2021/10/20

平面の幾何シリーズを終えて ~平面幾何を学びたい人へ~

 数学講座『理一の数学事始め』で連載していた平面の幾何シリーズが昨日の投稿(作図の超基礎)で完結しました。小学算数から高校数学で学ぶ内容はほとんど書けたと思います。当初はユークリッド原論よりは現代数学的に、でもヒルベルトの幾何学基礎論よりは軽く書こうと思っていました。特徴を持たせるために「三角形の合同定理」はきちんと紹介しようと考えていましたが、外角定理(三角形の外角は内対角より大きい)の証明を書くときに問題が発生したのです。中高数学のように図にたよる直観でいくのかどうかです。直観重視で話を展開した場合は「すべての三角形は二等辺三角形である」をどうするかという問題が生じます。ここが分岐点でした。

『数学事始め』は数学の学び直しという目的もあるのですが、数学を伝えるという目的もあるので直観でなく論理を重んじることにしました。これでユークリッド原論寄りからヒルベルトの幾何学基礎論寄りになりました。幾何学基礎論寄りになっても紹介していない公理は「連続性公理」と「平行線公理」の2つだったのですが、より明確にするために「平面分離公理」を前面に出しました。幾何学基礎論を読むと解りますが公理3と同系統です。

シリーズ 9 平面の幾何Ⅰ(小学算数から三角形の合同定理まで)
シリーズ10 平面の幾何Ⅱ(平面分離公理、連続性公理 三角形の諸性質)
シリーズ11 平行線の幾何(平行線公理 角度、平行四辺形、中点定理)
シリーズ12 平行線の幾何Ⅱ(平行と線分比、相似、ピタゴラス定理)
シリーズ13 円の幾何(中心角定理、円周角定理、円と相似)

シリーズ10平面の幾何Ⅱは他のシリーズと比べるとかなり難しいと思います。それは公理を元に話が展開されているからです。でもこれが理解できたら大学数学への橋を渡ったようなものなので、微分積分・線形代数・集合と位相・群環体も学びやすいと思います。

シリーズ11平行線の幾何は一般的に難しいと思いますがシリーズ10と比べると易しく感じると思います。平行線公理とユークリッドの第五公準の同値性を証明しているのが特徴です。シリーズ9および11の後半からは中高の数学です。

ユークリッド原論はとても優れた書です。いま読んでも幾何学のおもしろさを知ることが出来ると思います。▢

※ 赤茶色文字をクリックするとリンク先が別枠で見られます。

平面の幾何シリーズの参考文献
黒須康之介『平面立体 幾何学』(昭和30年代の中高生向け)
寺阪英孝『幾何とその構造』(昭和30年代の高校大学生向け)
小平邦彦『幾何への誘い』(もっとも読み易く、数学に興味のある人向け)
溝上武實『ユークリッド幾何学を考える』(数学教師志望の学生向けの本?)
瀧澤精二『幾何学入門』(大学以降の本格的な専門書)
D.ヒルベルト『幾何学基礎論』
小林昭七『円の数学』『ユークリッド幾何から現代幾何へ』

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ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...