先週(前編)に引き続き、群の話をします。今回は「同型(同形)」(※1) が主役で、この概念があるから群を考える意味があります(※2)。
整数を3で割った余り(※3)を考えると、集合H={[0], [1], [2]} が得られます。記号[a]は3で割ると a 余る整数全体を表します。つまり、整数Zに対して
[a]={a+3n|n∊Z}.
( a+3nは3で割るとa余る形をしていますね。1+3nは3で割ると1余る数です)
この集合には次のような演算が定義でき、その演算に関して集合Hは群を成します。実際、
[a]+[b]:=[a+b]
演算が集合Hで収まっていて(※4);単位元は[0];[0]の逆元は[0], [1]の逆元は[2], [2]の逆元は[1];整数なので結合律を満たします。
このとき、別の演算を入れても群になるように思いませんか。例えば、
[a]・[b]:=[a・b].
これを記号で表現すると、
[1]・[2]=[1・2]=[2]
となります。演算が集合Hで収まっていて単位元は[1]ですが、[0]の逆元はありません。したがって、群を成しません。
さて、前回の群G={1, ω, ω^2}と今回の群H={[0], [1], [2]} の群表を並べてみると
同じ形をしていることが解りますか。1↔[0], ω↔[1], ω^2↔[2] という対応があります。 このとき、GとHは同型であるといって、等号「=」の上に「~」を載せた記号(※5)で
群Gの元は複素数ですが、群Hの元は整数ですね。例が単純なので、あまり同型の有難みを感じませんが、群Hの方が簡単な形をしています。
有限群なので、群表によって、同型というのが判りやすかったと思います。一般論では、対応の部分が双射(全単射)に当たり、この条件を緩めた準同型写像(それぞれの群の演算を保存する対応)が活躍します。▢
注 途中の議論「演算が定義でき」で、「well-defined」が気になった人がいるかもしれませんが、これは本格的に群を学ぶときに理解すればいいことだと思うので、ここでは触れませんでした。入門への入門と思い、目を瞑ってください。▮
代数学の専門書の紹介:新妻弘、木村哲三 共著『群環体入門』
代数学の本で「入門」が入った書名は数多ありますが、ほとんどは入門かもしれないけれど、入門かなあというくらい難しい入門書です。しかし、上の本は多くの人が感じている「入門」という名に相応しいものです。数学でいう入門は専門数学への入門という意味で、敷居はかなり高いですね。だから、数学の専門書は題名で選んではいけません。
数学書は高価なので、慎重に選んでください。私は右側の演習書だけ所有しています。基本は他の本で学んだからです。
左)新妻弘、木村哲三 共著『群環体入門』 右)左の演習書
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