をもつ

 グラフが $x$軸と2点で交わる ⇔ 頂点の $y$座標がプラス

              ⇔ $-\dfrac{b^2-4ac}{4a}>0$

              ⇔ $b^2-4ac>0$
      (いま $a<0$ であるから $-4a>0$である。これを両辺に掛けて変形した)

したがって [Ⅰ] が確認できました。


以下同様にして [Ⅱ], [Ⅲ] についても得られます。

[Ⅱ] (1) $a>0$ のとき 放物線は下に凸

      グラフが $x$軸と1点で交わる ⇔ 方程式が1つの実数解をもつ

     グラフが $x$軸と接する ⇔ 頂点の $y$座標が0

              ⇔ $-\dfrac{b^2-4ac}{4a}=0$

              ⇔ $b^2-4ac=0$
(2) $a<0$ のとき (省略)


[Ⅲ] (1) $a>0$ のとき 放物線は下に凸

      グラフが $x$軸と交わらない ⇔ 方程式が実数解をもたない

   グラフが $x$軸と交わらない ⇔ 頂点の $y$座標がプラス

              ⇔ $-\dfrac{b^2-4ac}{4a}>0$

              ⇔ $b^2-4ac<0$
(2) $a<0$ のとき (省略) ▮


動機
今回この話をしたのは、2次関数のグラフを用いて考えるときに、頂点のy座標について考えることと判別式 $b^2-4ac$ が同値であることを確認したかったからです。高校生の頃にこのことを知らず、両方を答案に書いたことがあったからです。
いま手元になる高校数学Ⅰの教科書にはこの説明が書かれていません。これがその助けになればと思います。▢

※1 もしも $a=0$ だと2次方程式, 2次関数でなくなります。
※2 平方完成については 19.14「平方完成の補遺」をご覧ください。

2022/07/09

同値変形⑥絶対値付き方程式

問題 方程式 $|x-1|=2x+3$ を解け。ただし、$x$ は実数とする。


ふつうは次のように解きます。絶対値の中身によって場合分けをします。

解説1 i )  $x-1>0$. つまり $x>1$ のとき

                               $x-1=2x+3$,

                                  $x=4$. ($x>1$ に反する)

ii )  $x-1=0$. つまり $x=1$ のとき

                               $0=2x+3$,

                                  $x=\frac{-3}{2}$. ($x=1$ に反する)

iii )  $x-1<0$. つまり $x<1$ のとき

                               $-(x-1)=2x+3$,

                                  $x=\frac{-2}{3}$. ($x<1$ に反しない)

よって

                                          $x=-\dfrac{\:\:2\:\:}{3}$.  ▮


グラフを利用して解くこともできます(※1)。


次のように 同値変形 で解くことも出来ます。

解説2          $|x-1|=2x+3$

          ⇔ $|x-1|^2=(2x+3)^2$ かつ $2x+3 \geqq 0$

          ⇔ $(x-1)^2=(2x+3)^2$ かつ $x \geqq \frac{-3}{2}$

                             ⇔ $(3x+2)(x+4)=0$ かつ $x \geqq \frac{-3}{2}$

                             ⇔ $x=\frac{-2}{3}$ かつ $x \geqq \frac{-3}{2}$

よって

               $x=-\dfrac{2}{\:\:3\:\:}$. ▮


最初の同値は条件 $2x+3 \geqq 0$ によって成り立ちます。

⇐ を示すとき、両辺に $\sqrt{\:\:\:}$ を取りますが、条件 $2x+3 \geqq 0$ によって右辺が $2x+3$ になります。このとき、前回も使った

               $\sqrt{A^2}=|A|$ ($A \in \mathbb{R}$)

を利用しています。2つ目の同値のときには絶対値の性質

                $|A|^2=A^2$   ($A \in \mathbb{R}$)

を使っています。▢

※1 『理一の数学事始め』 の 20.30 をご覧ください。

  

2022/07/02

同値変形⑤無理方程式

問題 方程式 $\sqrt{2x+5}=x+1$ を解け。ただし、$x$ は実数とする。


解くだけなら次のような方法があります。

解説1 両辺を自乗する

                               $(\sqrt{2x+5})^2=(x+1)^2$,

                                  $2x+5=x^2+2x+1$,

                                            $x^2=4$,

                                            $x=\pm 2$.

