2021/04/03

三角数とGauss少年と数列の和(お子さんが数に興味をもったら…)

問題 (正の整数)1から10までをすべて足すといくつか。


小学5年生のときに、クラスメイトのHからこの問題を出された。ちょっと考えて45と答えたが、Hは「直ぐに答えないといけない」と言った。「知ってる訳ないじゃん」と思ったが、そんなんどーでもいいことのようだ。「どーやって出したか」と訊かれたので、1+9,2+8,3+7,4+6の結果に5を足したと言ったが、「そんなんダメだ」と言って、「答えは55」と自慢げに言った。「しもたー、10を足し忘れた」というのはどーでもよく、ただ学習塾で習ったことを自慢したかっただけのようだ。「ぢゃー、1から100まで足したらいくつか」と問題を出してきたが、「ポットじゃあるまいし」と思っていたら、答えるよりも早く「5050だよ」と言った。アホらしっ。まあ、これがあったから、今でも「55」だけはずっと覚えている。


つまらぬことをずっと覚えているものです。脳に、傷として刻み込まれたのだと思います。

ここに出てきた「55」や「5050」が三角数です。小さい方から順に並べると

1, 3, 6, 10, 15, 21, 28, 36, 45, 55, 66, 78, 91, 105, 120, 136, ...

となります。どのような規則で並んでいると思いますか。

「2,3,4,5,6,…と増えている」という回答が多いでしょうか。もちろん、正解です。その場合、第n項(n番目の数)は簡単に求められそうですか(※1)。例えば、第100項はいくつですか、と訊かれたら直ぐに答えられそうですか。


この数列はもっと単純で、少年Hが言ったように、正の整数を1から順に足したものを並べたものです。
        1, 1+2, 1+2+3, 1+2+3+4, 1+2+3+4+5, ...

という具合にです。高校数学Bの例題にありそうですね。これが三角数と呼ばれるものです。
次の絵をみると、その由来は納得してもらえると思います。

黒白で色分けし見やすくしたつもりですが、三角形が見え難くなってしまったかな。次の絵だと三角形が見やすいと思います。黒の碁石だけを見てくださいね。



では先ほどの第100項は、

               1+2+3+・・・+99+100

の答えなので、少年Hが自慢気に言った「5050」です。

実はこれ、数学者ガウス (Gauss, 1777-1855 ※2) の逸話で知られている問題なのです。
ガッコのセンセが、自分の仕事をするための時間稼ぎのために、受け持ちの子供たち(小学3年生?)に「1から100までを足したらいくつか」と出題したのですが、少年ガウスに即答されてしまったのだそうです。

(1+100)×100÷2を計算し、5050を導いたのです。

単に、1,2,3,4...でなく、いろいろな物を使ったりして数を習得したのなら、小2・3年生でも思いつくとおもいます。最近だと、小学受験や中学受験などで詰め込まれているため、即答できる子がいると思いますが…。


閑話休題。次のように数を認識していると、ガウス少年のように解けると思います。


理由は、次の図で明らかだと思います。パズルやブロック(レゴ)遊びをしている子も気づくと思います。流石に、1から100までの整数の和は並べられないので、1から10までの和を表現してみました。黒の碁石が 1+2+3+4+5+6+7+8+9+10 を表しています。


黒の碁石の個数がかんたんに求められますね。
長方形状に並んでいるから、全部の碁石の個数は 10×11個で、白の碁石はその半分だから

10×11÷2=55.

だから、黒の碁石は55個です。これにより、1から100までの合計も同様に考えて、

               (1+100)×100÷2=5050.


もちろん、碁石でなく、みかんやお猪口を並べてもおもしろいですね。私の場合は、小学1年生の授業で「スタンプを押す」という作業を通して、数を図形的に捉えていました。□

動画あり(2021.4.4 9:17以降視聴可)


余談
その授業はいろいろな形のスタンプを帳面(チョウメン:ノートの意)に書いた1から10までの数の横に、その数の分だけスタンプを押すというものでした。最初の1から3まではできた人から順にセンセに見せに行き、〇をつけてもらうという形式でした。5からは「自由に押していい」と指示されたから、数字の横に自由に押したらペケされました。
その当時も、いまも寡黙でまじめな少年一は、文句も言わずじっと耐えました。まあ、カトセンセの「自由に」というのは、「スタンプの種類」について言ったもので、「個数を好きなだけ押してもいい」という意味でないことは、いまは判ります。でも当時の私には、そのように受け取れませんでした。級友のひとりは帳面一杯にスタンプを押していました。やはり、センセの指図に問題があったのだと思います。■


※1 高校数学Bの数列で、1からnまでの整数の和は、公式として習うと思います:

n(n+1)/2.


※2 数学者 Gauss について書かれた本は数多あると思います。所蔵本から次の3冊を紹介しておきます:

・左の 安倍 齊著『代数ことはじめ』(森北出版 1993年出版)は、中古しかないようです。
ただ、これは書名の通り、数学の本です。でもやわらかく書かれています。

・中の E.T.ベル著『数学をつくった人びと Ⅱ』(ハヤカワ文庫 NF)は、新刊で入手できそうです。所蔵のは、東京図書から出版されたもので、上下巻だったものが文庫化で3分冊になったようです。上巻の後半だったので、第2巻に収録されたようです。感想をみてガウスが載っていると確認しました。
この本は、数学者の伝記です。読み物としておもしろいと思います。1976年以来読み継がれているようです。所蔵のは1984年版です。

・右の S.G.ギンディキン著『「ガウスが切り開いた道」』(丸善)は、新刊で入手できるようです。所蔵のは、シュプリンガー・フェアラーク東京から出版されたものですが、いまは丸善から出されているようです。
ガウスの業績を知る格好の本だと思います。内容も他2冊の中間的なものだと思います。

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ちょっと・・・それは・・・ ~ 定義とその周辺の話 ~

内容的には高校数学なのですが高校生には難しいと思います。ただ高校生であっても定義・定理(命題)・公理の区別が出来ているのであればおもしろいと思うし、数学教師志望の教育学部や数学科の学生には興味深い話だと思います。 現在、 『数学事始め』 では指数関数・対数関数の話をしています...