数学を趣味にしている人にとっては、「あっ、その問題ね」というくらい知られているのですが、下の問題をはじめてみたのは高校1年の冬だったと記憶しています。
数学オンチの私でも20分くらい考えて答えだけは出せました。
答え 4\sqrt{13}
でもこれが最小であることの説明は直観的なもので、1時間くらい考えても論理的な説明が見つけられませんでした。解説をみたら、直線に関して点Bと対称な点B’を取り線分AB’が答えと書かれていましたが、この説明を理解するのにさらに1時間くらい掛かりました。
ではどのように考えて答えを導いたのかを説明します。
問題文を理解するのも兼ねて直線上にいろいろな点Pを取り、最も短そうなものを探しました。これによって "与えられた直線と線分ABの垂直二等分線との交点を通る場合" と "光の反射は最小を与える" とみてこの2つを候補に挙げました。両方計算してみて小さい方を答えとしました。もちろん、これでは不正解です。たまたま答えが一致したに過ぎません。
答えを導くのに AH+HB も AK+KB も計算してみました。なぜ "垂直二等分線" と "光の反射" に到ったかというと、特殊な AH=BK の場合を考えてこれらの場合が最小らしいと睨んだのです。光は真っ直ぐ進むのだから最短ルートを与えると思ったのです。重力の影響を受けて光が曲がることは知りませんでした。
それぞれの場合を計算すると
AP_1+P_1B=\dfrac{2}{\:3\:}\sqrt{481}, AP_2+P_2B=4\sqrt{13}.
この2つの値を比べると
AP_1+P_1B=\dfrac{2}{\:3\:}\sqrt{481} > 4\sqrt{13}=AP_2+P_2B
なので 4\sqrt{13} を採用します。
ところでそれぞれの求め方は解りますか。
AP_1+P_1B はピタゴラスの定理を利用し、AP_2+P_2B は相似とピタゴラスの定理を利用して求められます(※1)。
結果的に光の反射は正答と同じなのですが、"光は最短ルートで進む" は説明になるのでしょうか。どーしてと訊かれても「光にきいて」とはなりません。なぜりんごが木から落ちるのかを「りんごにきいて」とならないのと同じです。
最後に正答を紹介しておきます。
上図のように直線に関して点Bと対称な点B’を取ると、直線上の任意の点Pに対して△BPK≡△B’PK
であるから
AP+PB=AP+PB’≧AB’
です。したがって、最小となるのは点Pが直線AB’上にあるときで、△ACB’に着目してピタゴラスの定理からAB’を求めることが出来ます。
不等号の部分は
"△APB’において2辺の和は他の一辺より大きい"
という定理[三角不等式] によります(※2)。
この解説を理解するのに苦労したのは、"任意" と "三角不等式" です。
三角不等式は直観的に正しいと認識していると思います。でも数学をきちんとするなら、直観が正しいか否かは確認しておきたいですね。でもすべて確認しているといくら時間があっても足りないので、定理として広く認められているものはある程度は事実として認めることになります。
この最短経路問題を初見で解ける人もいると思いますが、その人は非凡な才能を持っているのだと思います。学部生が学ぶくらいの数学までなら容易く修得するのでしょうね。多くの人は参考書や塾などで解き方を覚えるのだと思います。受験数学はそのように勉強しないと時間が足りません。そうでない御仁もおられるようですが... ▢
※1 垂直二等分線:HP_1=x と置いて、(AP_1)^2 =(P_1B)^2 を解きます。
光の反射:∠AP_2H=∠BP_2K なので △AP_2H ∽ △BP_2K です。HP_2=x と置いて x を求め、その後ピタゴラスの定理で求められます。
※2 平面の幾何シリーズⅡ「寄り道をしない方が近い」で三角不等式を解説しています。
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