これは上から下への ⇒ なので、方程式が成り立つための必要条件を求めたことになります。したがって十分性を確認します。

ⅰ)$x=2$ のとき

         $\sqrt{2x+5}=\sqrt{2・2+5}=3$, $x+1=2+1=3$

となり等号が成り立つ。

ⅱ)$x=-2$ のとき

       $\sqrt{2x+5}=\sqrt{2・(-2)+5}=1$, $x+1=(-2)+1=-1$

となり等号は成り立たない。

よって、

                 $x=2$. ▮



同値変形の場合 は次のようになります。

解説2        $\sqrt{2x+5}=x+1$

                      ⇔  $(\sqrt{2x+5})^2=(x+1)^2$  かつ  $x+1 \geqq 0$

                          ⇔  $x^2=4$  かつ  $x \geqq -1$

                          ⇔ $x=2$  かつ  $x \geqq -1$

よって、

                 $x=2$. ▮                                      


同値変形でのポイントは最初の同値です。
両辺を自乗したので解説1と同じことをしているのですが、⇐ は一般に成り立ちません。
⇐ が成り立つために条件 $x+1 \geqq 0$ を付けたのです。

 $(\sqrt{2x+5})^2=(x+1)^2$ から $\sqrt{2x+5}=x+1$ を得るためには、両辺に $\sqrt{\:\:\:}$ を取ればいいように思えますが、

              $\sqrt{(x+1)^2} \neq x+1$

です。これはルートの性質

                $\sqrt{A^2}=|A|$

によるものです。実際、

        $\sqrt{(-3)^2} \neq -3$ であり $\sqrt{(-3)^2}=|-3|=3$ です。

条件 $x+1 \geqq 0$ によって

                                  $\sqrt{(x+1)^2}=|x+1|=x+1$

となります。


なお、条件 $x+1 \geqq 0$ は式 $\sqrt{2x+5}=x+1$ から得られます。

$x \in \mathbb{R}$ なので $x+1 \in \mathbb{R}$ です。したがって、$\sqrt{2x+5} \in \mathbb{R}$ であるから $\sqrt{2x+5} \geqq 0$ です。よって $x+1 \geqq 0$ を得ます。ていねいに書きましたが、ふつうは

                           $\sqrt{2x+5} \geqq 0$  なので  $x+1 \geqq 0$

とします。▢  

2022/06/25

同値変形④連立方程式の代入法 [後] ~高校数学~

代入法による連立方程式の同値変形を2つに分けた理由が今回の問題にあります。


次のような計算は高校数学Ⅱ「図形と方程式」で出てきます。直線と円との共有点を求めるときにこれを解くことになります。

問題 連立方程式 $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$  を解け。


下の式が $y=$ になっているので代入法で解きます。

解答
   $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇔ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ y=-x+1 \end{cases}$

            ⇔ $\begin{cases} x=-1 \\ y=2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=-1 \end{cases}$. ▮


解説 3つの同値のうち、最初と最後はこれまでと同じなので省略します。真ん中の同値について説明しますが (⇒) は2次方程式を解きました。(⇐) は次の通りです:

$x=-1$ のとき

    $x^2=1$.また $-x+1=2$ でもあるから  $(-x+1)^2=4$. したがって

               $x^2+(-x+1)^2=5$

を得ます。よって同値変形になっています。▮


ここからが本題です。

前回紹介しましたが、途中で得た $x$ の値を代入した式 $y=-x+1$ でなく、代入された方の式 $x^2+y^2=5$ を利用して $y$ の値を求めてもいいのでしょうか。つまり


別の解答
 $\begin{cases} x^2+y^2=5 \\ y=-x+1 \end{cases}$ ⇐①⇒ $\begin{cases} x^2+(-x+1)^2=5 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$ ⇐②⇒ $\begin{cases} x=-1, \: 2 \\ x^2+y^2=5 \end{cases}$

          ⇐③⇒ $\begin{cases} x=-1 \\ y=\pm 2 \end{cases}$ または $\begin{cases} x=2 \\ y=\pm 1 \end{cases}$. ▮


という解答は可能でしょうか。


①~③の同値を確認してみます。①~③の (⇒) は各自に任せ省略します。

③の (⇐) について:(1) $x=-1, \: y=\pm 2$ のとき

                              $x^2=1, \: y^2=4$ より   $x^2+y^2=5$.

