小川洋子さんの作品『博士の愛した数式』のお陰で小説や映画を通して数学ブームが起こりました。雑誌『数学セミナー』でも関連した数学が取り上げられたりしました。
オイラーの関係式と呼ばれる
$e^{i\pi}+1=0$
も広く知られるようになったと思います。さてこの式ですが
自然対数の底 $e$, 虚数単位の $i$, 円周率の$\pi$, 数のはじまりである自然数の $1$, 偉大なる発見である整数の $0$。これらが足し算で結ばれ一体となっている
と読み取れます。高校数学Ⅲの無限級数までにこれらの記号はすべて登場し、一つ一つみると確かにそう捉えるのが自然だに思います。
このオイラーの関係式を一般向けに紹介している本はいろいろあるので読んでみるとおもしろいと思います。それから専門書を読むときちんと理解できると思います。
さてこの式の意味をどこまで知って満足するかですが、前回の話「整数の1と有理数の1は違うもの」くらいには目を瞑るのなら、高校数学Ⅲまたは1変数の微分から一気にオイラーの関係式を導くという手法でいいと思います。一般向け解説書はこのルートを辿っていると思います。
少し難しくなりますが、細かい証明は後回しにして1変数の微積分から複素関数を読んでしまうという方法もあります。ここまでくると複素関数論で
$e^z$ または $e^{i\pi}$
をどのように扱うかが気になります。謎の数学者さんがこの点に関する動画「
もちろん、1変数・多変数の微積分をきちんと学び、複素関数論を読めば式の意味を知ることができます。この道を辿った場合は "複素関数論" に惹かれると思います。
一方、代数的な見方をすると実数から複素数の構成が気になる所です(※1)。
もう一度
$e^{i\pi}+1=0$
の式を見ますが、この式は複素数 $\mathbb C$ における等式なので、先に述べた
"自然対数の底 $e$, 虚数単位の $i$, 円周率の$\pi$, 数のはじまりである自然数の $1$, 偉大なる発見である整数の $0$。これらが足し算で結ばれ一体となっている"
というのは問題があります。数学に興味を持たせるためのものとしてなら構わないと思うのですが、$+,1, =, 0$ の部分でさえ小学算数で習うものとは違うものです。便宜上同じ記号を使っているだけです。
前回の話はこういう見方を説明するための前振りでした。この感覚を代数学で知り衝撃を受けたものです。▢
※1 整数から有理数、有理数から実数の構成を理解した人なら楽に読めると思います。
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