2021/09/11

初等幾何で見つけた等比中項(等比数列) 

 命題33(直角三角形の相似)
角Cを直角とする直角三角形ABCの頂点Cから斜辺に垂線を下ろしその足をHとすると次が成り立つ。

(1)相似な三角形が3つできる:△AHC∽△ACB∽△CHB,
(2)CH^2=AH・BH(CHの自乗はAHとBHの積に等しい),
(3)AC^2=AH・AB(ACの自乗はAHとABの積に等しい).▮


これは『理一の数学事始め』12.10「直角三角形の相似」で紹介した命題なのですが、この
(2), (3) は覚えやすいと思うのです。ただしそれには条件があって、その条件は「高校数学Bで学ぶ等比数列および等比中項を知っている」です。

これを前提にすると(2), (3) は次のように書けます。 

(2) 垂線とそれによって断たれた斜辺の2つの部分は垂線を等比中項とする等比数列を成す。つまりAH, CH, BHはこの順で等比数列を成し、CH^2=AH・BH.

(3) 元の三角形の直角でない頂点を共有する3つの線分は元の三角形の直角の挟辺を等比中項とする等比数列を成す。つまりAH, AC, ABはこの順で等比数列を成し、AC^2=AH・AB.


どうでしょう、覚えやすいと思いませんか。上で使った数学用語を確認しておきます。

数列とは数の並びのことで、等比数列とはその数の並び順に比を取るとその比が等しいということです。特に3数が等比数列を成すとき、真ん中の数を等比中項といいます。

例えば、3, 1, 4, 1, 5, 9, 2, ... は1つの数列で、3, 6, 12, 24, 48, 96, ... は等比数列を成しています。
なぜなら順に比を取ると6/3, 12/6, 24/12, 48/24, 96/48 となりこれらはすべて2に等しいからです。
3数3, 6, 12 は等比数列を成しています。
したがって 6/3=12/6 であり、変形すると 6^2=3・12 が成り立ちます。
特に、a, b, c が等比数列を成しbが等比中項であれば b/a=c/b であることからb^2=ac が成り立ちます。

左)黒須康之介著『平面立体 幾何学』新数学シリーズ2(培風館)
右)寺阪英孝著『幾何とその構造』(日本評論社)


この命題は黒須の87ページに紹介されていますが、そこでは等比中項でなく比例中項という用語で書かれています。同じ命題は寺阪にも書かれていますが、そこには数式で書かれているだけです。この2冊ともピタゴラスの定理を証明するために書かれています。

この2冊は絶版ですが、初等幾何の本はいろいろあるので書店やネットで見つけられると思います。実物を見ないで買うときは慎重に。専門書はそうそう書店に置いてないので仕方ないですけどね。▢

下の画像が上の2冊です。左 黒須(B6), 右 寺阪(B5)。( )は大きさです。




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