B.Pascal(パスカル 1623-1662)とP.Fermat(フェルマ 1607-1665)の1654年7月ー10月に交わした往復書簡(8通)が確率論のはじまりと言われています。
パスカル:「人間は考える葦である」(パンセ)、パスカルの原理(圧力の原理)、幾何学
フェルマ:フェルマの最終定理、微分、解析幾何学、数論
が直ぐに思い浮かびます。この2人(当時 31歳、47歳)の往復書簡はパスカルの知人メレ(賭博師)から出された問題解決のためのものでした。
メレからの質問は2つで「勝つ見込み」と「賭け金分配」です。ここでは「賭け金分配」について取り上げます(※1)。
【賭け金分配問題】
2人のプレーヤーがいくらかの賭け金を出してゲームを始めたところ、途中で中止しなければならなくなったという。このとき、賭け金をどのように分配すれば公平であろうか。
この問題はその当時のギャンブラーにはよく知られていたらしく、イタリアの数学者パチオリ(Pacioli 1445-1515)が著書で書き残しているそうです。
「技量の等しいAとBがいくらかの賭け金を出してゲームを行い、先に6回勝った方が賭け金を全部もらえることにした。ところが、Aが4回、Bが3回勝ったところでゲームを中止しなければならなくなった。賭け金をどう分配すれはよいか。」(パチオリ)
パチオリは勝ち数に比例した 4対3 で分ければよいと考えたらしい...これをメレが質問したということは、この答えに疑問を持っていたと考えられます。この問題をめぐって往復書簡がはじまったということです。パスカルはフェルマに間違いを指摘されたようですが、結局は2人とも別々に同じ解答を得たとのことです。
みなさんはどのように解かれるでしょうか。今回はフェルマの方法を紹介します。
【フェルマの解法】
あらゆる勝ち負けの可能性を考え、Aの勝つチャンスとBの勝つチャンスの比で分配する。
パチオリの問題を解いてみます:
Aはあと2勝、Bはあと3勝すれば賞金が全部もらえます。したがって多くて4回の勝負でゲームは終了します。これを踏まえて勝負の可能性を書き上げてみます。
Aが勝つことを〇、Bが勝つことを●で表すと次の通りです。($2^4=16$ 通り)
〇〇〇〇 〇〇〇▲ 〇〇▲〇 〇▲〇〇
▲〇〇〇 〇〇▲▲ 〇▲〇▲ ▲〇〇▲
▲〇〇〇 〇〇▲▲ 〇▲〇▲ ▲〇〇▲
〇▲▲〇 ▲〇▲〇 ▲▲〇〇 〇▲▲▲
▲〇▲▲ ▲▲〇▲ ▲▲▲〇 ▲▲▲▲
これら16通りはすべて同じよう現れると考えられる。Bが賞金をもらえるのは下線を付けた5通り、Aが賞金をもらえるのは残りの11通り。
よって、賞金を AとBの比を 11対5 で分配すればよい。▮
参考文献
渡部 隆一 著『確率』(共立出版)
E.T. ベル 著『数学をつくった人びと(上)』(東京図書)
数学セミナー増刊『100人の数学者』(日本評論社)
吉永 良正 著『数学を愛した人たち』(東京出版)
※1 渡部隆一氏の『確率』に書かれている問題と答え(pp.64-65)
問題 2つのサイコロを何回か投げて少なくとも1回6のぞろ目が出たら勝ちとする。
このゲームにおいて、内科医投げれば勝つ見込みができるか。
答え 25回以上投げる
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