1の虚数立方根をωと書く、というのがωの定義でしたね。だから、当然 ω^3=1です。
(ωはオメガと読みます。ここで、ω^3はωの3乗を意味する表記と約束します)
この顔文字の一部として知られる「ω」、高校数学Ⅱで登場しますが異質な感じを受けませんでしたか。でも受験数学には必須の知識ですね。
ωは悲しんでいると思います。教科書が「一般の3次方程式の根の公式と結びついている」ことに触れもしないから仕方ありません。今回は3次方程式の根の公式には触れませんが、いずれこの『数学雑談』で触れようと思っています。『理一の数学事始め』で、3次式の因数分解に触れた頃です。
以前、群については紹介しました。↓
少しだけ背伸びした世界:代数学~群の紹介~
ある集合に演算を1つ定義し、演算結果もその集合に収まり、その演算についてはある程度の自由度が保証されているときに群といいました。詳しくは上のリンクをご覧ください。
今回は「有限群」「位数」「群表」「巡回群」「生成元」について説明します。
1の立方根全体{1, ω, ω^2} (※1) は複素数Cの部分集合ですが、この集合は複素数のふつうの積「・」に関して群を成します。有限集合の場合は次のような乗積表が有効です。縦横それぞれに1, ω, ω^2を書き並べ、表の縦列と横列で交差したところにその2つの積の結果を書き入れます。
この表から、①集合{1, ω, ω^2}だけで、積・が完結している ②1が単位元である ③1の逆元は1,ωの逆元はω^2,ω^2の逆元はωである ことが判ります。
群であるには、結合律について調べる必要がありますね。そこで、
問題 結合律が成り立つことを示してください。
専門書にありがちな問です。こういう場合、答えを探してもせいぜい「容易」としか書かれていません。
問題の解説 結合律は、a, b, c∊{1, ω, ω^2} に対して、a・(b・c)=(a・b)・c であることを確認すればいいですね。この場合は、a, b, c が複素数でなので、自然と結合律は成り立ちます。このことに気づかないと、3・3・3=27通りの場合を確認することになります。▮(※2)
複素数Cの部分集合G:={1, ω, ω^2}は、積に関して群を成すことが判りました。有限集合が群を成すので、有限群と呼ばれます。このときの元の個数を群の位数といいます。つまり、群Gは位数3の有限群です。また、上の乗積表は群表ともいいます(※3)。
さらに、群Gにおいて、1つの元ωのべきを考えるとω, ω^2, ω^3=1となり、すべての元を表すことができます。このとき、群Gを巡回群、 ω を生成元といい、記号〈 〉を用いて次のように表現します:
G=〈ω〉.
問題 G=〈ω^2〉が成り立つことを確認してください。
このことから、生成元は一意的でないことが判ります。
問題の解説 ω^2のべきを考えます。
ω^2, (ω^2)^2=(ω^3)・ω=1・ω=ω, (ω^2)^3=(ω^3)^2=1^2=1 から、
G={1, ω, ω^2}=〈ω^2〉.▮
「群の同型」まで話をしようと思ったのですが、考えていたよりも長くなったので、ここで区切ることにします。続きは一週間後です。▢
代数学の専門書紹介:新妻弘、木村哲三 共著『群環体入門』
代数学の本で「入門」が入った書名は数多ありますが、ほとんどは入門かもしれないけれど、入門かなあというくらい難しい入門書です。しかし、上の本は多くの人が感じている「入門」という名に相応しいものです。数学でいう入門は専門数学への入門という意味で、敷居はかなり高いです。だから、数学の専門書は題名で選んではいけません。
数学書は高価なので、慎重に選んでください。私は右側の演習書だけ所有しています。基本は他の本で学んだからです。
左)新妻弘、木村哲三 共著『群環体入門』 右)左の演習書
0 件のコメント:
コメントを投稿