2021/06/23

数学の記述について(記述式テストの心構え)

9.9平面の幾何(二等辺三角形の性質とその証明【後】)からの抜粋 

"証明をいくつかみてもらいましたが、中学・高校で習った書き方と違うのではないでしょうか。証明に限らず、解答例もそうだったと思います。

そうであるなら、その違いは文章であることを意識しているか否かです。数式は数学における文です。だから、句読点(横書きなので、「,」「.」)も書いています。また、解説では口語体で書いていますが、解答例や証明では文語体を意識しています。"(以上抜粋終)


以前、どこかで書いたような記憶があるのでが、院生時代の同僚(現在 ある大学所属の数学者)が修士論文を書き始めた11月ごろに、ふとこう漏らしました。

「大学受験や大学2年くらいまでは、きちんとした答案が書けていると思っていたけど、いまになって思うとまったく書けていなかった」と。

彼の答案を見たことがないので、どのような表記であったのかまったく知りませんが、教科書・参考書や数学動画、自分のものも含め、その表現はどうかなあというのはときどき目にします。彼の言葉には謙遜が入っていると思いますが、きちんとした指導を受けていなかったのだろうから仕方ないと思います。

中高生はもちろん、記述指導を受けていない大学生にも難しいことは求めません。飾ることなく、説明したいことをそのまま書くことをお薦めします。文語体とか口語体とかも気にせず、書いてください。たぶん気にしているのは採点だと思いますが、どうしてそう考えたのか、何をしたいのかが論理的に書かれているなら、些細なこと(誤字、脱字、くどい)では減点しないと思います。大学の先生は受験生には甘いので、気にしなくていいと思います。そもそもきちんと書けるなんて思っていないと思います。中高大生がもっとも気を付けることは、他人が読める字で書くことです。

論理的にと書きましたが、何をするか、なぜそうするのかを宣言しながら書けば伝わります。そもそも、時間の限られている中で、それも60分ー150分できちんと書けるとは思えません。たぶん、望んでいないと思います。記述式で見たい能力は、どのように考えて解いているかです。そう考えると、多少の問題の本質に関わらない計算ミスは、大して減点しないだろうけども、答えは正しくても計算式だけで何をやっているか分からない答案だったら、大きな減点になると思います。計算を利用して証明する場合を除いて、細かい計算をいくら書いても点にはならないと思います。

例えば、整数3^50(3の50乗)の桁数を求める問題で、いきなり log10 (3^50) を計算する解答は説明不足に思います。解法パターンを覚えているだけで、理解していないように思うので、この場合の計算ミスは大きく減点されると思います。

模範的な書き方は、数学書をみるのが一番です。
一度だけ酷い表記の本を見たことがあります。ある大学が出版していたもので、その大学の学生のために書かれたものだと思うのですが、板書を本にしたようなものでした。

多分、カッコイイと思って使っているであろう記号「∴」、「∵」は板書記号と呼ばれ、講義をするときに使うものです。論文では絶対に使いません。ついでに、私が使っている記号▢や▮は、論文でも使われる記号で、終わりを意味します。これにより、どこまでが主張で、どこまでが証明なのかをくっきりさせているのです。

ときどき、専門書でも「∴」や「∵」を使っているものを見かけます。だから中高大生は、気にしなくていいと思います。たぶん『数学セミナー』だったと思うのですが、それに
    「∴や∵の後には、数式は問題ないけど、文章は入れないものだ」
というような主張が書かれていましたが、文章を入れている数学者を見かけたことが何度もあるので、気にしなくていいと思います。▢


数学するなら、

佐藤文広 著『これだけは知っておきたい 数学 ビギナーズマニュアル』(日本評論社)



は重宝すると思います。もう、今となっては切っ掛けが何であったか思い出せませんが、この本の第5章は「式も文章」です。これを読んでから、いまの形のように「,」「.」を意識するようになったのかもしれません。∴や∵を使わなくなったのは、論文指導を受けてからだと思います。▮

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内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...