2021/09/25

YouTubeの再生速度と視聴時間 ~比例・反比例【基本の確認】

比例・反比例は小学6年の算数で学び、次に中学1年の数学で学びます。この違いは数の概念でしかありません。小学算数は0を含む正の有理数の世界ですが、中学数学1は有理数の世界です。 でもどちらもグラフを扱いそのグラフが連続なのでそれぞれ0を含む実数の世界と実数の世界というべきかもしれませんが、実数を認識するのは中学数学3以降ですね。

比例の概念は線形代数・微分積分に引き継がれ多変数の微分積分で再び結びつきます。この捉え方は 森 毅 著『線型代数――生態と意味』(日本評論社) からの借用です。

現在は下記の通り ちくま学芸文庫 で出版されています。この本は教科書でなく読本です。右の数学セミナー(1979.5-1980.8) での連載を本にしたものなので、大学1,2年生もしくは一般向けの啓蒙書と考えていいと思います。 

 


比例が線形代数に繋がることは線形性

                f(x+y)=f(x)+f(y), f(ax)=af(x) (x,y∊V, a∊K 体K上の線形空間V)

から直ぐに解りますが、微分積分への繋がりは森毅氏の本を読むまで気づきませんでした。


(ここから本題)
教育カリキュラムとして小学6年、中学1年で比例・反比例を扱うのは理科(物理)での準備だとみています。なぜなら比例・反比例を導入するときに表を用いて一方が2倍、3倍に変化したときもう一方はどのように変化しているかを考えさせますよね。それに定義を明確にしないうちに2つの変量の問題で比例か反比例かそうでないかを考えさせます。これは実験データの読み取りをさせているので、おもりとばねの伸び(フックの法則)、うでの長さとおもり(てこの原理)、電流と電圧(オームの法則)を学ぶ準備なのだと思います。(※0)


比例の定義)2つの変量 x, y に対して、一方が他方の実数倍で表現できるとき xとy は比例するといい、その実数倍を比例定数という。

反比例の定義)2つの変量 x, y に対して、2つの積x・yが一定であるとき xとy は反比例するといい、その実数倍を比例定数という。

この定義から比例については、xが2倍、3倍するとyも2倍、3倍することやxの2つの値a, b の比とこれに対するyの値の比が等しいことが判ります。(※1)
反比例についてもxが2倍、3倍するとyは1/2、1/3になることやxの2つの値a, b の比に対してyの値の比は逆比に等しいことが判ります。(※2)

例えば、速さ×時間=道のり という関係式から、「時間と道のり」または「速さと道のり」は比例するので、時間が2倍になれば道のりは2倍、速さが2倍になれば道のりも2倍になることが判ります。また、「速さと時間」は反比例するので速さが2倍になれば時間は1/2、時間が半分になれば速さは2倍ということが判ります。

実例:YouTubeは再生速度が変更できますね。そこで、再生速度を2倍にすれば視聴時間は1/2になります。つまり12分の動画は倍速で視聴すれば6分です。では同じ動画を1.5倍速で再生したら何分で視聴できるでしょうか。

1.5倍速ということは時間は逆比になるので1.5=3/2より視聴時間は2/3になります。したがって 12分×2/3=8分 です。(※3)
もしも1.75倍速なら1.75=7/4なので視聴時間は4/7になります。12分×4/7=48分/7≒7分です。もう少し細かく言えば、48分/7=6分+6分/7 で 6分/7=360秒/7=51秒+3秒/7なので、6分51秒と3/7秒です。7分弱と判断するのが実用的ですね。▢


雑誌 数学セミナーを紹介したので他の数学系雑誌も紹介しておきます。
左は『現代数学』で数学色が強く、右は『数理科学』で物理色が強いと思います。大きな書店に行くと置いてあると思うので立ち読みしてみてください。



※0 小学校でも中学校でも高校でも、なぜか理科(物理・化学)で算数・数学で学んだ知識を使っての指導はされませんでした。この場合はこう解くという暗記中心の教え方でした。こういうのがとても苦手でした。地図の縮図でも同じで苦戦しました。まあ、数学が苦手、いや勉強が苦手だったのでどう教えられても変わらなかったのかもしれませんけどね。

※1 y=ax において、xをk倍したkxで考えあるとyの値はa(kx)=k(ax)=kyとなるのでxをk倍するとyもk倍されます。また、xが u, v のときのyの値をそれぞれU、Vとすると U:V=au : av=u : v となります。 

※2 y=a/x において、xをk倍したkxで考えあるとyの値はa/(kx)=(1/k)(a/x)=(1/k)yとなるのでxをk倍するとyは1/kになります。また、xが u, v のときのyの値をそれぞれU、Vとすると U:V=a/u : a/v=1/u : 1/v=v : u となり、比が逆になります。 

※3 逆比になるというのは、反比例なのでk倍すると 1/k になることを言っています。
  見方を変えると、速さの比が 1:k と考えると時間の比は逆比の k : 1=1 : 1/k となりますね。逆比はこのように2通りの意味で使われるので混乱しがちです。
 

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