オイラーの関係式
$e^{i \theta}=\cos \theta +i \sin \theta$
において、$\theta$ に $\pi$ を代入することで
$e^{i\pi}=-1$
という関係式が得られますが、オイラーの関係式を導くのに
(1) $e^x=1+\dfrac{x}{1!}+\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^3}{3!}+\cdots +\dfrac{x^n}{n!}+\cdots$
の $x$ に $i\theta$ を代入して
(2) $e^{i\theta}=1+\dfrac{i\theta}{1!}+\dfrac{(i\theta)^2}{2!}+\dfrac{(i\theta)^3}{3!}+\cdots +\dfrac{(i\theta)^n}{n!}+\cdots$
とし、$i^2=-1$ を利用して式を次のように整理し
$e^{i\theta}=\left(1-\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^4}{4!}-\cdots+(-1)^k \dfrac{x^{2k}}{(2k)!}+\cdots \right)+i \left( x-\dfrac{x^3}{3!}+\dfrac{x^5}{5!}- \cdots +(-1)^k \dfrac{x^{2k+1}}{(2k+1)!}+\cdots \right)$
として、前の括弧の中身が $\cos \theta$ で後の括弧の中身が $\sin \theta$ であるから
$e^{i \theta}=\cos \theta +i \sin \theta$
が成り立つと説明されたりしますが、これには問題があります。
式 (1) の $e^x$ は実数上で定義されている関数で、等式は $x=0$ におけるテイラー展開で収束域が全実数という条件の下で成り立っています。だから $x$ に虚数を代入して式 (2) が成り立つとするのに問題があるのです。
発見するための一つの方法ではありますが、これを証明のように読み取ってはいけません。例えば次の説明はどうでしょうか。
ルートの公式 $\sqrt{a} \sqrt{b}=\sqrt{ab}$ において、$a, \: b$ に $-1$ を代入すると右辺は
$\sqrt{(-1) \cdot (-1)}=\sqrt{1}=1$,
左辺は
$\sqrt{-1} \sqrt{-1}=(\sqrt{-1})^2=-1$.
したがって、$-1=1$ となる。
これはどこに問題があるか比較的気づきやすいのですが、大学数学の線形代数におけるハミルトン・ケーリーの定理の証明で、行列 $A$ の固有多項式 $\Phi_A(\lambda)=|\lambda E-A|$ に $\lambda=A$ を代入して
$\Phi_A (A)=0$
としたときの誤りは気づき難いと思います。大学1年生だとまだまだ集合の考えには慣れていないからです。▢
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