ここしばらく数学雑談の更新が途絶えてしまっています。拙いブログでも愉しみにされている方には申し訳なく思います。
ここのところ専門の数学が思いの他読めているところです。
みなさんは大学3,4年のゼミ(セミナー)もしくは大学院での研究は満足したものだったでしょうか。私の場合は数学好きの数学オンチのため、学部時代は微分幾何に泣かされました。院生時代は代数的整数論を選んだので、毎週のセミナー準備に追われていました。この他に自主ゼミをしたりと自分のペースよりかなり無理したことをしたので細かい部分が十分に補足できず、血や肉になった感じを得ることなく、さらには新たな結果を論文に書けずに研究したことをまとめただけで終わってしまいました。
知識を付けるために単位や成績に関係なく受けた授業の雑談で話された内容がおもしろく、それをきちんとまとめて数学仲間に紹介をしましたが、自分のアイディアではないので論文にはしませんでした。その問題自体は数学者 矢野健太郎さんの新潮文庫で読んだように記憶しています。その解き方の流れを雑談でしてくれたのです。
このような院生生活でしたが、数学を深められたことに満足をしています。
いまは院生生活と比べたらスローですが、細かい部分・気になる部分も少しずつ埋められているのでよろこびを感じています。知識が増えている分捉え方も変わってきています(※1)。数学書の読み方などは謎の数学者さんの影響をかなり受けていて、いい方向に作用していると思います。
このため現在は『理一の数学事始め』の原稿と動画撮影で精一杯の状況です。
数学の合間や就寝前に軽い本を読んでいますが、『若き数学者への手紙』を読み返していておもしろいと思ったので紹介しておきます。
以前は最初から最後まで書かれているまま通して読んだためか、あまりおもしろいという印象はなかったのですが、いまは順番を無視しておもしろそうなタイトルを選んで読んでいます。これが良いのか、当たり外れはありますがおもしろく読めています。同じ項目を読むこともありますが、読み返すたびに印象が変わります。就寝前なのでそんなに多く読まないのもいい方向に作用しているのかもしれません。この本を読む前は『数学者の視点』を同じように繰り返し読んでいました。▢
紹介した本
イアン・スチュワート 著『若き就学者への手紙』(日経BP社)
深谷 賢治 著『数学者の視点』(岩波科学ライブラリー)
※1 つい先日あった具体例を一つ挙げておきます。p を素数とするとき、
\mathbb{Z}_{(p)} :=\{\dfrac{a}{\:b\:} \mid a, \: b \in \mathbb{Z}, \: (b, p)=1 \}
(ただし、(b,p)=1 は b と p が互いに素を表す記号)
と定義すると \mathbb{Z}_{(p)} が有理数体 \mathbb{Q} の部分環であることを確認するのは難しくないのですが、p 進整数 \mathbb{Z}_p を扱うときにこれが出てきます。剰余環の同型で出てくるので深く考えずに受け入れていたのですが、なぜこれを考えるのかが分からなかったのでしばらく自分なりに考えていたら気づいたのです、整数環 \mathbb{Z} の素イデアル (p) による局所化であることに。
代数が得意な人には当然のことなのでしょうが、うまく知識が消化されてないのだとつくづく思いました。
この定義自体が難しくないので、素イデアルによる局所化以外でも例として使われていて、複数の本で見知っていました。局所化を学んだときに例として挙げられていたかもしれませんが記憶にありません。そのときは (p) が素イデアル p\mathbb{Z} と認識していなく、p に関係する記号とだけ捉えていたのだと思います。括弧を付けているのは p 進整数との区別のためとみていました。
数学好きの数学オンチにはこんなことに気づくだけでもおもしろいのです。▮
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