2021/05/22

角の大きさと不自然な度数法(角度)

角の大きさの測り方を学んだときに、違和感を持ちませんでしたか。

私は角の大きさを表すのに、なぜ長さを利用しないのか不思議に思っていました。2本の線分の開き具合を表すのだから、真っ先に時計の針が思い浮かび、弧長で表現できると考えたのです。もちろん、授業はそのようなことには触れずに天下り的に分度器の使い方に話が進みました。余談として、1年≒365日に関係して、1周を360等分したのが1度の大きさというくらいです。


いま思い返すと、そのセンセは数学が苦手だったのだと思います。頭ごなしにしか指導できませんでした。知識を詰め込むだけだったらそれで事足りると思いますが、子供の知的好奇心は満たされませんね。ものを考えなくなるのも当然に思います。


私が考えていたのは弧度法だったというのは、高校生になってから知りました。角の大きさの表し方は他にも考えられます。円の面積、弦の長さ、直角の利用というものです。

直角の利用についてのみ触れます。例えば、直角の2つ分を2直角といい、これは180度に相当します。同様に考えると、4直角の大きさは360度に相当します。さらに、1/2直角は45度です。直角(right angle)の頭文字Rを用いて、直角を∠Rで表し、2∠R、4∠R、1/2∠Rは、それぞれ180度、360度、45度に相当する角の大きさを表します。

弧度法については来週話しますが、この方法は図形に内在しているので、微積分(高校数学Ⅲもしくは、大学1年生の微積分(※1))を学ぶとその利点が明確に感じられると思います:

… → sinθ → cosθ → -sinθ → -cosθ → sinθ → …

は微分のサイクルで、逆向きが積分のサイクルですね。▢

動画(2021.5.23 9:17以降視聴できます)


初等幾何(※2)は、黒須康之介著『平面立体 幾何学』(培風館)を参考にしているのですが、絶版になってしまったようなので、所蔵している中から次の2冊を紹介しておきます。

左側)小平邦彦著『幾何への誘い』(岩波書店)
右側)J.タバク著『はじめからの数学1 幾何学』(青土社)

『幾何への誘い』は参考書として使っています。Euclid(ユークリッド)原論だけでなく、幾何学基礎論にも触れ、複素平面についても書かれています。『はじめから…』は読み物で、幾何学に関する数学史です。


※1 大学1年生が学ぶ微積分は、高校数学Ⅲで微積分を学ばなくても対処できます。高校数学は計算が主で、大学数学は理論と計算の両方です。計算は独自で習得することになります。でも最近は、演習本も充実しているので独学しやすいと思います。

高校数学Ⅲでは、微積分以外に複素平面や2次曲線を学びますが、専門の数学書にも書かれています。ただ、大学の授業は複素平面や2次曲線は周知のものとして、進むと思います。高校数学の内容であれば、それぞれ1週間あれば習得できると思います。

※2 幾何は図形のことを表す言葉です。`初等'幾何といっても`かんたんな'とか`やさしい'図形という意味ではありません。現代数学で扱っている幾何に対しての言葉だと思います。このように表現するときには、『Euclid(ユークリッド)原論』で扱われた図形が想定されています。わかりやすく言えば、小学・中学で扱った図形のことです。

現代数学の幾何というと、位相幾何、微分幾何などを指します。位相幾何、微分幾何だとまだ図形を扱っている感じがありますが、研究を進めると図形が消滅しているように思います。空間を対象にしているという点で、幾何なのだと思います。代数幾何、数論幾何というのもありますが、幾何でしょうか、代数でしょうか。代数っぽいかな。

代数、幾何、解析は便宜的な言葉で、はっきり・くっきりしているものではないと思います。はっきり・くっきりしているのは、最初の方だけです。

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