(2) $x=2, \: y=\pm 1$ のとき

                              $x^2=4, \: y^2=1$ より   $x^2+y^2=5$.

したがって、③は同値です。


②の (⇐) について:これは上の 解説 と同じです。


①の (⇐) について: $x^2+(-x+1)^2=5, \: x^2+y^2=5$

     ⇒ $(-x+1)^2=5-x^2, \: y^2=5-x^2$ ⇒ $y^2=(-x+1)^2$

     ⇒ $y=-x+1$ または $y=-(-x+1)$.

したがって、①は同値ではありません。▮


:この最後の部分について補足します:よく間違えるルートの性質

                $A>0$ のとき $\sqrt{A^2}=A$, $A<0$ のとき $\sqrt{A^2}=-A$.

   (この性質は絶対値記号を使って $\sqrt{A^2}=|A|$ のようにも書かれます)

を使うか、または、次のように計算します。

           $y^2=(-x+1)^2$ ⇒ $y^2-(-x+1)^2=0$ 

         ⇒ $(y-(-x+1))(y+(-x+1))=0$

         ⇒ $y=-x+1$   または   $y=-(-x+1)$.▮


こういうことがあるので代入法は、代入した方の式で他の値を求める方がいいのです。このため中学数学での代入法の指導で "どちらの式を使っても良い" とは教えないのだと理解しています。▢



次のクイズは前回の最後に出題したものです。

(再)クイズ 連立方程式 $\begin{cases} y=x^2 \\ y=2x+8 \end{cases}$ を次の解答例のように解いても良いでしょうか。

解答例 上の式から下の式を引くと

       $0=x^2-2x-8$,
      $0=(x+2)(x-4)$.
        $x=-2, \: 4$.

   これらをそれぞれ上の式に代入して

   $x=-2$ のとき $y=(-2)^2=4$,
   $x=4$  のとき $y=4^2=16$.

よって、
   $(x, \: y)=(-2, \: 4), \: (4, \: 16)$. ▮


クイズの答え 良い

今回扱った問題に似ていますが、$x$ の値を出してからはどちらに代入しても構いません。加減法を使って解いていますが、代入法を意識して解くのがふつうかもしれません。このとき下を上に代入したとみても、上を下に代入したとみても構いません。
$y^2$ でなく $y$ なので今回扱った問題とは異なります。

3回に亘って扱った連立方程式は比較的かんたんなものです。一般の連立方程式を同値変形を意識して解くのは難しいので、導かれた解の十分性も確認するようにしています。▮

2022/06/18

同値変形③連立方程式の代入法 [前]

本題は少し下からです。その前に材料の紹介です。 今回はクイズが2つあります。

問題 連立方程式 $\begin{cases} 3x-2y=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$ を解け。

まずは教科書に書かれているふつうの方法です。
解答 下の式を上の式に代入して
               $3x-2(2x+7)=-11$,
                    $-x-14=-11$,
                        $x=-3$.

これを下の式に代入して
                $y=2・(-3)+7=1$.

よって
                $(x, \: y)=(-3, \: 1)$. ▮


同値変形で書くと次のようになります。

     $\begin{cases} 3x-2y=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$  ⇐①⇒  $\begin{cases} 3x-2(2x+7)=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$

                    ⇔  $\begin{cases} x=-3 \\ y=2x+7 \end{cases}$

                    ⇔  $\begin{cases} x=-3 \\ y=2・(-3)+7 \end{cases}$

                    ⇔  $\begin{cases} x=-3 \\ y=1 \end{cases}$.

