2021/10/09

エレガントな解答と落とし穴

 


この問題をみなさんはどのように解きますか。これは4,50年前の大学入試問題で当時は高校数学Ⅰの範囲です。今なら数学Ⅱに相当するのかもしれません。出題した大学名は記憶にありません。大学を意識したときに購入した問題集に掲載されていたものでいまでは珍しいほぼ問題と答えしか書かれていないものです。この問題の答えのところには次のような略解が書かれていました。

みなさんならこれで理解できるのでしょうか。私の高校ではこのような問題は扱わなかったので自力で考えるしかありませんでした。実は答えだけは一致していたのですがその解法には問題があります(上の略解を質問している中で判明しました)。下2つがそれです。

 

略解の意味を先生に訊きましたが直ぐには解らないということなので解き方を教えてもらいました。「このように条件式が与えられていたら、その式を使って1文字を消去する」ものだと説明され


のような解法を教えてもらいました。分母の和が気になりますが基本に忠実な解答です。昼休みに略解の解説をしてもらえましたが奇抜なものでした。

どうですか。こういう解答が入試時に気づくと思いますか。青チャートなどの参考書には載っているかもしれませんが自然な解答には思えません。この発想を理解するのに1週間以上かかったと思います。しかしながらこの解答には感心しました。この問題のお陰で力づくではありますが教科書レベルの問題なら解けるようになりました。

しかしこの問題の略解はマイナスにも作用しました。どの問題にもエレガントな解答があるのではないかと思わせたのです。そのため自力で解けた問題でも先生にもっと上手い解答を訊くようになってしまいました。3か月ほど続いたのではないかと思います。


問題の捉え方は理解の深さや解いた経験の量で変わります。なので同じ問題であってもその日に依って解き方が変わります。エレガントな解答を考えるのもたのしいですが、理解が深まったり他の問題を解いている中でみつかると思います。解くということを考えると、問題文をどう捉えどう考えるかが大切だと思います。エレガントな解答も取り敢えず解いてからでないと話になりません。一度解けると別解が結構見つかるものです。

私が別解を考えるときは問題文の捉え方が複数あったときと、力任せに解いたという感じのとき、そして感覚的にかんたんに解けると思ったときです。特にいまは教える立場なので教科書で学ぶ知識を意識して解き、できるだけ自然な考えでの解答を心掛けています(※1)。

いまの私なら次のように考えて解きます。
一文字消去は思い浮かびますがめんどうそうなので、取り敢えず分数の話なのだから分母が同じもので計算してみると分子がうれしい式になります。だから


のように解きます。これは条件式が使えるかをみる基本問題です。出題者もその意図だったと思います。いまはそう思います。教科書は理解が深まれば解けるように工夫し配置されていると思います。参考書で解法を暗記すれば答えを早く導くことは出来ますが理解が深まっているかは謎です。

最後に教科書・参考書に関して疑問を投げかけて終わります。

は超基本問題で、対数の定義を理解しているか否かを問うものです(※2)。なぜ教科書でこれが定義の後の例とか問になっていないのでしょうか。さらに参考書で応用のように捉えられているのは不可思議でなりません(※3)。▢


※1 大学の先生が参考にするのは教科書が基本のはずです。過去問も参考にするとは思いますが学んでいない知識で解く問題は作りません。ただし、問題の中で定義して解かせることはあるかもしれません。

※2 答えは 4 です。『理一の数学事始め』で対数を扱ったときに説明します。

※3 ある数学教師が「=k」と置いてごちゃごちゃと計算して答えを出したことに驚きました。でもその解答はある参考書に書かれている方法です。
私は平方根を理解するのにかなーりの時間を要したので、対数を理解するのはあまり大変ではありませんでした。同じような定義だからです。

尚、その数学教師はある国大大学院修了で大学入試問題を解きまくっているほどの強者で、当時は高校の非常勤でした。定義を理解するのはそれほど難しいということです。教科書の最初に書いてあるからといって易しいということではないのです。問題が理解を深めるためにあるのは以前書いた通りです。

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ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...