2021/08/25

数学の証明のみかた ~数学の証明に打ちのめされている人へ~

"みなさんは証明をどのように捉えていますか。
数学オンチの頃は厳密さを保つためだとか、なぜの疑問に答えるものだとか思っていたので、証明を苦痛に感じることがありました。それはいまも変わっていないように思います。でもあるとき、同期の優秀な学生から「理解を単に深めるだけでなく、証明を通じてその定理の使い方や新しい考え方を得る」と聞いてから見方が変わりました。"

これは『数学事始め』の「11.18 平行線の幾何(三角形の重心)」で書いた一文です。


Fermat の最終定理が1995年にWilesとTaylorによって完全解決されたのは良く知られている事実ですね。その当時は(360年もの間未解明であったことが)とうとう解決されたかという程度の理解でした。凡人と数学者の違いはここにあるようです。数学者は証明された事実よりも、その鍵となった楕円曲線に目を向けていたようです。谷山・志村予想の部分的解決と岩澤理論、そして代数幾何を数論に応用させた数論幾何(数論的代数幾何)へとです。

私に証明の見方を教えてくれた学生は、シルバーマンの『楕円曲線』(J.H.Silverman "The Arithmetic of Elliptic Curves")をセミナーで読んでいました。



左の本はその学生が読んでいた本。真ん中は、J.ノイキルヒ著『代数的整数論』という本で数論幾何を研究していた学生が独自で読んでいた本です。私の本棚にもどちらも鎮座されています。右の本は以前にも紹介した楕円曲線を学んでみたい人にお薦めの本です。

ノイキルヒの本のそでには「学部3年生程度の代数学の初歩(群環体)」を予備知識として仮定していると書かれていますが、数学の専門書は大抵このように表現しています。具体的には、松坂和夫の『代数系入門』や石田信の『代数学入門』がそれに該当すると思います。でも実際は、雪江明彦の『代数学1,2』ないしは Serge Lang の "Algebra" を仮定しているように思います。謎の数学者さんの教えに従い、取り敢えず第1章を読んでみてください。数学はいつになってもたのしいものです。自分のペースでたのしみましょう。▢

0 件のコメント:

コメントを投稿

ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...