①の同値で式 $y=2x+7$ を添えているのがポイントです。それぞれの同値の理由は前回とほぼ同じなので省略します。これをみて分かるように上の解答は同値を意識しています。下の式 $y=2x+7$ に代入して $y$ を求めているからです。


ここから本題です。

クイズ1 解答で $x=-3$ を下の式 $3x-2y=-11$ に代入しても $y=1$ です。このように、上の式でなく下の式に代入して $y$ を求めても同値変形になっているのでしょうか。


ちょっとだけ考えてみてください。


これは中学時代のガッコのセンセが

「代入法は代入して得た結果をもう一方の代入する式に入れなければいけない。代入した方の式で計算したのでは一方の式しか満たしていない」

というようなことをおっしゃっていたのを思い出しての出題です。高校時代のセンセは

「計算がかんたんそうな方に代入する方がいい」

とおっしゃっていました。



クイズ1の答え 同値変形になっています。

怪しいですよね、確認してみます。

       $\begin{cases} 3x-2y=-11 \\ y=2x+7 \end{cases}$  ⇐①⇒  $\begin{cases} 3x-2(2x+7)=-11 \\ 3x-2y=-11 \end{cases}$

                    ⇐②⇒  $\begin{cases} x=-3 \\ 3x-2y=-11 \end{cases}$

                    ⇐③⇒  $\begin{cases} x=-3 \\ 3・(-3)-2y=-11 \end{cases}$

                    ⇐④⇒  $\begin{cases} x=-3 \\ y=1 \end{cases}$.


①~④の ⇒ は省略し、⇐ を確認します。


④の⇐について:$y=1$  ⇒  $-2y=-2$  ⇒  $3・(-3)-2y=-11$.


③の⇐について:下の式の $(-3)$ を上の式を使って $x$ に変える。



②の⇐について:$x=-3$  ⇒  $2x=-6$  ⇒  $2x+7=1$

              ⇒  $-2(2x+7)=-2$  ・・・[1],

        $x=-3$  ⇒  $3x=-9$  ・・・[2]. 

[1], [2] を辺々加えると
               $3x-2(2x+7)=-11$.


①の⇐について:$3x-2(2x+7)=-11, \: 3x-2y=-11$

              ⇒  $3x+11=2(2x+7), \: 3x+11=2y$

              ⇒  $2y=2(2x+7)$  ⇒  $y=2x+7$.


逆向きもいえたので確かに同値変形になっています。▮


まだ怪しいと思っている人も少なくないと思います。たぶんそれは次回の「代入法 [後]」で解決すると思います。ここに代入法を2つに分けた理由があります。次のクイズを考えておいてください。▢



クイズ2 連立方程式 $\begin{cases} y=x^2 \\ y=2x+8 \end{cases}$ を次の解答例のように解いても良いでしょうか。

解答例 上の式から下の式を引くと

                  $0=x^2-2x-8$,
                  $0=(x+2)(x-4)$,
                   $x=-2, \: 4$.

これらをそれぞれ上の式に代入して

            $x=-2$ のとき $y=(-2)^2=4$,
             $x=4$  のとき $y=4^2=16$.

よって
             $(x, \: y)=(-2, \: 4), \: (4, \: 16)$. ▮


この連立方程式は中3数学で現れる形ですね。解答解説は次回です。

2022/06/11

同値変形② 連立方程式の加減法

クイズ 連立方程式 $\begin{cases} 2x+y=9 \\ 2x-y=-1 \end{cases}$ を次のように解きました:

   (上の式+下の式) ÷4より $x=2$; (上の式-下の式) ÷2より $y=5$.

  よって、$(x, \: y)=(2, 5)$. ▮


この解き方に問題がありますか。問題があればどの部分かを指摘し、どのように修正すればいいのかを答えよ。問題がないならその正当性を主張せよ。その際、何を前提にするかを最初に述べよ。

教育大学の中学数学コースのレポート問題に丁度良いかと思います。(私なりの答えは、最後に書いておきます)


今回は連立方程式の同値変形について話しますが、その前に次の問題を解いておきます。

問題 連立方程式 $\begin{cases} x-3y=10 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$ を解け。


暗算で解けると思いますが、どのように解いたかを確認します。

解答 上の式を3倍したものを下の式から引くと

                  $11y=-33$.

両辺を $11$ で割って

                   $y=-3$.

