最初に、皆さんに紹介したい本を提示します。数学に興味があれば一度は目にしているかもしれませんし、既に読まれてるかもしれません。
加藤 和也 著『フェルマーの最終定理・佐藤-テイト予想解決への道』
(類体論と非可換類体論1)
大学入試問題の数学が解けなくても数学をたのしむことはできます。歴史クイズが解けなくても歴史がたのしめるのと同じです。文系、芸術系、体育系とか関係なく、もちろん学歴や年齢にも関係なく、興味を持ったら数学をたのしんでください。
数学への興味の持ち方はいろいろです。
フィールズ賞(数学の賞)を日本人数学者が受賞しニュースで大々的に取り上げられ、その数学に興味を持つとか。教科書に書かれている数学者の逸話に興味をもつとか。数学教師の数学雑談で未解決問題を知るとかたくさん考えられます。
よくあるのは2次方程式の根の公式(解の公式)を学び、3次方程式・4次方程式には根の公式があるが、5次以上の代数方程式は一般に解けないということです。これを解決した数学者の一人アーベルの28歳での病死や、もう一人の数学者ガロアの決闘のために20歳で亡くなったことなどは衝撃的です。
階乗が使われる例として書き始めたn次対称群および交代群が5次以上の代数方程式には根の公式が存在しないことに大きく関わっています。それを紹介している啓蒙書なら、根の置換と対称群・交代群には触れていると思います。でも啓蒙書は動機を与えるものなので、詳しいことは分かりません。わたしも数冊読みましたが、雰囲気だけしか掴めませんでした。
この話が書かれている啓蒙書のタイトルには『ガロア理論』(※1) が入っています。専門書なら 群・環・体・ガロア理論 という並びで書かれていることが多いです。専門書に
E.アルティン 著『ガロア理論入門』(東京図書、ちくま学芸文庫)
があります。線形代数だけを前提に書かれているというので購入したのですが、その当時の私には読めませんでした。結果的に読んだのですが代数の本でガロア理論を学んだ後です。
ガロア理論の概要を啓蒙書で掴んだ後は、代数学の入門書で「群・環・体・ガロア理論」を学ぶ方が早いと思います。数学への興味は「なぜ成り立つのか」を自分の頭で理解したいというところにあると思います。結果だけで満足するのでなく、理由も知りたくなるのが常だと思います。
代数学を独学するなら
新妻 弘, 木村 哲三 共著『群・環・体 入門』
が読みやすく、代数の基本が身に着けられます。
代数学の入門書は数多あります。
石田 信 著『代数学入門』、松坂 和夫 著『代数系入門』
をお薦めしますが、専門書の選び方・読み方は 謎の数学者さんのYouTubeチャンネル がとても参考になります。その方法を実践している感想です。大学・大学院時代に知っていたら少し人生が変わっていたかもしれません。
ガロア理論は「5次以上の代数方程式が一般に解けない」を超えて応用されています。その一つに整数論があるのですが、高木貞治の『類体論』もその一つです。最初に提示した加藤和也さんの本を読むとそれがよく分かります。『類体論と非可換類体論1』は物語の導入ですが、ガロア理論や整数論に興味があればおもしろいと思います。非可換類体論はラングランズ予想の話です。動画 Langlands Program が参考になります。
これからも数学をたのしみましょう。▢
※1 ガロア理論、ガロワ理論、Galois 理論などと表記されています。E.Galois はフランス人で、Galois の音は「ガロワ」の方が近いと思いますが、「ガロア」表記の方が多いです。
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