2021/02/06

【雑談は数学の肥やし】記号「×」には可換性が仮定されていません。

 ※これは数学事始め(note)『いまさらきけない整数(プラス・マイナス)の掛け算(後)』
に書いた再録です。

数学では、記号「×」は記号「+」と違い、順番を入れ替えていいという約束はありません。「掛ける」というときには、同じ世界のものを掛けることよりも、別な世界のものを掛けることが多いのです(※2)。前回挙げた例(※3)では、例3のみが同じ世界の量を掛けていて、残りは別な世界の量を掛けていますね。このように掛け算には「操作」という感じがあるので、順番を違えたとき同じ結果が得られるかどうかは場合に依ります。想像して下さい:
⓪ご飯を盛ってカレーを掛ける:カレーを掛けてご飯を盛る
①靴下を履いて靴を履く:靴を履いて靴下を履く
②粉薬を飲んで水を飲む:水を飲んで粉薬を飲む
③お尻を拭いてからパンツを履く:パンツを履いてからお尻を拭く
⓪は問題ないと思いますが、①-③は問題ありますよね。▢

※1 森 毅 著『線型代数 生体と意味』(日本評論社)の82頁下から10行目にこういう記述があります:"元来,〈積〉というものは,異質なもの同士がかけ合わしやすいので,…"

※2 前回紹介した例たち:
例1.1人7杯ずつラーメンを食べるとする。4人だと全部で何杯食べることになるか。
例2.ガソリン1ℓで20km走れる自動車があるとする。40ℓのガソリンだと
何km走ることができるか。
例3.直径が3mある大木の切り口の面積は、どれくらいの広さがあるか。ただし、切り口は真円であると仮定する。
例4.税込み2万円もするスニーカーが30%引きで売られていた。いくらで購入することができるか。

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