これを上の式に代入すると

                  $x+9=10$,

                    $x=1$.

よって

                $(x, \: y)=(1, \: -3)$. ▮


このように解くことができます。
$x$ を求めるときに上の式に代入しましたが、もちろん下の式に代入して求めても構いません。計算がしやすそうな方に代入して求めて良いのでしたね。


ここから本題です。

前回の同値変形①と同じように論理を確認します:

     $x-3y=10$ かつ $3x+2y=-3$  ⇒  $11y=-33$  ⇒  $y=-3$

                          ⇒  $x+9=10$  ⇒  $x=1$

です。ということは $(x, \: y)=(1, \: -3)$ は与えられた連立方程式の必要条件を求めたのでしょうか。

$x=1, \: y=-3$ のとき
                                 $x-3y=1-3・(-3)=1+9=10$

                                 $3x+2y=3・1+2・(-3)=3-6=-3$

となるので、$(x, \: y)=(1, \: -3)$ は与えられた連立方程式の十分条件でもあるので、$(x, \: y)=(1, \: -3)$ は与えられた連立方程式の必要十分条件です。つまり

                             $\begin{cases} x-3y=10 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$  ⇔  $\begin{cases} x=1 \\ y=-3 \end{cases}$.


連立方程式を解くということは、同値条件を求めるということです。中学生には同値条件を求めているとは説明できないので、最初の頃は検算と称して、前回同様、逆を確認させていたと思います。

でも実際は逆を確認しなくても、次の同値変形をみれば分かりますが、上の解き方は同値変形を意識した解法になっています。求めた $y$ の値を一方の式に代入して $x$ を求めているからです。ここで両方の式を満たすように解いていますとの主張があります。ただ、その求めた答えが正しいか否かは、検算しないと判りません。


では、同値変形を意識して解き直してみます:

                        $\begin{cases} x-3y=10 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$  ⇐①⇒  $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$

                                                    ⇐②⇒  $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 11y=-33 \end{cases}$

                                                    ⇐③⇒  $\begin{cases} x-3y=10 \\ y=-3 \end{cases}$

                                                        ⇐④⇒  $\begin{cases}  x-3・(-3)=10 \\ y=-3 \end{cases}$

                                                        ⇐⑤⇒  $\begin{cases} x=1 \\ y=-3 \end{cases}$.


①, ③, ⑤ の同値は前回と同じ理由なので省略します。問題は②と④の同値です。

                        $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 3x+2y=-3 \end{cases}$    ⇐②⇒  $\begin{cases} 3x-9y=30 \\ 11y=-33 \end{cases}$

「⇒」については、第1式はそのままで第2式は $3x+2y=-3$ から $3x-9y=30$ を引くことで得られます。

「⇐」については、第1式はそのままで第2式は $3x-9y=30$ と $11y=-33$ を加えることで得られます。


                       $\begin{cases} x-3y=10 \\ y=-3 \end{cases}$        ⇐④⇒  $\begin{cases}  x-3・(-3)=10 \\ y=-3 \end{cases}$

「⇒」については説明不要ですね。
「⇐」については、第1式の $x-3・(-3)=10$ の $(-3)$ に $y=-3$ を適用すれば得られます。▮


このように同値変形を意識して書くとめんどうです。なので解答のように解きますが、その解き方が同値変形を意識されているかはとても分かり難いと思います。

「連立方程式は同値変形すれば問題なく解ける」というのを高校生のときに耳にし、同値変形を意識して解くのが難しかったのを覚えています。ここでは考えやすい問題で説明していますが、3元連立方程式に1次式でなく2次式や3次式が混じっている場合は、解答が同値変形になっているかもよく分かりません。だいたい、必要条件が求められているのかも怪しくなります。そういう連立方程式に近づくのは危険です。▢



冒頭のクイズは中学時代を思い出して作ったものです。ガッコのセンセにダメだと言われた解き方です。その理由を考えてもらいました。

クイズの答え
①前提:答えだけを求めるテスト  
 答え:問題ない。どのように解いたのか分からないから。

②前提:中学生の記述式のテスト 
 答え:問題ある。求めたのは必要条件なので、「連立方程式を解く」ということを理解していない可能性があるから。
 修正:求めた答えが与えられた2つの式を満たすかを確認すればよい。
なお、採点は〇を付けて返却時にその旨を伝え、答案にもコメントを書いておけば十分。

