まず
について話します。
θ →0とした式は大学受験必須の知識で、これを利用して極限値を求めさせますね。
例.lim_(n→∞) nsin(π/n) の極限値を求めよ(※1)。
さて、記号「θ ↓0」は、上から0に近づけることを意味し、「θ→+0」と同じ意味です。つまり、正の方から0に近づけるということです。
次に、分子sinθのθは弧度であることは判ると思いますが、分母のθは何か判りますか。もちろん、弧度ではありません。半径1の円における中心角θに対する円弧の長さです。したがって、θ ↓0であることからθは鋭角としてよく、sinθ/θは下の図でいう円弧に対する高さの比を表しています。さらに、lim_θ↓0 であることから、0の十分近くでの様子を意味し、極限値が1ということから sinθ≒θ(ほぼ等しい)、つまり、高さ≒円弧を主張しています。
では、これによって何がうれしいかを説明しますが、その前に円の面積をどのように求めたかを思い出しましょう。(※2)
図のように、円の中心角を等分し、ミカン (円) を半分にして房を広げて上下で結合させるという発想でしたね。この房の数が多ければ多いほど上下で結合させたものは長方形状になると考えられるから、円の面積はその長方形の面積と等しい、というものでした。
※ 最後の部分は、半径rとしたものです。
式で表現すれば、2n等分された一つの中心角の大きさ π /nラジアンで、このnをどんどん大きくしていけば、究極的には長方形になると考えられるから、円の面積はπr^2と求められます。この保証を与えるものが最初に挙げた式です。nをどんどん大きくするということは、n→∞ のとき π /n↓0で、θ ↓0を意味します。このとき、sinθ≒θ と考えていいのだから、横の長さは (rsin( π /n) )・n≒r・π /n・n=πrで、高さはrであるから、面積はπr^2となります。
(ここからが本題)
ところで、高校数学Ⅲにおいて最初の式
(♪)lim_θ↓0 sinθ/θ=1
を求めるときに扇形の面積、つまりは円の面積公式を利用して説明していましたね。
ということは、
(♪)⇒ 円の面積 ⇒(♪)⇒ 円の面積 ⇒(♪)⇒ ・・・
という循環が得られました。でもこれでは卵が先か鶏が先かとなり、困ったちゃんです。
ではどう解決すればいいかというと、一つが高木貞治著『解析概論』の方法で、もう一つが小林昭七著『微分積分読本 1変数』の方法です。前者は弧長によるもので、後者は発想の転換です。
後者は、2週間前のブログ「角の大きさと不自然な度数法(角度)」で紹介した、角の大きさを面積によって定義するというものです。
詳細は小林昭七氏の著書をみてもらいたいのですが、氏の主張は、教育的には高校数学Ⅲの方法でよい。そこで、鶏・卵問題が起こらないように半径1の円の面積をπと定義し、これを利用して角の大きさを定義すれば問題ないというものです。
前者による方法はこのブログで触れる予定ですが、いつになるかは未定です。▢
左)高木貞治著『解析概論』(岩波書店)
右)小林昭七著『微分積分読本(1変数)』(裳華房)
『解析概論』は、数学科なら知っているであろうという名著です。名著だからといって、分かりやすいということではないようです。これを手本にして、他の微分積分の本が書かれているといわれるくらいです。極限、1変数、多変数、級数、複素関数、ルベーグ積分について触れられています。微分方程式は入っていません。私の指導教官は、この本で複素関数を学んだとおっしゃってました。
※1 答え π.
※2 うれしいと言っても、小躍りする意味ではなく、有難いことを意味します。
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