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2022/02/12

宝の持ち腐れ ~現代数学の基礎 集合~

 高校数学Ⅰおよび A で集合を扱います(※0)。であればこれを使って小中の数学を見直すことをしてもらいたいのですが、実際は確率で使われる程度です。


集合は現代数学を学ぶ上では必須で、どのような世界で考えるかを提示する役目を負っています。例えば

問題1 ①方程式 x+8=3 を解け。  ②方程式 x^2=3 を解け。


と問われたらふつう ① x=-5、② x=\pm \sqrt{3} と答えると思いますが、本来、問題にはどの範囲で解くかの明示が必要です。

①の場合:正の整数の範囲で解けであれば解はなく、整数の範囲でなら上で示したように解けます。

②の場合:有理数の範囲で解けであれば解はなく、正の実数の範囲でなら x=\sqrt{3} と解くことができます。

正の整数で解くことは人数や物の個数を求めるときですし、正の実数で解くというのは正方形の一辺の長さや時間を求めるときが考えられます。



次の問題はどうでしょうか。
問題2 次の2次関数のグラフを図示したときの x切片を求めよ。

y=x^2+4x-1          ② y=x^2-2x+3 


高校数学Ⅰの2次関数でこのような問題を扱います。
出題者を忖度して ① x切片は -2 \pm \sqrt{5}、②は x軸と共有点を持たないので x切片はない と答えるのでしょうが、本来は関数の定義域を明示する必要があります。

②で2次方程式 x^2-2x+3=0 を単に解くと虚数解が出てきます。でも x軸はふつう実数を想定しているのでこの値は適しません。なので式変形により y>0 であることを明示して x軸と共有点を持たないことを述べることになります。



せっかく集合を教えているのですから活用しない手はないですよね。
中高の方程式はそれまでに学んだ数の世界が前提であり、関数は実数の部分集合から実数への対応が前提のようです。であっても明確に書かれていないし、実数という用語自体あまり使われません。
そのためか、大学入試問題では有理数・実数・複素数などの用語を使い受験生の知識をテストしているように思います。なので受験生は正規の授業でなく受験勉強の中で数の集合を修得しているように思います。▢


※0 一時期はアメリカの数学教育の現代化をマネて小学算数や中学数学でも集合が教えられていました。

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