③前提:中学生の記述式のテストで平面幾何との関係も学んでいる
 答え:問題ない。与えられた2式は座標平面上の2直線と考えられ、平行でない2直線は必ず交点を持ち、しかもただ一つである。したがって、与えられた2直線は平行でないので必ず1点で交わり、それが求めた点の座標と考えられるから。

④前提:高校生以降の記述テスト
 答え:問題ある。②と同じ理由。
 修正:③を前提にするなら、その旨を書くべき。

⑤前提:一般的な状況
 答え:問題ない。十分性はたいてい頭の中で確認しているから。

このクイズのポイントは、「連立方程式を解く」ということを理解しているか否かです。ただ、中学生の場合は解けるかどうかの方が大事であり、同値性は気にしなくていいように思います。数学が出来るようになれば、高校数学を学んでいる中で気づくと思います。数学を嫌いにさせないことがもっとも大切です。

2022/06/04

同値変形① 超基本

用語の確認

A ⇒ B (真) かつ B ⇒ A (真) のとき、AとBは同値であるといい記号で A ⇔ B と書きました。" ⇒ " は " ならば " と読みます。 同値は、表現が異なるけど同じことを言っていると捉えればいいと思います。


基本例 「1次方程式を解きなさい」と言われたらは次のように解きませんか。 

                $4x+5=17$,

                 $4x=12$,

                  $x=3$.

これは次の等式の性質を利用して式変形をしています:
          $a=b  ⇒  a-c=b-c$,  $a=b  ⇒  ac=bc$.


覚えていないと思いますが、中1数学ならこの後に $x=3$ を元の式の左辺 $4x+5$ に代入して $17$ になるかどうかを確認します。このようにするのは、同値変形を教えていないからです(※1)。方程式や不等式を解いて得られる答えは元の式の必要十分条件です。そうでないと減点か✖ですね。もしも十分条件でいいのなら、$x^2-3x=10$ の解を $x=5$ としても満点です。


さて、上の解法の流れを意識して書くと次の通りです。

         $4x+5=17$ ⇒ $4x=12$ ⇒ $x=3$.

「⇒」のところで等式の性質を使っています。したがって $x=3$ は必要条件です。だから十分性を確認するために、$x=3$ のとき元の式が成り立つかどうかを確認します。方程式の解き方を習った当初は検算と称して確認していたと思いますが、本当は十分性の確認だったのです。


実際のところ、最初の解答ならバレません。意識して「⇒」を入れてしまったら減点対象になります。幸い、最初の解答は同値変形になっています。次のように逆も言えるからです:

         $4x+5=17$ ⇐ $4x=12$ ⇐ $x=3$.

右の ⇐ は両辺を4倍し、左の ⇐ は両辺に5を加えればいいからです。つまり、同値変形を意識して書けば次のようになります:

         $4x+5=17$ ⇔ $4x=12$ ⇔ $x=3$. ▮


 :"⇔" を使うときには必ず ⇒ と ⇐ を確認してくださいね(※2)。1次方程式・1次不等式くらいならかんたんに同値が確認できますが、一般の式となると神経を使うものです。▢


補足 一般に $a=b  ⇒  ac=bc$ の逆は成り立ちません。高校数学Ⅰの真偽や必要・十分条件ではお馴染みの問題です。$c \neq 0$ のとき、$a=b ⇔ ac=bc$ です。
ただし、$a, b, c \in \mathbb{C}$ とします。


※1 高校数学Ⅰで「同値」を学び、いまだと高校数学Ⅱの《式と証明》で同値変形を学ぶと思います。これ以降は授業の説明でも同値変形が意識されると思います。実際はどうでしょうか。受験指導の中での記述方法と通して学ぶのかもしれません。同値をあまり意識せずに解いているのが現状だと思います。

※2 集合・位相や代数の証明では、取り敢えず "⇒" で議論を進め、その後に逆を確認して同値であること示すことがあります。

ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...